悪役令嬢の末路

ラプラス

文字の大きさ
上 下
29 / 68

探し人【1】

しおりを挟む
 そういえば…と、アイラは夢の内容を思い返していた。夢だと言うのに、なんだか現実味があり過ぎて怖いのだ。私はその光景を、上からとか、少し離れたところではなくアイラという女性の中で見ていた気がする。

 それにしても、ローディー・シュトワネーゼって…この家の家系の人なのかな?実在する人なのだろうか。

 もし本当に実在するのなら、あのあとどうなったのか、知りたいと思う。夢の終わりに、アイラという女性は、木にもたれて目を瞑っていた。
 「ごめんなさい」って、どういう意味だったんだろう。
 夢でだけど、同じ一時を過ごしたんだ。関係なくはないよね。


 …でも、誰に聞こう?


**********

 「今日はお菓子作りのお誘い、ありがとうございました!私、とっても嬉しかったですわ」

 リリシア様は嬉しそうにエプロンを身につけた。

 「こっちこそ、いきなり誘ってごめんなさい。予定とか、大丈夫でした?」
 「全く問題ありませんわ!」
 (全力で予定消化しました!)

 「よかった。それに、今日は聞きたいことがあって…」
 「まぁ。なんですの?」
 「あの。ローディー・シュトワネーゼって言う人を知っていたら、教えて欲しいの」
 「知ってるも何も!カイルの祖父ですわ」
 「え?」
 「私でしたら、大叔父さんの関係になるのかしら。私の祖母はローディー大叔父さまの妹なのです」
 「わぁ…。話がややこしくてついていけない」
 「まぁ。そうですわよね。立場的にカイルの方が本家で、私は分家になるんですの。祖父の話に戻りますが、彼は公爵家の三男で、公爵の後継者争いを辞退して、辺境にあるソンニと言う村の治安維持に勤めていたそうですわ。その後彼は、妻を娶り、男の子1人を設け、先の戦争で亡くなったと聞いています。…公爵家の図書館になら、家の歴史として、資料が残されているかもしれません。これぐらいしかお役に立てなくて、すみません」
 「ううん。ありがとう。とても役に立ったわ」

***********


 屋敷に帰って、彼について図書館で調べてみた。

 ローディー・シュトワネーゼ

 シュトワネーゼ家の領地の一つ、辺境の地ソンニで生まれる。妾の子というだけで、他の兄弟から疎まれていた。7歳までをソンニで過ごし、8歳から母と王都にあるシュトワネーゼ家の屋敷で武術や学問を学ぶ。
9歳のとき、母が亡くなる。父は体調を崩し、次期公爵を決めるよう指示する。が、兄達に妨害され、軍に入れられる。軍では、馬術、剣術、リーダーシップや協調性など、様々なことを学んだ。15歳で初めて出陣した戦場の最前線で戦う。17歳で軍を退役する。すでに公爵となった兄に、ソンニの治安維持を名目に厄介払いされる。
 19歳の夏、村の巡回中、不思議な娘に出会う。彼女はアイラと名乗り、暫くの間行動を共にしたが、村の豊穣を祝う祭りが何らかの集団に襲撃された際に別れたまま、姿が見えなくなった。
 そのまま月日は経ち、彼は兄が用意した女性と政略結婚し、一人の男児を設けた。それからは、ソンニで畑を耕しながら生活していたが、開戦により男達は集められ、ローディーも例外なく戦地へ赴いた。そして、そのまま戦場で命を落とした。


 夢は現実にあったことだった…。
 でも、どうしていきなりこんな夢を見るようになったのだろう。
 私が生まれるずっと前の話。
 私が知る由も無い昔の話。


 彼が誰かはわかったけれど、彼女は一体何者なのかわからない。


 あなたは、誰?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ
恋愛
酷い人生だった。 神様なんていないと思った。 死にゆく中、今まで必死に祈っていた自分が愚かに感じた。 苦しみながら意識を失ったはずが、起きたら婚約前だった。 絶対にあの男とは婚約しないと決めた。 そして未来に起きることに向けて対策をすることにした。 * 完結保証あり。 * 作り話です。 * 巻き戻りの話です。 * 処刑描写あり。 * R18は保険程度。 暇つぶしにどうぞ。

処理中です...