18 / 62
オナニ様陣営
生プリマへのあこがれ
しおりを挟む先生との特訓の後、すぐに受験はやってきた。
そして、合格発表の日も…。
結論から発表する。
僕は不合格だった!
と思ったら、繰り上げ合格になった。
AO入試でもそんなことあるんだ…。
私立だからかなぁ。
実は、不合格になってからも「まだなんか事件が起こって合格になれ!」って念じてた。
先生の言ってた、メンタルってやつ。
合格発表後に不合格って書いてあっても落ち込まずに「一般入試じゃ無理なんで、AOで繰り上げ合格する」って念じてた。
それで、本当に合格しちゃったわけだ。
自分でも笑っちゃうよ。
先生に「繰り上げ合格しました!」って報告した。
「そんなの嘘ね。」と先生は僕を信じていなかったみたいだけど、事実だ。
合格が嬉しくて有頂天の僕は、すぐに理科教員室に向かって、先生に大声で合格の自慢をしたのだった。
「先生。僕、大学合格したんでご褒美もらってもいいですか?」
「ご褒美?まぁ、考えてやらなくもないけど、今すぐは無理よ。一般入試が終わるまで忙しいの。」
確かに、僕は暇になるけど、これから先生は忙しくなると思う。
ちょっと寂しいものの、ここは、面倒な子どもだと思われたくないので潔く引くことにした。
「別にいつでもいいんで、お願いします!」
珍しく、理科教員室に先生1人しかいなかったので本当はこの場に入り浸りたかったのだけれど、先生の周りにはあらゆる書類と荷物が散乱していた。
多分、相当忙しいのだと思う。
ちょっと先生、ドライ対応だったし。
僕は、放課後で人がいない生物室に向かった。
教室の1番後ろの席に座る。
今はともかく喜びが大きく、踊り出したい気分である。
その一方で、大きな不安もある。
例えば、先生との関係について。
卒業まで残り何日あるのだろう?
先生と、学校で会えるのは後何日くらいかな?
卒業して会えなくなった、僕たちの関係はどうなるのだろうか。
嬉しさが今は大きいものの、先々のことを考えると、不安になる。
このままでいたい。
けれど、時間は止めることができない。
(もう、このままの暮らしのままでいいのに…)
今まで、特に先生のことを好きになってからは早く卒業したくて、大人になりたくて堪らなかった。だから、時間が早く進めばいいと思っていた。
それなのに、今は時間が止まって欲しいと思っている。
(僕ってわがままだな…)
まだ、離れ離れになると決まったわけじゃないのに、先生との別れの事を考えて涙が一粒だけ溢れる。
センチメンタルな気持ちのまま、僕は生物室に居るともっとセンチメンタルになった。
だって、ここは、先生とたくさんの時間を過ごした場所だから。
この場所で、僕は先生を好きになったんだと思う。
先生とまだ付き合う前のことを、今になってから思い返すと恥ずかしいな。
一生懸命に、先生に好きアピールをしてた。ちょっと女々しかったかなぁ。
けれど、先生は僕より想いに応えてくれた。
今も充分に子供だけれど、その頃は今よりももっと子供だった。
「だいすき…。」
呟いてみる。
誰もいない教室に、僕の小さい声が反響した。
外は生徒達の声で賑やかだ。
ただ、この生物室だけが静まり返っている。
「なんか言った?」
「うわぁぁぁっ!」
突然の声に僕は驚く。
「なんか声が聞こえたんだけど。」
先生が、教室のドアの隙間からひょっこり顔を覗かせて僕を見ている。
「な、何も言ってないです!」
本当は言ったけど、僕はシラを切ることにした。なぜなら、恥ずかしいから。
「大好きとかなんとか言ってたよね?」
「聞こえてたんですか…。」
ちゃんと聞かれていたのか…。
「はい…。言いましたよ。」
「ふーん。」
「興味ないなら聞かないでください。」
「あるよ、もちろん。だって君、目が腫れているし。気になるに決まってるわ。」
さっきちょっと泣いちゃったから目が腫れていたのかもしれない。
「ちょっと感傷に浸ってたんです。」
「君もそんなことするの?意外すぎるわ。」
「失礼ですね。僕だっておセンチな気分の日もあります!」
「んで、誰のことが好きなわけ?」
そんなの決まってる…。
先生は、目をキラキラさせながら僕を見てくる。
「ほら、言ってみてごらん。誰のことかなぁ?」
先生は、僕を見てニヤニヤしながら生物室に入って来た。
(もう逃げられない…。)
「先生ですよ…。」
僕が観念して答えると、先生はパッと笑顔になった。
とても可愛らしいと思った。
先生はいつもちょっとドライでクールな事が多いから。
「あら、どうも。それで、泣いてたのは?」
僕は知っている。先生はちょっとしつこい。
多分、僕が泣いていた理由を知りたがるはず。
「先生とずっと一緒にいたいんです。でも、卒業したら一緒に居られなくなるかもしれないです。端的に言えば、それが不安です。」
「誰も離れるなんて言ってないよね?」
「はい…。でも、不安なんです。先生は忙しいし。何より僕は子供だから。」
「そんな事で泣いたの?本当に子供ね。」
先生は呆れたように言った。
「大丈夫よ…。」
先生は、僕が座っている席の前に座って僕の方を向いた。
「絶対に離れないですか?一緒にいられますか?」
「もちろん。」
微笑む先生が、僕の頭に手を伸ばす。
優しく頭を撫でてくれる。
「大丈夫。私も君の事が好きだから。」
先生は、僕にだけ聞こえる小さな声でつぶやいた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる