スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人

バガン

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始まりの夜に

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 「ちょっとちょっと、ドロシー?」
 「なにサリア?」

 ある日の休み時間のこと。皆がいつも通りに過ごしていると、訛りがかった口調の少女がドロシーを呼ぶ。

 「ガイって、ドロシーの知り合いやねんな?」
 「そうだよ、オレが異次元から召喚した。」
 「へ?なんやて?」

 おおらかな性格のサリアも、さすがにドロシーの唐突な電波発言に呆気にとられた。横で耳をそばだてていたクリンも驚いて顔を向き直る。

 「だから、オレが召喚したんだって、異次元から。」
 「ハハッ、ナイスジョーク。」
 「ウソじゃないんだって、図書館の禁術書庫から借りてきた本で・・・。」
 「はいはい、わかったわかった。」

 噂話は好きだけど、胡散臭い話は話半分に。

 「なんの話してんだ?」
 「あっ、ガイ。お前もなんか言ってやってくれよ。」
 「せやせや、ドロシーが、アンタが異次元から来たなんて言うてんねやけどな、冗談やろ?」
 「ん?俺が来たのは過去からだ。少なくとも万単位以上の年月が経過している。」
 「あれ、異次元とどっちなん?」

 「つまり違う世界ってことだろ。」
 「まあな。」

 その点に関しては間違いなくイエスだ。

 「ま、ええわ。異次元やろうと過去やろうと変わらへん。ガイの住んどったとこって、どんなとこなん?」
 
 その瞬間、ガイの纏う空気が変わった。

 「聞きたいか、俺のいた場所のことを?」
 「えっ、あっ、うん。一応。」
 「なら話そう。あれはまだ窯の底にいた頃のこと・・・。」

 「出来れば直近の話がよかったんやけどな。」
 「なにがそんなに琴線に触れたのか。」


 ☆



 発展の最先端、未来のテクノロジー、聞こえはいいがその実態は、地球と人類の寿命をすり減らすが如く。壊れたプリンターのように無節操に、無制限に吐き出し続ける、ここは『大門研究所』。都心から離れた、山々に」もほど近い、大きな研究所だ。

 「無限なんてものはありはしない。使っていればいつかはなくなる。だからそうなる前に・・・。」

 この日、すべてが始まった。いや、16年前からこの日が来ることはわかっていた。自らの愚かしさに気づくまで、準備完了するまで、それだけ時間がかかってしまった。

 「なにをするんだ、玄木。」
 「キミをここから連れ出す。その迎えがもうすぐここへ来る。」

 永らく会っていない自分の息子ほどの歳の子から、今の状況を簡潔に聞かれる。彼には、外の世界、本当の地球でこそ生きていてもらいたい。

 「そこではなにをすればいい?」
 「キミは、一人のガイとして生きるんだ。仲間と共に。」

 仲間、究極の『個』であるガイにはその概念がわからなかった。



 玄木が手に持った端末にメッセージが入る。時間だ、『彼』が来た。地上階から人がいなくなる夜、それが最安牌。


 赤いフードを被った小柄な男が、廊下の真ん中を歩いている。そのラフな恰好には合わない、ひどく無機質な施設の中を、迷うような素振りも見せずに堂々と。


 「地下、地下ねえ。エレベーターでも探すか。」

 当然その男は、この研究所の人間ではない。にもかかわらずこんな場所にいるのは、呼ばれたからに他ならない。

 首尾よくエレベーターの前までやってきたが、そのエレベーターは上階にしか向かわない。ふむ、と少し考えると、手近な通気口へ潜り込むと、直接エレベーターシャフトに侵入した。

 「結構あるな。」

 下へは、目も眩むような竪穴が繋がっていた。だが驚きこそすれ、ワイヤーや壁の突起を足掛かりにしてするするとヤモリのように降りていく。

 地下20階ほどの高さで、また通気口を見つけたのでそこに潜り込み、また廊下へ戻る。同じような雰囲気だが、今度は人の気配を感じる。

 それだけでなく、なにかおぞましい、獣のような、不安を感じさせられる気配もあった。番犬でも飼っているのだろうか。

 「これは・・・。」

 番犬というには、あまりにも既存の生物とはかけ離れた怪物、それが大きな試験管の中で蠢いている。生物学には明るくないが、目が4つあって、口が縦にも裂けている獣というものは知らない。

