腐女神さまのいうとおり1〜亡国王子と死神辺境伯〜

とうや

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【服飾師ソワヨ視点】 3

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「……次にソワヨ。…ソワヨ?聞いていますか、ソワヨ?」

「……はっ!すみません!」


いけないわ。あれこれ思い出してしまっていた。


「……しかたありませんねソワヨ。貴女何日寝ていないんです?今晩と明日はしっかり休養なさい」

「えっ…いや、でも今夜は今日届いた布でアールツナイ様の部屋着を縫ってですね……」

「いいですね、ね、な、さ、い」

「は……はい…」


おおう…メリーアン様こっわぁ…!


「ではソワヨ、アールツナイ様当日のの衣装を」

「はい」


用意されていたトルソーに服を着せていく。ざわりと皆様がさざめいた。


「こちらが新作にして最新の、アールツナイ様だけのために制作した『アールツナイ様初夜用夜着』で御座います」

「いっ…意義あり!!」


アールツナイ様の衣装のことで何度もぶつかってきた好敵手ライバルアルマが手を挙げる。


「なんで!?どうしてベビードールじゃないの!?透けてもないし秘密の小窓を開けるリボンさえついてないわ!!そんなんじゃフィアツェン様がムラムラこないじゃないッ!」


そう、わたくしが心と欲望と萌えを込めて縫ったのは『パジャマ』。アールツナイ様にお聞きしてデザインした、神の国の夜着。普段からご愛用頂いているものと大きくデザインは変えていない。


「そ…そうよね、あれじゃフィアツェン様が襲いかかって下さらないわよね……」

「アールツナイ様、普通に寝ちゃいそう…」

「今からでもデザインを変えた方が…」


困惑気味の声にわたくしは微笑む。


「そう!『普通』、『日常』こそがテーマなのです!!」


パジャマの袖をそっと持ち上げる。さあ、ご覧なさい!わたくしの渾身作!!


「布地は「あれ?今日のパジャマ下ろしたて?」と気付くか気付かないか程度の、しかも最高級の『純白闘羊プラティーヌツィーゲ』の糸をアレスゲーテの職人が紡ぎあげ、柔らかさを出すために10日ほど専用水車で叩いております。縫い糸や刺繍も同様のものを。デザインはいつもより少し胸元が見えるように、釦は外しやすいよう、少しだけですがホールを大きめに緩く作っております。『純白闘羊プラティーヌツィーゲ』の羊毛のみで作られた布は淡い光沢も美しく、王族貴族の軍服や高位冒険者の戦闘服に使用されるほど丈夫です。万が一フィアツェン様が力任せに引っ張っても破れません。……破れても萌えますが、アールツナイ様がお気になさるとお可哀想でしょう?もう一度言いますわ!テーマは『日常』なのです!スケスケのエロ下着など用意してはアールツナイ様が身構えてしまいます。後に毎晩パジャマをお召しになって「あ…っ」と初夜を思い出し、恥じらうアールツナイ様!これがわたくしの今回の狙いですわ!!」

「グッ…グゥ……ッ!」


アルマが胸を抑えて蹲った。きっとアールツナイ様とフィアツェン様のあれこれを想像してしまったのだろう。


「ハアッ…はあっ……か…完敗よ、ソワヨ…!!確かに萌えるわ…!日常エッチ…萌える!!滾る!!私…まだまだだわ……っ!」

「……いいえ、アルマ」


わたくしはアルマに手を差し伸べる。


「貴女の言ったベビードール。あれは次に作ろうと思っているの。お二人が閨に慣れた頃、恋のスパイスとして。その時は貴女の言った『秘密の小窓』を使わせてちょうだい」

「…ソワヨ……!」


ガシッとアルマがわたくしの手を取る。そう。そうよ、アルマ。わたくしたちはもっともっと磨き合える。アールツナイ様の為に。あのお方の為に!!


会議室に拍手の洪水が起こった。泣いている方や鼻血を押さえている方もいる。なんて素敵な一体感かしら!



ああ、わたくし、アレスゲーテに来て良かった…!!






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