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二章

束の間の休息

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 身なりをちょっとだけ整えて、あらためて店に入る。〈隠者〉の指輪は弱めに設定。パッと見、モヤっとした印象を与えて、話すか近距離になるとそれなりに認識出来る感じだ。

 大店って言う感じで、店員さんもパリッとしてるし、インテリアも綺麗めだ。

 ブロックごとにカテゴリ分けされてるので、見やすい。
 出入り口付近は日用品、少し入って、割れ物、酒と調味料と蜂蜜、チーズ、って並びだった。
 二階に衣類、カバン、オーダー衣装、魔装具、魔道具類、三階は事務室。
 地下に大口用のチーズや酒樽があるらしい。

 安住の住処はないので、日用品や割れ物は要らない。
 
 まずは調味料だ。
 棚に並んでるものをチェックすれば、蜂蜜は数種類、ジャム数種類、チーズは壁に丸いのを飾ってるのと棚に切り売り用が。

 調味料は、岩塩の塊と粉にしたもの、ブーケガルニ、匂い付け用ハーブ。
 唐辛子とニンニクも並んでる。
 うーん、やっぱりソースや醤油的なものはなさげ。
 植物油が売ってる。パーム油とオリーブ油かな。
 そして、酢があった。バルサミコっぽいやつ。
 ふむー、イタリアンドレッシングもどきはできそうだな。

 さて、いっぱい買ってもいいけど、ネットショップが使えるから、山ほど買うかは悩む。

 酒はワインとウィスキーが並んでる。おそらく庶民的な食堂で飲むものよりは上質だ。
 酒は一本ずつ試したいかな。

「お探しのものはありましたでしょうか?」
 俺が欲しいものを確認した程良きところで店員さんが声を掛けてきた。
 最初からべったりじゃないのがありがたいな。

「まず砂糖と蜂蜜、ジャムが欲しい」
 順番に欲しい物と量を伝えるとメモに書き込んでいく。
 ニンニクや唐辛子も、酢も油もって言ったあたりで店員の眉がヒクっとしてる。
 支払いの心配でもされてるかな?

「数が多いのでもう一人、人を呼びます」
 店員が手をあげると奥から今付いてる店員より年上の店員がやってきた。

「どうしました?」
「はい、このお客様がこちらをお求めで」
 二人で小声でやり取りしてメモを見せる。

「おや、たくさんですね。では先にこちらを揃えて出してきてください」
 最初の店員が「ではお願いします」と行ってしまった。

「続きは私、サーモがお伺いします。何をお求めでしょうか?」
 おお?嫌な感じじゃないから、良いカモが来たって張り切ってくれる感じかな。

 俺は、チーズ丸々数種類と酒を一本ずつって言えば、地下にご案内だ。
 
「ご商売でもなさってますか?」
「いや、冒険者だ。仲間がいっぱい飲んで食うからな」
 あと、チーズはなんか憧れるじゃない。ベローンと乗せたり、パスタをチーズの上で混ぜるとか。
 チーズだの燻製肉だのはネットのより安いのだ。
 ただ、ここの酒はバカ高いぞ。

 チーズは棚にいっぱい、種類もたくさんなのでオススメ聞いたり、味見を出してくれたり、思いの外、楽しんで、ついたくさん買うことに。
 敏腕な売り子だな。サーモ。

 酒は大瓶のを色々出してもらって、全部で二十本。
 大人買いだ。ウェーーーイ。
 日本の酒屋で全種一本ずつって言ったらとんでもない量だけど、この世界の品揃えなら平気だ。

 生ハムも売ってたので買っちゃった。大っきいのがぶら下がってたら買うよな。

 お支払いは現金でも良かったんだけど、ギルドタグで貯金が使えるって言うんでそれで。
 商業ギルドのはなんか出したくないし、まださほど貯まってないだろうから使わないぞ。

 俺のタグでCランク冒険者ってバレたけど、富裕層向けの商店だから珍しくもないんだろう。態度を変えたりがなくって良い感じだ。

「どちらにお届けですか?」
 まずは地下の分で聞かれたのでマジックバッグに入れるって言えば、ちょっと驚かれた。
 マジックバッグは容量によるけれど、高ランクなら結構持ってる。
 Cだと持ってるの珍しいかな?

「お若いのにご活躍なんですね」
 おお!褒められた。
 そうは言ってもドットたちも二十代後半か三十代前半だから、冒険者って強さがあれば、儲かる感じだと思うんだ。

 俺は自力で手に入れた物じゃないからな。本当のことは言えないけど、ニッと笑って答えた。

「マァマァデスー」
 謙遜は良くないからな。一応受け入れておくぞ。

 一階に戻るとこちらの荷物も纏まっていたので、ギルドタグでお支払いからのマジックバッグにと流れ作業だ。

「はわぁ」
「これ!」
 驚かれたので、ちょっと聞いたんだけど、ここの店員で別の街などに配達の時は、それなりの大きさのマジックバッグを商会から護衛付きで貸し出されるけれども、個人では持ってないんだって。

 個人商店では滅多に持ってる人がいないそうだ。
 マジックバッグ、結構なレアなのか。
 
 どうもウエストバッグサイズで、たくさん入れてるのがいかんらしい。
 リュックサイズならまだ見かけるけど、バッグのサイズが小さいのにたくさん入るってのが。

 ドットたちもランガたちも小さめだったけど、奴らはBランクで、俺とは立場が違うんだったよ。

 サーモはプロなので商売人の根掘り葉掘り聞いてこなかった。
 
 俺はお礼を言って、ふと思い出した。

「二階も見たいんだけど」

「はい、喜んで~」

 なんか居酒屋の幻覚が見えた気がしたぞ。









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