悪役令嬢の末路

ラプラス

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探し人《夢》【2】

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 聞こえたのは、赤子の産声。

 新たな命の誕生の知らせ。

 けれど……。

 次の瞬間。悲鳴が響いた。
 暫くして、小さな女の子が自分よりも大きなバスケットを大事そうに抱えて家を出て、走り出した。

 黒いフードを目深に被った少女が問う。

 「ねえさま。あの子?」

 もう一人の少女は答える。

 「そうよ。婆様の言う通りなら、あの子は私達の兄妹」
 「…でも、生まれたばかりなのにお母さんと直ぐに引き離されちゃうなんて、可哀想だよ」
 「そうね。でも、このままじゃあの子も、あの子の両親もみんな幸せにはなれないわ。さ、私達も行くわよ」

 二人の影が、夜道に消えた。



 女の子は、街の小さな教会の前で立ち止まった。懐から一枚の紙を取り出して、バスケットの中にそっと差し込み、バスケットの中身に「ごめんね…」と呟くと、意を決してトントントンと力強くドアをノックしてから、走って帰って行った。

 そのドアが開く前に、先程の影がバスケットごと攫って行った。


 「ふぅ。危なかったね、ねえさま」
 「うん。帰ろう」

 私達の家に。


 そうして二人は月が照らす光の中、姿を消した。


***********


 嘆きの森ーーそう呼ばれている森の奥に、淡い光を放つ水晶が存在する。
 それらは昔、タイムリープの能力によって恋に破れた魔女の涙が結晶化したものだと言われている。その結晶には、タイムリープの能力を無効化する力があり、特に力が暴走しやすい幼少期は、水晶を加工した首飾りを身に付けたり、水晶の近くで育てられる。

 私達の場合は。
 



 「婆様。攫ってきた」

 森の中の自分達の家に帰ってくると。
 真っ先にバスケットを老婆に渡す。

 「またおまえはそんな事を…」

 老婆は宥めるように言う。

 「だって、許可なく連れてきたんだよ。立派な誘拐でしょう?」

 バスケットの中身に対して。ずっと、「ごめんね」しか思ってなかったんだ。

 「…そう思うのなら。おまえがこの子を親の分まで愛してあげなさい」
 どうせ、元の家には返せないんだ。


 ぎゅっと、拳を握り締める。


 「…そうしたら、この子は少しでも救われるのかな」
 「ああ。救われるさ。誰にも愛されないことがどんなに辛く悲しいことか、おまえは知ってるだろう?アイラ」

 バスケットの中身ーー布に包まれたそれが、手を出す。つい、手を伸ばしてみる。
 力強く握り返された。

 「…そうだね」


 もう。後ろめたいことは考えないようにする。
 これからは、キミの幸せについて考えよう。
 大丈夫。私がキミを一人になんかしないから。


 


 私が、このか弱い存在を守るんだ。



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