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目覚め
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目を開けると、そこはもう見慣れた天井だった。
ずっと、永い夢を見ていたような気がする。
カーテンが開いているのか、部屋に入ってくる光が眩しい。それはまるで、あのときのような…。
「奥様っ。よかった!お目覚めになったのですね!?」
突然、ぬっと視界にメアリが入り込んできた。
「メアリ?どうしたの?」
「どうしたもこうしたも!奥様は3日間眠り続けていたのです!メアリは心配しました。お目覚めになられて本当によかったです」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫だから」
「いいえ!まだ休んでいてください。屋敷中の使用人達も奥様の容態を心配していたので、お目覚めになられたことを伝えてきます。お腹もすいていらっしゃると思いますので、胃に優しいものを持ってきますね!」
そう言って、メアリは部屋を出て行ってしまった。
『屋敷中の使用人達も奥様の容態を心配していたので…』
「本当にそうだったら、嬉しいな」
今はメアリを頼っているけれど、もっと屋敷の人たちと仲良くならなければ。様々なものを見て聞いて、覚えて、使って、いろんな情報も手に入るような仕組みも作らなければならない。
でなければ、とても公爵夫人なんて務まらない。
私では、まだまだ。
どうしてあの人が私を妻に望んだのか。
やっぱり私にはわからない。
父は政略結婚と言ったけど、一体あの人と何の契約を交わしたのだろう。
私ではなくてもよかったはずなんだ。
私が選ばれたのは、偶々のはずなんだ。
……はずなのに。
お義母さまや、メイド達の声が頭の中で交錯する。
私には貴方がわからない。
貴方の考えていることが、わからない。
貴方が私を妻に望まなければ、私は、貴方をもっと好きになることはなかった。
"期待"なんて、しなくても済んだ。
私は…。
ずっと、永い夢を見ていたような気がする。
カーテンが開いているのか、部屋に入ってくる光が眩しい。それはまるで、あのときのような…。
「奥様っ。よかった!お目覚めになったのですね!?」
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「メアリ?どうしたの?」
「どうしたもこうしたも!奥様は3日間眠り続けていたのです!メアリは心配しました。お目覚めになられて本当によかったです」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫だから」
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そう言って、メアリは部屋を出て行ってしまった。
『屋敷中の使用人達も奥様の容態を心配していたので…』
「本当にそうだったら、嬉しいな」
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私では、まだまだ。
どうしてあの人が私を妻に望んだのか。
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……はずなのに。
お義母さまや、メイド達の声が頭の中で交錯する。
私には貴方がわからない。
貴方の考えていることが、わからない。
貴方が私を妻に望まなければ、私は、貴方をもっと好きになることはなかった。
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私は…。
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