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北の地へ
10 お義父さんがやってきた(ノア視点)
しおりを挟む王都を出て5日目。今日の野営の準備をしていると、俺の養父のアレクシス殿下が来た。
殿下と十数人の鎧の人たちは雪まみれ氷柱まみれだった。
「えっ…え?ええ???ゆ…雪!?えっ?だって…」
こんなに天気がいいのに??っていうか……
「え???アレクシス殿下、どうして?」
だってアレクシス殿下はベローナに遠征中……。
「全部捨ててきた」
…………はい?
「お前を捨てた国なんぞ知らん。地位も名誉も美姫も金も…何もいるものか。俺の世界にはお前がいればいい」
ええええええ…
アレクシス殿下にギュッと抱き締められた。
えっ、えっ…えええ~!?
固い、痛い、冷たい、冷たい……冷たい?
「ちょっと待ってください!凍傷になってないですか!?すごく冷たいんですけどこの鎧!」
「そういえば……うん?感覚が…」
「わあああああああああ!!脱いで!早く脱いで!!いや脱がないで!!溶かしますから待って!!ダメ!ああああああ無理矢理はダメ剥がれるかも!!お父さん!お父さん!!溶かして!殿下が!殿下があああああああ」
「落ち着けノア」
グイッと後ろに引かれて殿下から引き剥がされた。
バッシャー!と殿下の頭の上から湯気が上がる。え!?お湯!?
「うわっちいいいいいいいい!!」
「「「「「「ふ…ふくたいちょううううううううう……」」」」」」
「お前らもあっちで湯をかけてもらってこい。あと俺はもう副隊長じゃねえ」
大きな大人の人たちが「助かった…」とか言いながら半泣きになってる…。え…?どういうことなの?
お父さんはくわえタバコのまま殿下のバシネットをスポッと取った。
「……っ………!」
凍傷が酷い。耳が黒っぽい白っていうか……なんだか痛々しく膨れ上がっている。手も足も。指先が3倍くらいに水膨れみたいになって破けていた。
「……お前さあ、いくら防御壁魔法かけたって無駄だぞ?ここは女神から見放された北限だ。部下を殺す気かよ」
「………すまん…」
「俺に謝るな。あそこで湯をかけてもらってるあいつらと馬に謝れ。あと、ノアを泣かすな殺すぞ」
「………ノア…」
「……………あ、れ………………?」
セバス父さんに言われて気づく。俺はポロポロ泣いていた。
「……殿下…い、痛いですよね…?ご、ご……ごめんなさい、こんな…ざ、罪人の俺なんか追いかけて、きて……」
そっとその膨れ上がって破けてしまった手を取る。ああ、わかる。細胞が死んでいる。こんな…。こんなに、して、まで……。なんで?どうして?
「お前に会いたかった。まだ伝えてないんだ。お前が18になったら、成人したら言おうと思っていた」
「………?」
「ノア、お前が好きだ。初めて会った時から。ずっとずっと、お前だけを見てきた」
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