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この恋、諦めます。-猪突猛進ヒロインの場合- 1
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「ずっと前から好きでした。付き合ってください!」
先生からゴミ出しを頼まれ、無事任務をこなした帰り、そんな声が聞こえてきたので、興味本位で声の方に近づいたことを、セレンは後悔した。
告白の現場にいたのは、幼なじみで絶賛片想い中のイザラと学園一の美少女シルヴィア。
あ、詰んだ…。
私の頭の中には、二人の愛が成就して、なんやかんや障害を乗り越えながらも、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。のハッピーエンドが展開されていた。
もう、おしまいだ。
終わった…。私の恋。
きっと最初で最後の愛。
じわっと涙が溢れてきたが、無視してそのまま振り切る。
…そうと決まればやることはたくさんだ。
今までずっと拒否してきた縁談にも向き合っていかなくてはならない。
さあっ!お父様たちと連絡を取らないと!
セレンは寮へと走り出した。
************
両親と通信用の水晶玉で連絡を取ると、両親は驚きつつも、縁談に前向きに向き合っていく旨を伝えると、ホッとしたような様子だった。
早速今週末に会うことで話が纏まり、通信を切った。
水晶玉の光が切れ、部屋に静寂が戻ると、また昼間の告白現場を思い出してしまい、泣きそうになってしまう。
あの光景を、忘れて笑える日が来るのだろうか。
いいや、忘れられる自信がない。
心はヘコんでヘコんで、ヘコみまくって、ずっと苦しんでいる。胸が痛い。
私は一生、から元気で自分や周りを誤魔化して生きてくんだろうか。
考えはじめると、とことんネガティブな自分が嫌になってきた。
忙しく、しなきゃ。
じゃないと失恋のことで頭がいっぱいになってしまう。前に進めない。一人で閉じこもってはダメだ。
失恋の痛みなんて、考える暇もないくらいに忙しくしないと…。
ただそれだけを考えた。
今夜は、眠れるだろうか。
失恋のショックは、なかなかにダメージが大きい。
心配になりながらも、布団に潜り瞳を閉じた。
************
小鳥の囀りで朝だと気づく。
「…もう、朝」
……結局、一睡もできなかった。
「起きて支度しよう」
布団からむくりと起き、立ち上がる。
鏡を見てみると、そこには目元にはクマを作り、泣き腫らした顔の自分がいた。
「酷い顔…」
すぐにタオルを濡らし、目元に当てる。
なかなか赤みは引かなかった。
いつもはしない化粧で隠そうとしたが、うまくいかず、申し訳程度におしろいを塗って登校した。
身支度を済ませ、食堂へ朝食を摂りに行くと、タイミング悪くイザラと遭遇した。
「セレン!こっちおいで、一緒に食べよう」
数秒迷った後、手招きする方へ行くことにした。
会いたくなかった…。と思う反面、彼をみた途端に心臓は正直にドクドクと高鳴っている。そんな心臓が恨めしい。
「今日はいつもより早いね。どうしたの?」
「ちょっと寝付けなくて」
「大丈夫?悩み事?セレンは心配なことがあると、考え込んで眠れなくなるから、心配だなぁ」
「たいしたことないら、心配しなくても大丈夫よ」
ときめいている鼓動を無視して、サラダを次々に口に放り込んでいく。…味は感じられなかった。
ササッと朝食を食べ終わると、急いでイザラから離れる。
「ごめん、ちょっと急いでるから。またね」
「あ、うん…」
ちょっとあからさまだったかな…。と思いつつも、急いでいるのは本当なので、気にしたのは最初だけで、すぐに気にならなくなった。
…えっと、たしかここのどこかにあったはず。
セレンは学校の何処かにあるとされている、秘密の第二理科室を探していた。そこでは、ある女子生徒が薬の研究をしているらしい。どんな薬も頼めば作ってくれるという。
すると、セレンが校舎の4階にたどり着いた刹那、凄まじい爆発音と共に、身体は強風で飛ばされ、壁に打ち付けられた。セレンは軽く呻いた。
身体中が痛い。頭がぐらぐらする。
イザ、ラ…。
途端に我にかえる。こんな時にもイザラを思っていることに気付いてしまった。
「セレン!」
やだ。こんな時に幻聴まで聞こえてくるなんて…。
イザラが私を追いかけて来たなんてあり得ない。
だんだんと朦朧としていく意識の中、こちらに近づいてくる人影が一瞬写ったが、それが誰だったのか、知ることは叶わなかった。
セレンは意識を手放してしまった。
先生からゴミ出しを頼まれ、無事任務をこなした帰り、そんな声が聞こえてきたので、興味本位で声の方に近づいたことを、セレンは後悔した。
告白の現場にいたのは、幼なじみで絶賛片想い中のイザラと学園一の美少女シルヴィア。
あ、詰んだ…。
私の頭の中には、二人の愛が成就して、なんやかんや障害を乗り越えながらも、幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。のハッピーエンドが展開されていた。
もう、おしまいだ。
終わった…。私の恋。
きっと最初で最後の愛。
じわっと涙が溢れてきたが、無視してそのまま振り切る。
…そうと決まればやることはたくさんだ。
今までずっと拒否してきた縁談にも向き合っていかなくてはならない。
さあっ!お父様たちと連絡を取らないと!
