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結婚式の花束は花嫁にあげるものじゃなかったかしら
しおりを挟む殿下とお相手の令嬢の結婚式はたくさんの方がお見えになって祝福されていました。
わたくしは少し遅れてしまって、両陛下が到着されるギリギリに到着してしまい、悪目立ちしてしまいました。神殿の結婚式は誰でも招待状なしで出席できるはずですがやはり王太子殿下の結婚式。神殿内に入れるのは貴族だけと限定したようです。
お相手の令嬢は愛らしく、満面の笑顔。良いですね神殿の結婚式。1ヶ月後の『成婚の儀』ではわたくしは薄く笑うことしかできません。本当に、とても愛らしいお方。でも結婚式に太腿が見えてしまうウェディングドレスはどうなのでしょう。目のやり場に困ってしまいます。でも誰も何も言わないということは、これが神殿の結婚式では普通なのでしょうね。
堅苦しいしきたりも、長い祝詞もなく、ほんの1時間程度で式は終わってしまいました。途中急な落雷が鳴り響いたりして小さな騒ぎになりましたが、わたくしは外で王太子妃をひと目見ようと待っている平民の皆さんが心配です。
神殿の外に出ると、快晴です。通り雨だったのでしょう。ケイレブにエスコートされながら人波を……あら、避けて下さるのね。わたくしがドレスだから気を遣って頂いたのかしら。ありがとう。うふふ…まるでモーゼさんね。割れた人並みの中に立つ小さな子供。ポカンとお口を開けた小さな女の子がわたくしを見上げていました。
「あっ、あ、あ……めっ、めがみさま!ほんものの、めがみさまだあ!!」
いいえ、公爵令嬢です。
「めがみさま!おはなをどうぞ!」
「えっ…」
結婚式の花束は花嫁にあげるものじゃなかったかしら?ああ、でも……
野に咲く花を集めた花束。幼い日に、殿下とケイレブの作ってくれた花束を思い出します。
わたくしは笑います。まるで、どんよりとした言い表せない寂しさの上に、幸せの粉砂糖が振りかけられたみたいです。
「ありがとう、小さなレディ。嬉しいわ」
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※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
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