 「うええ、早く出るか。」

 目的の人物を見つけて、仕事を完遂する。それがいつものこと。そう、16年前のあの日から、この生き方を決めていた。

 「アキラ君、来てくれたか。」
 「おじさん・・・久しぶりだね。」

 男、アキラは玄木ととうとう会えた。

 「それで、そっちは?」
 「ああ、この子が依頼の・・・ガイだ。」

 玄木の紹介にもどこ吹く風で、電灯と天井をぼんやりと見つめている、
 
 この選択の『自由』も無ければ、行動の『責任』も持たない、人間として不完全なガイを、玄木は外へ連れ出したかった。

 「彼は・・・『空白』な状態なんだ。右も左も判らないだろう。キミが教えてあげてほしい、人間というものの、そのすべてを。」
 「それは構わないけど、あなたは?」
 「私は、まだここでやらなければならないことがある。」
 「じゃあそれが終わったら合流するということで。」
 「合流?」
 「こっちはツバサたちからの依頼。おじさんが見つかったら、連れて帰ってくるって言う。」
 「ツバサ・・・。」

 アキラの目の前にいる男、玄木リュウジ。ツバサとハルカの父。滅多に家にも帰ってこないが、とても優しい人間だとアキラは記憶している。

 「・・・それは出来ないかもしれない。」
 「何故?」
 「言っただろう、私にはまだやるべきことがあると。」
 「家族に会いに行くより、大切なことなんてあるの?」
 「地球と人類の未来に関わるんだ。そのためにここを破壊しなければならない。」
 「破壊工作ならまかせて。なんせ作るのは苦手だけど壊すのなら得意だし。」
 「いや、キミにはこの子を連れ出すことを優先してほしい。必ず私も追い付く、心配ない。・・・子供達には、私だって会いたいさ。」
 「・・・ならいいんだけど。」

 この施設のヤバさは、アキラにも判っていた。やってくれるというのなら、それに越したことはない。が、アキラにとってはこのよくわからんヤツの護衛よりも、ツバサたちからの依頼のほうが重かった。

 「ぷい~。」
 「おい、勝手に行くんじゃねえ」
 「非常口ならこっちだぜ。」
 「あっ、そう。」

 ならばついていこう。この施設の見取り図とか知らないし。

 『緊急事態コードレッド!セキュリティは直ちに出動せよ!繰り返す!』

 「おい!もうバレたじゃねえか!」
 「あっれー?」

 壁に備えつけられた赤いランプが点灯し、けたたましくサイレンが鳴り響く。廊下の向こうから、武装した人間が数名やってくる。

 『侵入者は「00ゼロゼロ」を連れている模様!指示を求む!』

 「遅いわっ!」

 一足飛びでアキラは武装集団に近づくと、あっという間に蹴散らしてしまった。

 「おー。」
 「さっさと逃げるぞ。どっちだ?」
 「あっち。」

 道すがら、行く手を塞ごうとする連中を再びボコにしながら、研究所の中を突っ切る。

 その様子を、監視カメラ越しに見据える人物がいた。

 「何者か知らないが・・・『我が子』を連れ去ろうというのなら、『実験体』を出したまえ。」
 「し、しかしあれはまだ知能に問題が・・・。」
 「今からテストを開始するのだ。」

 ひときわ大きな椅子に座る白衣を着た男が指示を出すと、実験室の試験管から液体が引いていく。そしてガラスが開くと、中から先ほどアキラが見た四つ目の獣のような生き物が、獲物を求めて動き出した。

