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第5章
50話☆
しおりを挟む「ん、んっ、ヴィン……ス」
「お前は……っ、せっかくこの俺が逃がしてやろうとしたのが分からないのか……?」
下唇を甘く食まれる。
角度を変えて何度も噛み付くようにヴィンスに口付けられ、本当に食べられてしまいそうだ。
リーナは縋るようにヴィンスの背中に腕を回した。
ぽたりぽたりと、雨水を吸ったヴィンスの服から雫が垂れる。
二人の足元には、小さな水たまりが出来ていた。
「……ぁっ」
ヴィンスの指がリーナの顎を捉え、親指で唇をなぞってくる。
ゆっくりとリーナの唇を開かせると、ヴィンスはキスを深めた。
「俺が……お前のことを、どれだけ愛しているか……分かるか?」
ヴィンスの舌先が口内を優しくくすぐり、リーナの舌に絡んでくる。
二人の交わる水音は、強く地面を叩く雨音によってかき消された。
あまりに深い口づけに、リーナは酸素が足りなくてくらくらする。
だから気づかなかった。
ヴィンスの視線が、リーナの首筋を掠めたことに。
リーナの首筋へ付けられた紅い痕。
それを見つけた途端、ヴィンスの顔色が変わる。
甘やかなものから、静かな怒りをたたえたものへ。
「リーナ……。この首筋は、誰にやられた?」
「ふ、ぇ……っ」
一瞬、何を言われている分からなかった。
キスの余韻でぼうっとしているリーナに、ヴィンスがリーナの首筋に咲く紅い花をとんと指で示す。
(あ……っ! エフィー!)
さぁっと、リーナの顔から血の気が引く。
そこはエフェルによって鬱血し、無数の紅い花が咲いていた。
「あの男しかいないよな……?」
あの男とは、エフェルのことだろう。
(合ってる! 合ってるけど!)
ヴィンスの指が紅い花を探すように動き、ネグリジェの首元にかかる。
リーナはビクリと身体を強ばらせた。
ヴィンスの服から水気を吸ったネグリジェは身体に張り付いて、リーナの身体のラインをあらわにしていた。
「どこまでされた?」
「どこまでって……」
最後まで。
昨夜のことを思い出して、リーナは泣きそうになった。
そのリーナの表情を見て、どこまでされたのかをヴィンスは察してしまったらしい。
「あの男!!」
「ま、待って! ヴィンス待って!」
このまま行かせてしまったら、エフェルを殺しかねないレベルの勢いだ。
今にもエフェルを探しに行きそうになったヴィンスを、服の裾を掴んで必死で引き止める。
「確かに、されたけど……人違いで……。だから」
だから許してあげて欲しいと。
だから自分は怒っていないと。
何故ヴィンスに対してエフェルを庇わなければいけないのかと思いながらも、リーナは必死でいい募った。
「……俺のモノに、勝手に触れたのが許せないんだよ」
(あ……)
少し拗ねたようなヴィンスの顔。
その表情が、態度が可愛くて、リーナの中に愛しいという気持ちが込み上げる。
「……お前は俺のモノだ」
「あ……っ」
ヴィンスの指が、ネグリジェの上からリーナの身体のラインをなぞった。
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