空間魔法って実は凄いんです

真理亜

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吸血コウモリ

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 廃坑跡の内部は当然ながら真っ暗だった。

「松明を出しますね」

 私は亜空間から松明を取り出して点火した。通路の横幅は結構広い。私達三人が横に並んでも歩けるくらいだ。高さもそこそこある。だから圧迫感をあんまり感じない。

「あ、カリナさん、壁の上の方に灯り取りの蝋燭がまだ残ってますね。火を点けながら進みましょうか」

 ホントだ。通路に沿って等間隔に蝋燭が設置されている。

「分かりました」

 一つ一つの蝋燭に火を点しながら進むと、次第に通路全体が明るくなっていった。

「上の方に注意してくださいね? どこに吸血コウモリがぶら下がっているか分かりませんから」

「ひぇ...わ、分かりました...」

 ステラさんの言葉にビビりのセリカさんが怯えている。私も上の方を注視しながら進んだ。

 しばらく進むと、ちょっとした広場みたいに開けた場所に出た。天井もかなり高くなっている。

「臭っ! なんですかこの匂い!」

 そこには卵が腐ったような臭い匂いが充満していた。私は思わず鼻をつまんで顔を顰めた。

「おぇ...き、気持ち悪い...」

 どうやらセリカさんも同様のようだ。

「...」

 そんな中、一人ステラさんだけは無言で足元を見詰めている。やがてやおら顔を上げ、睨み付けるように厳しい眼差しで天井を見上げた。

「カリナさん、松明を上に」

 私は言われるがままに松明を上に掲げた。高くて良く見えなかった天井が露になる。

「うん? あれなんだろ?」

 天井には小さい赤い点が、まるで夜空を彩る星々のようにポツポツと無数に光っていた。そのまま見ていると、赤い点は一斉に動き出した。

「皆さん! 気を付けて! どうやらここは吸血コウモリのコロニーのようです!」

 ステラさんの緊迫した叫びが終わらない内に、赤い点は四方八方に飛び回り始めた。どうやらあの赤い点は吸血コウモリの目だったらしい。

「ひっ!?」

 セリカさんが短い悲鳴を上げる。気付いたら私達は、吸血コウモリの群れに包囲されていた。

「た、待避~!」

 私は慌ててお二人を亜空間に引っ張り込んだ。と同時に、今まで私達が居た場所を吸血コウモリの群れが埋め尽くす。凄い数だ。とても数え切れない。

「あわわわ...」

 セリカさんは放心状態になってへたり込んでしまった。

「あ、危なかった...ステラさん、ありがとうございます...」

「いえいえ...それにしても...まさかこんなに大量に棲み付いているだなんて...」

 私達は未だ縦横無尽に飛び回っている吸血コウモリの群れを見ながら、こんなんどうやって駆除すればいいのか途方に暮れていた。

 
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