悪役令嬢の末路

ラプラス

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閑話:スカーレット様は黙ってない

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 息子のスライディング土下座の説得に即OKを出し、自分は式場パンフレットを取り寄せたり、宝石商や仕立て屋を呼ぶと言って暫く席を外したスカーレットが戻ってきた時、部屋を出て行ったことを後悔した。

 話が進んで、夫が息子に条件を出したらしい。

 それが、

 『この一年の間に父の仕事を受け継ぎ 、尚且つ領地を一人で回せるようになること。執務をこなせるようになること。
 それまでは家に帰ったり、妻に会うことも禁止……』だと言う。


 この台詞に覚えがある。

 ーーそう。あれは忘れもしない、自分の両親に、夫と二人で挨拶に行ったときのこと。そのときの父は、何を思ってそう言ったのか分からないが、たった今夫が息子に出した条件と同じことを、夫に突き出したのだ。

 あれが、私達のすれ違い新婚生活の予兆。

 つまり、悪夢の始まり。


 結婚式を無事済ませた後、新婚なのに帰って来ない夫に、夜な夜な枕を濡らす日々が続いた。そんな彼女を見かねた友人たちが、夫が夜な夜な遊びに出ていないか確かめに行ってくれたのである。

 そして、友人の報告と彼が帰って来て、その理由を聞いたために無実だとわかったが、こんな事は、出来れば息子夫婦にまで受け継がれて欲しくはない。

 男はどうだか知らないけれど、何も知らされずに夫が帰って来ないって、本当に辛いんだから!!
 しかも、夫はこれまで全く話したことがなかった方だったから、不安を通り越してもう疑心暗鬼になってしまいそうだったわ。


 だから、スカーレットは急いでこの話を中止させようとした。

 
 「あなたっ。その話はお待ちになって…」

 「はい。条件だろうとなんだろうと、彼女との結婚を許してもらえるなら、なんでも呑みます」

 夫に抗議しようとしたら、その前に息子が言ってしまった。

 えーーーー。と思う反面、言い切った息子を誇りに思う自分がいる。

 けれど…。

 「本当に彼女を幸せにするための算段はあるの?」

 気づいたら、そう聞いていた。
 息子は夫から顔を離して、こちらに向き直る。
 凛々しい表情…。まるで、あの日の夫のよう。

 「保証はありません。ですが、これから条件以上の功績を出して、必ず彼女を幸せにします」

 
 そう言って、息子は部屋を出た。

 でも、ちょっと待って?
 あの子、さらっと仕事するって言わなかった?


 ーーどうしよう。このままじゃ新しくできる娘も私と同じように…。考えただけでも恐ろしい。


 スカーレットは急いで息子を追いかけた。


 『待ちなさ~い!!』



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