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北の地へ
11 告白1(アレクシス視点)
しおりを挟む初めて会ったのは、俺が16歳で、ノアは5歳の時だった。
女神の魔方陣で召喚された【聖女】は、5歳とは思えないほど小さく痩せ細っていた。
人形のように整った顔と、アンバランスな襤褸服。細すぎる手足。大きな翡翠の瞳が俺を見た。
俺は【聖女】に恋をした。
いやしかし……俺は小児性愛者だったのか!?
恐ろしくなって、彼を俺の養子にするという話は一度は断った。
断ったのだ。
けれど、俺が断った後の養子先の候補は良くない噂の伯爵家だった。
伯爵を見て、ノアは怯えて暴れた。あの時彼は伯爵からなにを感じ取ったのだろうか。
きっと偶然だった。偶然、逃げ出した先に俺がいた。
俺のマントの中に隠れ、チュニックの裾をギュウッと握った。
ああ…駄目だ。もう良いじゃないか。自分が変態でもなんでも。
俺は兄上 ーーー 陛下から『ヴォルテッラ』姓を名乗ることを許され、ノアを養子にした。
ちょうど副官が負傷し、利き足の膝から下を失って軍職を退いたばかりだった。
会うだけ会う、と乗り気ではなかった元副官だったが、案の定ノアの可愛さに家族でノックアウトされた。
その頃からだ。やけに俺が忙しくなってきたのは。俺は一年に数日しか屋敷に帰れなくなった。数ヶ月ぶりに屋敷に帰ったら、ノアが元副官のことを舌ったらずに「おとうしゃん」と呼んでいたのは本気で奴を殺そうかと思った。俺が「でんか」なのに、なんでお前が「おとうしゃん」とか呼ばれてるわけ!?
俺は自分の私兵から特に優秀で忠誠心がある者をノアの護衛として配備した。毎日、ノアの行動を事細かに報告させた。通信用の白鳩の使い魔は大忙しだ。
可愛いノア。愛しいノア。
ノアが7歳になった時、王太子である甥との婚約を陛下が打診してきた。秒で断った。
ーーー 「では代わりに」。
陛下は俺に無理難題を押し付けた。いや、無理難題を押し付けたいときに婚約の話を持ってくるようになった。
国土は侵略によって広がった。式典用に竜の首が欲しいというから狩ってきた。隣国の姫をもてなせというから適当にもてなしたら、自分の護衛騎士と駆け落ちしやがった。当て馬かよ!!??
その無理難題を聞き続けたのが悪かったのか。うん、多分そうだ。兄上は、俺は何を言っても従うと思ってしまったんだろう。
ノアが14歳の時。いつものように兄上が「ベローナが欲しい」と無茶苦茶を言い出した。確か隣国は友好国じゃなかったか?だが俺は従った。なぜならノアは年々美しく成長し、あの甥と婚約なんぞさせれば一発で食われるに違いない。
だがそれが悪かった。
ノアは、俺が居ない間に酷い目に遭っていたのだ。
噂ぐらいで実害がないなら良いだろう。いつも一人で居るのも、まあ悪い虫を排除する手間が省けた。そんなふうに思っていた。ノアは傷付いていたのに。
その挙げ句が『オデッサに追放』だ。
あのペトレルラの狸爺め!!自分の娘可愛さに【聖女】を嵌めやがった!普通は死ぬさ。ああ、実際俺も今し方死にかけて実感したさ。女神から見放された北限という場所は地獄だ。
オデッサに行けと言うのは、苦しんで苦しんで死ねと言っているのと同じだ。
俺が小児性愛者だと思われていたのだろう。美しい幼い少年でも代わりに与えておけと嗤ったんだろう。
でも今ならわかる。俺は子供は本当は苦手だし、色事も他人のものは見たくもない。
ノアだから。
ノアだから、俺は愛した。
「ノア」
俺はノアの白い指を握り返す。
綺麗な手だ。細い指だ。
凍傷で腫れ上がり、無残に破けた醜い手で触るなど、自分の正気を疑う。
「ノア、お前を愛している」
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