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様子見

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「あ、そう言えばカリナさん、例の子馬の様子は如何です?」

 馬車が走り出して間も無く、セリカさんが思い出したようにそう言った。

「あ、すっかり忘れてた...」

 言われて気付いた私は亜空間を覗いてみた。

「ん~...どうやら寝てるみたいですね。飼い葉は...うん、ちゃんと食べてるみたいです」

「そうですか...ねぇ、カリナさんはどう思います? あの子馬、伝説だとか言われているユニコーンだと本気で思っていますか?」

 そう言われて私はちょっと考え込んだ。

「う~ん...良く分からないってのが正直なところですかね? もし本当に神の使いだの聖獣だのの類いだとしても、じゃあなんでそんな存在が私のところに来たんだろう? っていう疑問は残りますし」

「確かにそうですよね...そこも非常に気になる点だとは思いますが、私は別の点が気になってたりしてます」

「別の点?」

「えぇ、私は実際にその現場に居た訳じゃないから自分目で見てないし、新聞記事に頼るしかないんですけど、亡くなったジョージさんでしたっけ? その人は密輸に関わっていたらしいですよね?」

「えぇ、そうみたいですね」

「きっと珍しい動物や魔物に目がなくて、手当たり次第に買い漁った中にあの子馬も入っていたのかも知れませんよね。けど、もしそうだとしたら、ちょっとおかしいと思いませんか?」

「と言われますと?」

 要点が分からない私は首を捻った。

「伝説の存在がそんな簡単に人に捕まったりするものだろうか? っていう点です」

「あぁ、確かに...」

「ね? おかしいですよね? 捕まえたのは恐らく密輸業者なんでしょうけど、本当に伝説の存在なんだとしたら、そんなヤツら如きに大人しく捕まるはずがないし、よしんば運悪く捕まったとしても、なにか超常的な能力を発揮して簡単に逃げ出せるんじゃないか? って思うんですよね」

「えぇ、私もそう思います...」

「長々とすいません。私の考察は以上です」

「いえいえ、とても興味深かったです...」

「まぁ何はともあれ、しばらくは様子見って感じですかね?」

「そうですね...」

 私は改めて亜空間の中の子馬を眺めてみた。どうやらまた起き出して飼い葉を食んでいるようだ。

 その光景は確かに絵になるくらい美しいが、セリカさんの指摘した観点から見ると、実は至って普通の光景なんじゃないかと思えてきた。

 ふと空を見上げると、先行して前方を偵察してくれているステラさんの姿が目に入って来る。私は頭を振って任務に集中した。

 その日は結局、魔物と遭遇することはなかった。
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