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魔街に現れた男、田中大

レプリカ宝具:クサナギノカタナ

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 おらっち、田中大。
 一人称は〝おらっち〟。
 顔がデカい。五頭身。
 坊主頭で、ヲタクやってます。坊主でなんか運動家っぽいって思われるかもだけど運動ニガテっす。
 身長は平均的。女子のほうの平均だけど。当然おらっちは男だ、知り尽くしてんだそんなの。女じゃねえ。
 体重は平均的。男子のほうの平均だけど。
 はっきりいって、おらっち、クズだよ。だってさ、好きな子と、強制結婚したいって思ってるから。
 おらっちは〝タナカ〟っていうありふれた名前だけど、学年で田中なのはおらっちひとり。意外と少ないんだ、おらっちの周りではの話だけど。
 おらっち、大の爆乳好きでね。最低Uカップは欲しいね、彼女。結婚もして子どもにそのオッパイ吸わせてあげたい。
 Uカップある噂ある子、ひとりだけならいた、おらっちの高校に。その子は顔もかわいくてね……。
 それにしても、毎日が、退屈だ。恋人が欲しい。抱き合いながらダンスしたい。アワビ食いてえ。栗と栗鼠食いてえ。巨峰の房食いてえ、吸いつきてえ、ベロベロ舐めまわしてえ……エトセトラ。
 おらっちは高校卒業後、就職したんだ。町工場、そしてブラック企業の。
 おらっち、きっと学校で一番モテなかった。おらっちは、高校中退して定時制高校に入ってそこも中退して、今度は別の定時制高校入って卒業。その後、就職したわけだ。過酷な経験だったよ。べつに金持ちでもないのに、貧乏といわれて当然の家なのに何度も、学校にはいった。でも低学歴。
 無職で金に困るおらっち。ゲームやってた。カップヌードル食した後にスイーツをデザートとして引き続いてたのしもうとしていた。
 なんか割れた音がしたぞ。
 ゲーム、続けたいが、放置。
(んん? ……あれって……チクショウ……)
 無職しだして数日後のある日、おらっちの家にドロボーが来た。そのドロボーに見覚えがある。
「何も盗んでなんかない」
「嘘だろ!」
「クソ」
「おいっ! 同じ学校だっただろっ! 小中と! ……仲間に入れてくれ」
「……いいぞ、その代わり、今回の盗みを許せ」
 おらっち、強盗犯の仲間に加わった。
 おらっちが仲間入りした強盗犯グループのリーダーは、おらっちの中学校でもっとも悪いやつだった。何度も犯してきたんだとおらっちは聞いた、昔から。
「今日やりにいくのは宝の山だぜ」と、強盗犯グループの副リーダーは言った。
 今日おらっちたちが盗みにいくのは宝の山だそうで。
 数時間経って、夜になった。
 奇襲予定の屋敷は、誰もいないようで、誰かいる感じ。デカい屋敷だ。どんな人が何人いるのだろうか。娘のオッパイはデカいのか。
 おらっち、刀みたいなの、盗んだ。
 すげえ、なんか感じるよ、すげえってものを。
 おらっちたちは、逃げた。
 いつものように基地に帰った。
「タナカダイ、何盗んだ」
「刀だ」
「なんだよそれ」
「いいだろ? なんかセクシーな曲線美っていうか♡! ……抜いちまおう♡」
 おらっち、抜刀寸前。
「斬るなよ」
「それ、クサナギノカタナだ」と、強盗犯グループのリーダーはいった。
「クサナギノカタナって、あの!」
「でもレプリカだろ。熱田神宮にモノホンのがあると聞いてるから」
 おらっち、抜刀。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 紫色の炎が音を立て、おらっちを包んだ。でもおらっちはヤケドしたわけではない。おらっち、〝おらっち〟よりも〝オラッチ〟という感覚、オレ様系になった感じ。でもおらっちって感じのままだ、しっくりこないんだ、おらっちが、オレ様系なんてさ……。
「おい、こいつどうなったんだ! タナカダイ!」
「おいおい! もえるぞ!」
「どうすんだ! タナカ!」
 意識が意味わからなくなった。まあ、もとから意味わからない感じだが。抜刀直後、特に意味不明なんだ。
 おらっちの周りには、女の子? でもおらっちの所属した強盗犯グループに女はひとりもいない。しかも、その女の子たちは、綺麗……♡!
「寝てるとこ襲いかかってんじゃねえぞ!」
「そうよ、急に抜いてくるなんて……乱れてるわね」
「しかもアタイらの体触ってんじゃねえぞ!」
「ごめん!」
「あやまって済むと思うな! 犯罪者!」
 おらっち、なんか、危なそうな雰囲気の街にいる。こんなとこ、知らない。どこだ。もしかして、異世界転移か。
 でも怖いよ、逃げよう、この女の子たちから、そして、この街から。
 逃げ場はどこだ……。今は路地裏……。
 おらっち、とりあえず公衆トイレにはいった。そして、放尿。
 放尿後、出口近くにある、鏡でおらっちの顔を見たが、呪われた男の顔みたいになっている。ゲス顔の。顔芸っていわれるだろうって程度の。そういえば、さっきの女の子たちも、なんかすごく不吉そうなオーラがあった。ひとりは貧乳で毛の色は緑。もうひとりは爆乳で毛の色はピンク。そうだ、あの子、Uカップはありそう……だが、おらっちがあの子を落とそうとしたところで、殺されるかもだ……ってぐらいの怖い系の女の子だ、でも美形なので、許容範囲だ、恋愛の。
 強盗犯グループのメンバーになったんだし……誘おう、か? ……。
 おらっち、またさっきの場所にいった。
 さっきの女の子たち、いたぞ、よかった。
「あの」
「アァッ?」
「ごめんなさい!」
 やっぱり怖くて逃げるおらっち。
 どうしよう、どう逃げるんだ。怖いよー。
 もうあの子たちのことはあきらめよう。でもさ、なんか、寝てるとき襲っただとか、急に抜いたとか……。もしかして、おらっち、強盗後に酔っ払ってて、女の子を襲ったのかもな……変なところにもきちまって……おらっち、記憶力悪いし……強盗後、ほとんど記憶ない。そういえば、叫んだな……でもあれは酔っぱらいの馬鹿騒ぎか……?
 駅だ。駅弁大会したい……。さっきの子たちと一緒に……無理か……そんな関係にはなれないさ。
 駅で、おらっちは金支払わずに電車の旅する方法を知っている。強盗犯グループのやつらから教わった。使わなくなった、定期券を、駅員に見せて通る。これで通れた。つまり、騙しているのだ。しかし……おらっち、それで止められてダッシュで逃げたんだよな、昨日の昼。
 どうしよう、おらっち、もう逃げ場ない。狙われすぎている、いろんなとこから……。……モテてるわけではないが。
 おらっちはとりあえず服を売って切符代を手にする。
 列車に乗った。
 これからおらっちは、どうなるのだろうか。
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