 しばらくして、それはアキラたちとぶつかった。そこに至るまでに、研究員を無差別に襲っていたことが、口元の肉片が物語っている。

 「なんだ、あれは?」
 「実験体No.117、通称『ティンベロス』。」
 「名前じゃなくて特徴。」
 「舌を伸ばして攻撃してくる。」
 「それはもうわかった。」

 弾丸のように顔を狙ってくる舌を最小限の動きでかわすと、アキラは手刀でその舌を叩き切った。ティンベロスは口から血を吹き出しながらもんどりうって倒れた。その死体を踏み越えながら、次々に仲間が、花弁のように4つに裂けた口で襲い掛かってくる。

 「狭い通路、避けるのは無理だな。」

 アキラは壁に生えていたパイプを引き千切ると、ティンベロスを田楽刺しにする。それにも構わず向かってくるとところを見ると、戦闘本能しか持っていない、生物兵器そのものだとわかる。

 そうして身近なものを手当たり次第投げつけていると、じきに攻撃の手も止んできた。

 「よし、行くぞ。」
 「おう。わかった。」


 「やはり、あの程度では調整不足か。いやそれとも、あの侵入者が強すぎるのか。どちらにせよ、No.117の研究は改めねばならんようだな。」

 失望の眼差しを、血に塗れた監視カメラの映像に向ける。ティンベロスの実験体は、残りあと1体になってしまった。これはもう研究の価値は薄そうだ、この際すべて破棄してしまおう。

 「それにしても・・・キミには失望させられたよ玄木君?」
 「くっ・・・。」
 「00はキミが特に気にかけていたではないか?それをどこの外へやろうなどとは、理解不能だね。」

 取り押さえられた玄木が、白衣の男の前に連れてこられる。

 「侵入者もキミの手の者かな?」
 「その質問に答える義理はない、『大門所長』。」
 「ふん、話したくないのならばそれでもいい。許してもあげよう。キミにはまだ利用価値がある。」

 「正確にはキミの頭脳には、だが。」

 

 研究所の非常口の階段を、地上へ向かって昇っていくアキラとガイ。二人を追ってくる者はいない。

 「・・・。」
 「なに?なんか顔についてる?」 
 「お前じゃない。おじさんホントに着いてくるんだろうか?」
 「玄木はこの研究所の原子炉を破壊するつもりだ、すぐには来ない。」
 「なっ?!」

 原子炉だとか恐ろしいものが聞こえたが、驚いたのはそこではない。

 『大門研究所』、時代の100年先を行く技術を次々と生み出しているというのは、世間ずれを起こしているアキラも知っていた。その裏に、兵器製造などで黒い面でも暗躍しているということも。

 「あとこれ、玄木に渡された。」
 「手紙?まあいい、今は読まなくていい。後で迎えに行った方がいいか。」
 「今から行く、とは言わないんだな。」
 「今はお前を外に連れ出すのが、おじさんからの依頼だからな。」

 手紙を懐に仕舞いこむと、再び地上を目指して足を動かす。

 ようやくして、天辺の鉄扉へと行き着いた。錆びついているのか、施錠されているのかはわからないが、ギギギッと重い扉を押し切ると、外の空気が顔を撫でる。

 出た場所は、また人気のない廃屋の中だった。土埃が積もっていて、誰も来ていないことが容易に想像できる。

 「こっから山を降りる。敵もその内をここを嗅ぎつけてくるだろうし、急いだほうがいいだろう。」
 「だろうな、じきにティンベロスもやってくる。」
 「あれがまだいるのか?」
 「あと一匹いる。」
 「なぜわかる?」
 「俺が作ったものだから。」

 その発言に、アキラはガイの顔を見る。そこにはさも当然と言うような、一切躊躇いのない表情があった。

 「お前・・・。」
 「ティンベロスだけじゃない。大門の作ったもののほとんどは、俺が作った。」
 「お前も、科学者だったのか?」
 「想像に任せる。」

 なぜそうも、涼しい顔をしていられるのか謎だった。自分が作ったものに、何の感想も持っていないような、無関心さすら覚えた。

 その時、パラパラと頭に土埃が落ちてきた。

 「なんだ?」
 「来た。」

 ドシン、ドシンと地面を揺らしながら、それはやってきた。

 先ほど廊下で見たティンベロスを、そのまま10倍ほどに拡大したような巨大な姿。それだけでなく、頭には金属の機械が埋め込まれ、自重から脚を強化するアーマーを四肢に着けた怪物が、廃屋の屋根の隙間から漏れた月光に照らされてそこにいる。

