浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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誰も目をつけていない名店

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企画書を作らなければならなかった。
現在の状況をなんとかするために、それこそ企画書を作ったことがないものも、全員参加。
そんなものを作ったことがない俺は、企画書の作り方なんてものを読みながら、頑張って作っていった。
その作り方の一つにもしも自分だったら、どういうのがあればそれを買うかというのがあったので。
それなら俺ならさ…と浜薔薇という行きつけの店の事を考えながら、一枚作った。
その店は自宅から電車で一本でいける街にあって、そっちにいる友達から。
「それなら浜薔薇行けばいいんじゃないの?」と進められてから通うことになった。
さすがは我が友、特にスパ銭と麺類にかけてはとんでもない事を押さえてくれる。
あいつが教えてくれた背脂担々麺な、何回食べたと思っている!ぐらい行った、店の人が。
「何時ものですね」
っていうんだけども、たまには期間限定も食べたいとかあるんだけども、申し訳なくてそのままお願いしている。
その浜薔薇というのは耳掃除が有名で、俺が初めて行ったとき、散髪やシェービングも頼んだ。
終わった後にあまりにも気持ちが良かったもので、このまま泊まりたいと思った。
その時の気持ちを企画書に込めてみる。
「これいいね」
上司が見たら、この案だけは誉められた
「いや、いいじゃない、この泊まりたいと思わせるような名店とコラボ、他のところ目をつけてないし、元々お客さんがいるところなら安心じゃない」
「今、調べたら隣に民泊やっているマンションがあります、評価も悪くありません」
同僚がさっさっと調べた。
「それならホテルよりもそっちの方がいいかもな」
誰も目をつけていない名店というのがキーポイントである。
「これは是非とも私も浜薔薇に行ってみたいな」
話ってトントン拍子に進むもんなんだな。
「このまま今日は、このアイディアにどうすへばここだけでしか味わえないサービスが加えられるか考えてみて」
と言われるが。
(浮かばん)
ギブアップ、だって、これでも頑張った方だし。
(……)
俺は上司の許可を取り、浜薔薇に向かうことにした。
平日の午後ということもあり、客は俺だけであって。
「今日はどうしましょうか?」
「あぁ」
「悩み事ですか?気分転換のために頑張りますよ」
「もしも」
「もしも」
「今はやれないけども、仕事でやってみたいことってありますか?」
「うちで?」
「はい」
「あ~そういうのはこの店に来ることになったときすごい考えました」
元々ホテルなどにいたこともあり、そこと個人店は違うし。
「浜薔薇の女将さんのようにはなれませんからね、それこそ出来ることを考えたりして…あっ、シェービングですかね、やりたいこと」
「この店でもやってなかったっけ?」
「あれをもっとガッツリした奴ですね、ホテルだったら、そのまま受けて寝たり、ウェディングでも当日はシェービングしませんからね」
赤くなるから。
「それこそ、前の職場でやっていたものは、毛はもちろん角質とかさっぱりさせるんですけど、その夜は保護用のクリームを塗ってもらわないと、お肌が弱くなっているから」
話を振ってみたら、そのまま使えるアイディアが出ちゃった。
「それって気持ちいいの?」
「爆睡してますね、みなさん」
「へぇ、受けてみたいな」
「今日は出来ませんよ、機材借りて来ないとダメだし、あとは紫外線もありますから、日中やるならUVケアも考えなくちゃいけないので、それ考えるとやっぱり夜オススメ、それこそ、もう寝るだけですよぐらいがベストなのかな」
蘆根さんにこのまま一人でしゃべってもらって、メモした方が早くねえ?
「UVケア考えなくなると、本当に楽なんですよ、美容方面」
なんでも蘆根は販売店などでメーカーさんの人が来ていると、質問しまくるらしい。
「これってどうなの?」
そことマニアの人たちと交流を持ち。
「蘆根さん、これ知ってますか?」
マニアの人も語りたいので、毎回スゲースゲー言う蘆根とはいい関係を築けている。
「やっぱりね、アルコールが使えるか、使えないかで、使えるアイテムが変わるんですよね」
そのこだわりをメモして、勉強している。
今は傑もたまに参加して話を聞いていた。
「ああいうのに詳しいとさ、お客さんが選ぶ基準になるんだよね」
むしろそれは俺も一回参加してみたいんですけども、相変わらずこの人はすごい人だな。
「あっ、今日は耳かきは?」
「ガッツリお願いできますか?」
「いいですよ」
慣れたお客さんなら、そういう要望は答えてくれる。
耳を片手で抑えながら、ライトで照らしながら耳かきを始める。
外側のヘアピンカーブの溝をパリパリパリ、まだ大丈夫と思っていたが、大分溜まっているようだ。
「それでは中、失礼します」
外は寒いが、店内は静かで暖かい。
そんな中でする耳掃除。
ガサ
響き渡るのは垢をかき出す音だけ。
「うっ」
小さく声が出てしまうぐらい、奥の気持ちいいところに耳かきがいる。
ゾクゾクゾクゾク
全身にそんな感覚が襲った。
俺は出来れば浜薔薇を紹介したくない!!
ここで混んでしまったら、気軽にいける店ではなくなってしまう。
上司よ、申し訳ないが、この案がボツになることを俺は祈る。
「大きいの入ってましたね」
そんな風に言われながら、こんもりとした垢を見せられた。
「もうちょっと頑張ってくださいね、薄いのもみんな剥がしちゃいますからね」
蘆根さん、Sじゃん!
耳かきがっつりは常連だけが注文できるものになっております。
是非、一言添えて見てください。
椅子から立てなくなるほど、気持ちいいですよ(白目)
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