悪役令嬢の末路

ラプラス

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探し人《夢》【4】

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 あれからまた、夜の街を歩いてく。
 今の私は幽霊と似たような存在なのか、足跡をつけようと積もっている雪の上を歩いても、シャリッとした音もしないし、足跡もつかなった。

 とても静かな夜だ。
 真っ暗な空を照らすお月様も、しん…と寝静まった街も。

 ずっと歩き続けていると、ふと、ある家に目が止まる。


 そこはかつて、私の居場所であったところ。
 父と母と私が暮らしていたところ。

 そっと敷地内に入って、屋敷の窓を覗いてみる。
 中は、子供部屋なのかモビールやおもちゃで溢れていて、その中にぽつんと揺りかごが置いてあって、そばには父が寝ていた。

 すぅっ…と、窓を通り抜けた途端に、泣き声が聞こえた。揺りかごに近づいてみる。
 赤ちゃんと目があった。

 「ぇう?」

 赤ちゃんも私が見えるのか、首をかしげてまじまじこちらを見ている。
 でも、その赤ちゃんは…。

 「…私に、そっくり」

 そっと、抱き上げてみた。
 
 「きゃっきゃっきゃっ」

 嬉しそう。
 そのまま抱っこしてみると、心臓の音を探すように、もぞもぞ動いた後、納得したのかそこで動きを止めた。どうやら、見つけたようだ。赤ちゃんは私の心臓の音を聞いているのか、そのまま耳を澄ませている。

 聞こえるかな。私の、命の音。

 月の光が、窓から部屋に入ってくる。窓に近づいて月を見上げる。満月だ。淡い黄色…真っ暗な負の部分は見当たらない。もしかしたら、お月様の照らす真っ暗な空が、お月様の…?
 視線を落とすと、窓に映る私と赤ちゃんが見えた。
 窓に映る私たちは。

 「なんだか、私たちのほうが余程親子みたいに見えるね」
 
 すぐそばで眠っている父親よりも似ていた。
 でも、この子は私みたいに捨てられなくてよかった。捨てられるのは、誰かに必要とされないのは、きっと悲しいことで、辛いことだから。まだ生まれたばかりのこの子にはそんな目には遭ってほしくない。

 だってこの子は私の妹だもの。

 「ねぇ。もし、寂しくて辛くなったときは、いつでもお姉ちゃんのところに来ていいからね。……なんて、赤ちゃんだからわからないかな」

 少女は苦笑いして、また、赤ちゃんをあやす。


 この子を、見守っていよう。
 遠くから。気づかれないように。
 私のこと、覚えてなくてもいい。
 この子が、私の分まで幸せになれるように、それまで見守っていよう。

 それが、自分がたった一人の妹にできること。


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