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はじまり
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嫉妬に狂う自分なんて嫌い。でも、あの人を嫌う努力ができるかも怪しい。
私は、どうがんばっても理想の妻にはなれないことを知ってしまった…。
そして、疲れてしまったの。
だからあなた、もういいでしょう?
あの人とは、政略結婚だった。
私は以前からあの人を想っていて、婚約したときはとても嬉しかった。けれど、あの人には可愛い幼馴染がいて、いつも気にかけて傍にいたのを知ってる。王宮でも噂になってたもの。婚約後は、あの人と幼馴染は公認のカップルだったのに、いきなり現れた私が、愛し合ってた二人を引き裂いたのだと。婚約直後はよくいたずらされてたっけ。
そんないたずらも、最先端の情報を好む彼らには飽きられたのか、最近はほとんどない。いつの頃だったか、ようやく私も社交界に受け入れてもらえた。…はずだった。
気づけば、全身水浸しだった。
目の前には、複数の令嬢たちが口元を扇で隠しくすくすと笑っている。片手には空いたグラスを持っていた。
そこで私は気づく。ああ、彼らに受け入れてもらえるなんて、そんな天地がひっくり返るようなことなんか、きっとこの先も起こることはないのだと。それならば…。
私の中で、何かが砕け散った音がした。
「ふふふ…あははははははは」
私の様子に何かを感じ取ったのか、目の前の令嬢が後ずさった。
「あら、どうなさったのジニア嬢。お顔が優れないようだわ、ここはすっきりとした顔をするところではなくて?」
「……あなた、変よ」
ジニア嬢は絞り出すようにそうつぶやくと、逃げるようにその場から姿を消した。
この日が、はじまりだった。
私は、どうがんばっても理想の妻にはなれないことを知ってしまった…。
そして、疲れてしまったの。
だからあなた、もういいでしょう?
あの人とは、政略結婚だった。
私は以前からあの人を想っていて、婚約したときはとても嬉しかった。けれど、あの人には可愛い幼馴染がいて、いつも気にかけて傍にいたのを知ってる。王宮でも噂になってたもの。婚約後は、あの人と幼馴染は公認のカップルだったのに、いきなり現れた私が、愛し合ってた二人を引き裂いたのだと。婚約直後はよくいたずらされてたっけ。
そんないたずらも、最先端の情報を好む彼らには飽きられたのか、最近はほとんどない。いつの頃だったか、ようやく私も社交界に受け入れてもらえた。…はずだった。
気づけば、全身水浸しだった。
目の前には、複数の令嬢たちが口元を扇で隠しくすくすと笑っている。片手には空いたグラスを持っていた。
そこで私は気づく。ああ、彼らに受け入れてもらえるなんて、そんな天地がひっくり返るようなことなんか、きっとこの先も起こることはないのだと。それならば…。
私の中で、何かが砕け散った音がした。
「ふふふ…あははははははは」
私の様子に何かを感じ取ったのか、目の前の令嬢が後ずさった。
「あら、どうなさったのジニア嬢。お顔が優れないようだわ、ここはすっきりとした顔をするところではなくて?」
「……あなた、変よ」
ジニア嬢は絞り出すようにそうつぶやくと、逃げるようにその場から姿を消した。
この日が、はじまりだった。
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