空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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メタン

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「あぁ、確かに。ステラさんの言った通り、ダンジョンで見掛けた吸血コウモリとは明らかにサイズが違いますね?」

 ダンジョン産のが猫くらいの大きさだとすると、ここに棲み付いているのは鳩よりもちょっと小さいくらいのサイズだ。ちなみに今、吸血コウモリの群れはまた天井付近へと戻って行った。

「えぇ、恐らくですが魔物化したことによってサイズが変化したんでしょうね」

「魔物化...そんなことがあるんですね?」

 初めて聞いた言葉だ。

「えぇ、ダンジョンに入り込んだ野生動物が、そのまま魔物化するってことは良くあるみたいですよ?」

「そうなんですね...」

 なんか怖いね...もしかしたら野生動物だけじゃなく、人間も魔物化したりなんかして...

 私はダンジョンで出会ったアンデッドどもを思い出しながら身震いした。

「ど、どうやって駆除すればいいんですかぁ? あ、あんなに沢山居たら無理ですよぉ~...」

 セリカさんが泣き言を吐く。私も良いアイデアが全く浮かばない。

「困りましたね...あんなに的が小さいんじゃ...剣や弓矢で当てるのは難しそうだし...ましてやチョコマカ飛び回るし...あぁ、こんな時アスカさんが居てくれたら...」

 頼りになる攻撃魔法使いが今は居ない。私はアスカさんを先に王都へと帰したことをつくづく後悔した。

「カリナさん、それはアスカさんの魔法で一気にやっつけようって意味ですか?」

「えぇ、そうですけど?」

「残念ながらそれも無理です」

「えっ!? なんでですか!?」

 私は首を捻った。

「魔法に耐性のあるダンジョン内ならともかく、こんな廃坑跡で大出力の魔法なんかぶっ放したりなんかしたら、ヘタすりゃ落盤が起きて我々ぺしゃんこになりますよ?」

「ひぇ...」

「う、ウソ...」

 私とセリカさんは言葉を失った。ダメじゃん! 詰んだじゃん!

「...出直しましょうか...」

「...賛成です...」

 私とセリカさんは力無くそう言った。

「...いえ、ちょっと待ってください」

 すると、なにか考え込んでいたステラさんが私達を引き留めた。

「ステラさん?」

「どうかしましたか?」

「お二人とも、先程漂っていた臭い匂いを覚えてますか?」

「あぁ、あの卵が腐ったみたいな?」

「うげ...思い出したくないです...」

「多分ですがあれは、吸血コウモリの排出した糞が堆積して発酵し、メタンを生成したんだと思います」

「メタン?」

「はい、それが臭い匂いの原因でしょう」

「なるほど...それでさっきステラさんは地面を凝視してたんですね?」

「えぇ、そうです」

 つまり私達は吸血コウモリの排出した糞の上に立ってた訳だ。汚っ!

「メタンは空気より軽いんで上の方に溜まりやすいんです。そして」

 ステラさんはそこでいったん言葉を切ってから徐にこう続けた。

「非常に燃えやすいという特徴があるんです」
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