悪役令嬢の末路

ラプラス

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燃えて、なくなれ【6】カルロス視点

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 昼間のカルロスは、領主の城で名目上領主の補佐として、領主の仕事をこなしていた。
 父は3年前に森を焼き、そこに住む動物たちを追い出した後、木を切り、領地の産業を発展させようとしたが、突如病に冒され、寝たきりになってしまった。
 そのため、私は領主補佐として、代理業務を行うことになったのである。父のやりかたには反対だった私は、父が破壊した森を元の姿に戻すことを心に決め、木を植え、王都から植物学者を呼びアドバイスを貰った。
 そうして、3年が経った頃リィナに出会ったのである。
 彼女が3年前に失ったものを考えると、申し訳なさしかない。

 私が森に火を放った男の息子と知った瞬間の、彼女の憎しみのこもった瞳に吸い込まれるようだった。
 彼女は、きっとこれからも私への憎悪を忘れることはないだろう。

 それが、寂しかった。

 一目見て惹かれたひと
 彼女の傍に居たい、彼女を守りたいと願ってしまった。

 ふと、窓の外に視線を向ける。
 その先には、彼女が暮らす離れが見える。
 泣いていないだろうか。そう心配になって、一日に何度も目を向けてしまうのだ。

 離れで暮らすことになった一日目、感情を押しとどめようとする彼女に、「怒って、いいんだよ」と、つい零してしまった。
 彼女はそれを聞いた瞬間、張りつめてたものから解放されるように、静かに涙を流して…。

 気づけば、抱きしめていた。
 ますます大粒の涙をこぼし始めた時は嫌だったのかと思い、離れようとすると、彼女の方から小さく服を掴んできて、その様子に心が満たされていく気がした。
 彼女が泣き止むまで傍にいて、我に返った彼女は、私から逃げるように他の部屋に行ってしまったのだけれど、その様子が可愛くて、次の日の朝、会話は無くても、心の中は上機嫌だったのは言うまでもない。

 恋とは、愛とは、なぜこんなにも感情が豊かに彩られるのだろう。

 そんな事を思っていた。
 
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