 「こんなのまでいたのか!」

 アキラは身構えると、巨大ティンベロスは口をワッと開いて咆哮する。そしてその喉から、赤々とした炎が噴き出す。

 「あぶねぇ!」
 「うぉっ。」


 その様子を、小型ドローンのカメラが監視している。

 「バカな!00ごと殺す気か!」
 「あれはもういらん。必要な情報は引き出せた。」

 大門所長は冷徹に言い放つと、ティンベロスにさらに指示を出す。

 「『必ず殺せ』。」


 火の手は廃屋を包み、アキラたちの逃げ場を遮る。

 「クソッ、こうなったらやるしかねえ。」
 「勝つつもりでいるのか?」
 「もとより、そのつもりだ。俺は生きる。」
 「生きる?」
 「生きて帰る。おじさんも、お前も連れて。」

 ティンベロスがこちらを向く。牙を剥いて、脚を踏み出してやってくる。

 アキラも手首から短刀を取り出すと、向かい合う。隙を窺うと、ティンベロスの足の腱を切りつける。

 「硬っ、だが、血が出るな。」

 血が出るなら殺せる。アーマーで硬いところは無理でも、柔らかい部分ならば。例えば舌とか。

 図体が大きくとも、その動きは読める。アキラは苦も無く接近できた。

 「ええい、ならば先に00を殺せ!」

 新しい命令が、ティンベロスの脳に埋め込まれたバイオチップに送られてくる。

 無意識にその目が、ガイに、自分の創造主に向けられ、空中でその視線が交差した。その時初めてティンベロスは逡巡した。

 「どうした!殺すのだ!そいつを踏みつぶせー!」

 命令に苦しむティンベロスの前足が、ガイを蹴り飛ばした。ガイは壁に叩きつけられ、動かなくなった。

 それから、ティンベロスは狂ったように暴れ始めた。バイオチップの負荷によって、脳がショートしたのだった。

 「くっ、もう滅茶苦茶だ、コイツ!」

 唾液を垂らしながら、強靭な鞭を振るうように舌が壁や天井を破壊して回る。瓦礫が倒れたガイにも降りかかり、アキラはかばいに行く。

 「くそっ・・・これは・・・ヤバい・・・。」

 肩を損傷したアキラの前に、狂った獣が襲い来る。


 ☆



 「おっ休み時間終わるな。」
 「ええーっ!?ここで終わりかよ?!」
 「そっからどうやって助かったん?」
 「また今度な。」
 「お前ら席につけー。」
 「歯切れの悪い終わり方だな。」
 「今度今度。」

 その今度がいつになることか。そもそも、話題としては生活様式の話だったはずなのに、全然違う話題をしていた。

 「ガイ、今の話って本当だったのか?」
 「なにが?どこが?」
 「その、兵器を作ったとかの話、とか。」

 ドロシーが不安げな表情で聞いてくる。サリアもうんうんと頷き、クリンも声には出さないが視線を向けてくる。

 「嘘は言っていない。」
 「そっか、オレそんなこと知らなくって、それなのに色々無茶言ってたんじゃないかって。」
 「知らないのだから仕方のない話だろ。俺も当時は何も知らなかった。」

 何も知らぬまま、ただ求められる限りに技術を生み出してきていた。その結果が・・・。

 「オレ、ガイにはそんな無茶ぶりはしなつもりだから。」
 「そうしてくれると助かる。この話はもうやめにしようか、もっと楽しい話をするべきだったな。」
 「せやったら、今度こそ文化の話が聞きたいわ!どんな本とかあったん?恋愛ものとか!」
 「そうだな、読んだ中では・・・。」
 「授業するぞお前らー!」

 いつまでも話していると出席簿で頭を叩かれる。

 「なんでボクまで?」
 「物欲しそうな目をしていた。」
 「ひでえ。」

 その中にはクリンも含まれていた。


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