セレンは寮へと走り出した。
************
両親と通信用の水晶玉で連絡を取ると、両親は驚きつつも、縁談に前向きに向き合っていく旨を伝えると、ホッとしたような様子だった。
早速今週末に会うことで話が纏まり、通信を切った。
水晶玉の光が切れ、部屋に静寂が戻ると、また昼間の告白現場を思い出してしまい、泣きそうになってしまう。
あの光景を、忘れて笑える日が来るのだろうか。
いいや、忘れられる自信がない。
心はヘコんでヘコんで、ヘコみまくって、ずっと苦しんでいる。胸が痛い。
私は一生、から元気で自分や周りを誤魔化して生きてくんだろうか。
考えはじめると、とことんネガティブな自分が嫌になってきた。
忙しく、しなきゃ。
じゃないと失恋のことで頭がいっぱいになってしまう。前に進めない。一人で閉じこもってはダメだ。
失恋の痛みなんて、考える暇もないくらいに忙しくしないと…。
ただそれだけを考えた。
今夜は、眠れるだろうか。
失恋のショックは、なかなかにダメージが大きい。
心配になりながらも、布団に潜り瞳を閉じた。
************
小鳥の囀りで朝だと気づく。
「…もう、朝」
……結局、一睡もできなかった。
「起きて支度しよう」
布団からむくりと起き、立ち上がる。
鏡を見てみると、そこには目元にはクマを作り、泣き腫らした顔の自分がいた。
「酷い顔…」
すぐにタオルを濡らし、目元に当てる。
なかなか赤みは引かなかった。
いつもはしない化粧で隠そうとしたが、うまくいかず、申し訳程度におしろいを塗って登校した。
身支度を済ませ、食堂へ朝食を摂りに行くと、タイミング悪くイザラと遭遇した。
「セレン!こっちおいで、一緒に食べよう」
数秒迷った後、手招きする方へ行くことにした。
会いたくなかった…。と思う反面、彼をみた途端に心臓は正直にドクドクと高鳴っている。そんな心臓が恨めしい。
「今日はいつもより早いね。どうしたの?」
「ちょっと寝付けなくて」
「大丈夫?悩み事?セレンは心配なことがあると、考え込んで眠れなくなるから、心配だなぁ」
「たいしたことないら、心配しなくても大丈夫よ」
ときめいている鼓動を無視して、サラダを次々に口に放り込んでいく。…味は感じられなかった。
ササッと朝食を食べ終わると、急いでイザラから離れる。
「ごめん、ちょっと急いでるから。またね」
「あ、うん…」
ちょっとあからさまだったかな…。と思いつつも、急いでいるのは本当なので、気にしたのは最初だけで、すぐに気にならなくなった。
…えっと、たしかここのどこかにあったはず。
セレンは学校の何処かにあるとされている、秘密の第二理科室を探していた。そこでは、ある女子生徒が薬の研究をしているらしい。どんな薬も頼めば作ってくれるという。
すると、セレンが校舎の4階にたどり着いた刹那、凄まじい爆発音と共に、身体は強風で飛ばされ、壁に打ち付けられた。セレンは軽く呻いた。
身体中が痛い。頭がぐらぐらする。
イザ、ラ…。
途端に我にかえる。こんな時にもイザラを思っていることに気付いてしまった。
「セレン!」
やだ。こんな時に幻聴まで聞こえてくるなんて…。
イザラが私を追いかけて来たなんてあり得ない。
だんだんと朦朧としていく意識の中、こちらに近づいてくる人影が一瞬写ったが、それが誰だったのか、知ることは叶わなかった。
セレンは意識を手放してしまった。
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