空間魔法って実は凄いんです

真理亜

文字の大きさ
上 下
419 / 462

到着

しおりを挟む
 次の日はまたラウムさんとアスカさんが御者に戻った。そしてステラさんは今日も飛んで前方を確認してくれている。

「おかしいですね...」

 お昼休憩のために馬車を止め、ステラさんにも降りて来て貰ってみんなで軽食を摘まんでいる時だった。徐にステラさんがそう言って首を捻った。

「なにがですか?」

「普通、ダンジョンに近付くに連れて魔物の数が多くなるものなんですよ。だから必然的に魔物と遭遇する率も高くなるはずなんですが、ここまで全く遭遇していませんよね? 普段ならこんなことは有り得ないと思うんですよ」

「あぁ、なるほど...そういうことですか...」

 ステラさんが疲れを押してまで前方の確認をしてくれたのには、そういった経験則に基づいた背景があったからなんだね。

「言われるみると確かに妙だな...」

「えぇ、静か過ぎて逆に不気味ですよね...」

「嵐の前の静けさみたいな感じなんでしょうか...」

 お三方も同様に不審がってるようだ。

「取り敢えず先を急ぎましょう。まずは先発した冒険者部隊と合流するのが先決ですからね。魔物と遭遇しないならその方が好都合だと思うことにしましょうよ」

 だから私は敢えてポジティブな発言をして、みんなの不安を少しでも和らげようとした。

「そうですね。では私は先に行きます」

 そう言ってステラさんはバスタオルを剥いだ。実はステラさん、イチイチ着替えるのが面倒という理由で、食事中はずっとバスタオル一枚の姿だったりした。

「カリナ、念のため午後からは私とアスカが御者を交代しよう」

「えっ!? でも...」

「カリナさんはパーティーリーダーなんですから、なにかあった時のために休んでてください。セリカさんもです。体力を温存しておいてください」

「分かりました...ではお言葉に甘えて...」

 なんか申し訳なくて躊躇っていた私を、アスカさんがさりげなくフォローしてくれたのは有り難かった。私とセリカさんは座席に着いて旅を続けた。


◇◇◇


「クエ~~~」

 しばらく進むと、上空のステラさんなんとも間延びしたような声で鳴き始めた。

「どうやらそろそろ目的地に着くようだな」

 ラウムさんがそう解説してくれた。なるほど、いよいよランクAのダンジョンに到着するのか。私は気を引き締めた。

 やがて前方に大きな洞窟の入り口が見えて来た。洞窟は切り立った崖の麓に位置している。

「あれがランクAのダンジョンですか...」

 そのなんとも言えない異様な佇まいは、まるで怪物が大口を開けているようにも見えた。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

次は幸せな結婚が出来るかな?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:146

泣き虫な俺と泣かせたいお前

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:37

【完結】ずっとやっていれば良いわ。※暗い復讐、注意。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:17

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:13

処理中です...