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楽園と崩壊と
56 ノア・ヴォルテッラが笑う(クリストファー視点)
しおりを挟む……………私は、一体どうしてしまったのだろう。
ここ数日、記憶に靄がかかったようだ。何かをしなくてはならないのだが、それすらも朧げだ。
ペトレルラ公爵邸が燃え落ちたらしい。
使用人らしき者たちは居らず、ペトレルラ公爵と思しき遺体が書斎のあった場所で見つかった。
ドロシーは ーーー 私の婚約者は行方不明だ。
現場に駆けつけようとしても、この城から出てはならぬと陛下からのご命令だ。一体、何が起こっているのだ。
ここ数日、夢にノア・ヴォルテッラが出てくる。
恨み言も言わない。私を嘲る事もない。ただ、幸せそうに微笑んでいる。傍らにはあの男が ーーー アレクシスが居た。
ノア・ヴォルテッラが笑う。
抱き締められて、嬉しそうに。くちづけられて、頬を染めて。
エスコートなどと呼べない、気品の欠片もなく。幼子のように手を繋いで、幸せそうに。
ああ…、お前は、本当は…。そんなふうに、笑う、のか。
学園でのお前は、寂しそうに俯いて。何を言われても、小首を傾げて。
それが男を誘うのだと、一体誰が言ったのか。もう覚えていない。
ノア・ヴォルテッラが笑う。
その先にいるのは私ではない。
お前が意地を張らずに私の元に来ていれば良かったのだ。
ああ、そうか。お前はドロシーに嫉妬していたのか?私は男色家ではないから応えてやることは出来ないが、どうしてもと言うなら傍に置いてやっても良かった。
《聖女》としての能力も何故隠した。あのように素晴らしい能力があるのなら、私が使ってやれば世界をもこの手に出来ただろう。
ノア・ヴォルテッラが笑う。幸せそうに。
その先にいるのは ーーー アレクシス・ヴォルテッラ。
蕩けるように笑って、ノア・ヴォルテッラを抱き締める。
何故なんだ。何もかも捨てた男が、何故そんなふうに笑っている!?
いいや違う。捨てられたんじゃない。我々が、彼らを捨てたのだ。
…………なんだったか。
ああ、そうだ。ドロシー。ドロシーを探さねば。
教会へ。
……教会へ、行って……何を…する………んだった、か。
教会で…。確かめる、んだ。
私は、 ーーー 間違ってなんかない。
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