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アイラとーー
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結婚するまで、私達の人生の中で、道が交わったことはない。もちろん、私の場合ではあるが、きっと向こうもないはずだ。
私の母は、物心着く前に亡くなっていて、父にも母にも、身寄りとなる人はいなかった。父は私が学校に通うまで、育児と仕事を両立させてきた。
私が学校に通っていたのは、7歳から12歳までの5年間。その学校は、平民も受け入れてくれる唯一の学校で、それなりにお金のある平民しか入れなかったけれど、父は喜んで入学手続き書類にサインした。
学校は、まずクラスが平民と貴族で分かれていた。平民はまず読み書き、計算、女子は裁縫を習い、男子は体育で体力づくりに勤しむ。貴族は、立ち振る舞い、ダンス、教養について学んだ。
だんだん学年が上がると、大体の平民は12歳で学校を卒業し、そのまま学校で習った技術を使い、働く。貴族は中等部という、もう一つ上の学年へ進級していき、最終的には高等部を卒業するらしい。その間に、貴族は高位貴族の方に名前や顔を覚えてもらったりするらしい。
学校の中で、平民と貴族が一緒に行動することはほとんどない。教室のある棟も別々で、共有するところといえば、体育館や図書館、裁縫室ぐらいかもしれない。
なかなか貴族に会ったりはしない中で、一度だけ、あの人を遠目で見たことがある。
図書館の近くに、巣箱を設置している木があって、その日あの人はその木の下で昼寝をしていた。そのとき、巣立ちに失敗した小鳥が巣箱から落ちてしまい、それに気づいた彼が、慌てて小鳥をキャッチして巣箱に戻してあげた。
その時のあの人の表情が胸に焼き付いて、なぜか頭から離れなかった。
そして私は学校を卒業し、父の仕事の手伝いをしながら生活していた。あの人のことは、忙しい毎日の中で、だんだん思い出さなくなっていた。
そんなとき、父が陛下から男爵位を賜ることになった。こんな今だから、娘に早く嫁ぎ先を…と思ったのかもしれない。あの人との婚約が成立したことを、父から聞いた。そして、婚約期間を過ぎ、遂に輿入れすることが決まった。
あらかじめ、父から政略結婚だと聞いている。
けれど、学校では遠かったあの人のそばに居られると思うだけで嬉しかった。あのとき、小鳥に向けたような顔を、私にも向けて欲しいと思った。
けれど…。
結婚式から、彼は帰ってこなかった。
自分の中で、理解しているつもりだった。
あの人には好きな人がいる。自分よりも、守るべき愛する人が。
それなのに、家令を通して、その愛する人の話し相手を頼まれた。どうしてって思ったけど、自分は仮にもあの人の妻だから、あの人の言うことには逆らっては駄目だと思って、あの人の真に愛する人に会いに行った。
彼女は、私を太陽のような笑顔で出迎えてくれた。義務で出席するようになった夜会の各々とは違う。本当の笑顔で。
私たちはいつの間にか心許せる友達になっていて、でも、私は政略結婚の妻。きっとすぐにあの人とは離縁して、元の生活に戻るのだろう。
そう思っていた。
けれど、それを彼女が許さなかった。
何故かそれが嬉しかった。
このとき、本当に、誰かに求めてもらえることの嬉しさを知ったような気がする。
あの人のお母さまにも出会って、"母"と言う存在の偉大さに、やっと気づけた。
あの人は、私にないものをたくさん持っている。
時々、それを羨ましく感じるときがある。
ないものをねだる自分。
こんな自分はひどく醜い。
だからあの人も、私に会いにきてくれないのだろうか?
私の母は、物心着く前に亡くなっていて、父にも母にも、身寄りとなる人はいなかった。父は私が学校に通うまで、育児と仕事を両立させてきた。
私が学校に通っていたのは、7歳から12歳までの5年間。その学校は、平民も受け入れてくれる唯一の学校で、それなりにお金のある平民しか入れなかったけれど、父は喜んで入学手続き書類にサインした。
学校は、まずクラスが平民と貴族で分かれていた。平民はまず読み書き、計算、女子は裁縫を習い、男子は体育で体力づくりに勤しむ。貴族は、立ち振る舞い、ダンス、教養について学んだ。
だんだん学年が上がると、大体の平民は12歳で学校を卒業し、そのまま学校で習った技術を使い、働く。貴族は中等部という、もう一つ上の学年へ進級していき、最終的には高等部を卒業するらしい。その間に、貴族は高位貴族の方に名前や顔を覚えてもらったりするらしい。
学校の中で、平民と貴族が一緒に行動することはほとんどない。教室のある棟も別々で、共有するところといえば、体育館や図書館、裁縫室ぐらいかもしれない。
なかなか貴族に会ったりはしない中で、一度だけ、あの人を遠目で見たことがある。
図書館の近くに、巣箱を設置している木があって、その日あの人はその木の下で昼寝をしていた。そのとき、巣立ちに失敗した小鳥が巣箱から落ちてしまい、それに気づいた彼が、慌てて小鳥をキャッチして巣箱に戻してあげた。
その時のあの人の表情が胸に焼き付いて、なぜか頭から離れなかった。
そして私は学校を卒業し、父の仕事の手伝いをしながら生活していた。あの人のことは、忙しい毎日の中で、だんだん思い出さなくなっていた。
そんなとき、父が陛下から男爵位を賜ることになった。こんな今だから、娘に早く嫁ぎ先を…と思ったのかもしれない。あの人との婚約が成立したことを、父から聞いた。そして、婚約期間を過ぎ、遂に輿入れすることが決まった。
あらかじめ、父から政略結婚だと聞いている。
けれど、学校では遠かったあの人のそばに居られると思うだけで嬉しかった。あのとき、小鳥に向けたような顔を、私にも向けて欲しいと思った。
けれど…。
結婚式から、彼は帰ってこなかった。
自分の中で、理解しているつもりだった。
あの人には好きな人がいる。自分よりも、守るべき愛する人が。
それなのに、家令を通して、その愛する人の話し相手を頼まれた。どうしてって思ったけど、自分は仮にもあの人の妻だから、あの人の言うことには逆らっては駄目だと思って、あの人の真に愛する人に会いに行った。
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そう思っていた。
けれど、それを彼女が許さなかった。
何故かそれが嬉しかった。
このとき、本当に、誰かに求めてもらえることの嬉しさを知ったような気がする。
あの人のお母さまにも出会って、"母"と言う存在の偉大さに、やっと気づけた。
あの人は、私にないものをたくさん持っている。
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こんな自分はひどく醜い。
だからあの人も、私に会いにきてくれないのだろうか?
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