【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

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4章 文化祭

でも空の所には行かない

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 カラオケ中伊織がずっと俺に張り付いていた。
 そろそろ俺も鬱陶しくなって来たから伊織の機嫌を損ねないように離れようと思っていた。


「ちょっとトイレ行って来るわ」

「一緒に行くー」

「へ?いや、すぐそこだし。一人で行って来るから」
 
「ダメ。ここには早川もいるからずっと俺といるんだ」

「はぁ?お前は俺の親かよっ」

「お前ら目離すとすぐイチャつくじゃん。今だから聞くけど、昨日の昼に二人でどこで何してた?ちゃんと事細かく言えるのか?」

「なっ……遠くのカフェで飯食ってただけだよ」


 まさか空と一線を越えた時の事を出されると思ってなくて、少し動揺しちまった。
 こいつ、今更怒る気か?


「って事になってるみたいだけど、もう隠さなくていいから。昨日までの事は無かった事にするつもりだし」

「……お前だって、俺が本当の事言おうとしたら止めたじゃねぇか」

「お前の事も早川の事も文化祭もめちゃくちゃにしたくなかったからな。だから無かった事にするんだよ」

「…………」

「貴哉、俺はお前の事を何よりも大切に思ってる。失いたくないんだ。分かってくれよ」

「分かってるよ……でも……」


 今の伊織はまるで俺を飼ってる犬か何かに首輪を付けてるようで、あまり居心地は良くねぇ。
 俺が微妙な態度取ってると、伊織に顎を掴まれて無理矢理顔を上げられてキスをされた。
 こういうのも嫌だ。
 みんながいるのに平気でして来るの、今は機嫌損ねないようにって我慢してるけど、いつか爆発しそうで俺は顔を少し引いた。


「貴哉」

「俺は、周りに人がいる所でキスとかしたくねぇ」

「……分かった。悪かったよ」


 謝って来たから、チラッと伊織を見ると寂しそうな顔してやがった。
 そんな顔されたらちょっと罪悪感が……


「伊織が俺を信じられないのは分かるけどさ、あまりこういうのが続くと……正直無理かも」

「無理って?嫌いになるのか?」

「なっちゃうかも」

「それは困る。なら俺はどうしたらいい?」

「それは……」


 俺がいけないんだ。
 初めから伊織だけを見ていれば、伊織がこんな風にはならなかったかもしれないんだ。
 今まで散々我慢させて来たのは俺なのに、いざ自分が嫌な事されたら文句言うとか最低じゃん。


「貴哉に嫌われたくない。ずっと一緒にいて欲しい」

「伊織……」

「トイレ一人で行って来いよ。それと早川と話して来ていいから。俺はここにいるから」


 伊織は笑顔だったけど、それはいつもの顔じゃなかった。寂しそうな辛そうな笑顔。そんな伊織の笑顔見たって安心出来ない。


「トイレには行く。でも空の所には行かない。すぐに戻って来るから」

「うん」


 伊織にそう言って部屋から出てトイレへ向かう。
 やっと一人になれてホッとしていた。
 伊織と離れられてホッとするとか酷ぇよな。

 伊織の事は好きだ。
 けど、今の伊織とは一緒にいても楽しくねぇ。
 むしろ窮屈で首輪に付けられた鎖を引きちぎって逃げたい気分だ。

 付き合うってこんなだったっけ?
 いや、言う程人と付き合う経験が多い訳じゃねぇけど、空ん時ってこんなに窮屈だったっけ?
 そりゃあいつもやきもちとかは妬いてたよ?でもこんなに逃げたいとは思った事はねぇよ。

 何が違うんだ?
 伊織と空。
 どうしてこんなにも同じ付き合うで感じ方が違うんだ?

 トイレの中は幸い一人だった。
 今は誰とも顔を合わせたくねぇ。
 俺は用を足して手を洗う。
 そして鏡を見る……

 あ、何だよこの面は?
 酷ぇ面……俺、泣きそうじゃん……

 鏡に映る自分の情けない顔を見たら感情が溢れた。
 辛い。楽しくない。ムカつく。悲しい。好き。嫌い。逃げたい。面倒くせぇ。
 いろんな感情が入り混じってどんどん涙が溢れ出て来た。

 ふざけんな。
 何で俺がこんな思いしなきゃならねぇんだ。
 俺は俺のやりたいようにやる。
 そうしてるじゃねぇか。

 なのにどうして今俺は泣いている?
 悔しくて、悲しくて。
 とにかく涙が止まらなかった。

 ふと空の顔がよぎる。
 ああ、あいつの話聞いてやりゃ良かったな。
 きっとあいつをほっといたからこうなったのかもな。バチが当たったのか。

 空と付き合ってた頃の楽しかった記憶が少しずつ蘇って来た。
 くそ、やめろやめろやめろ。
 今思い出すんじゃねぇ。

 そうだ、アホ面を思い出すんだ。
 たくさんいるじゃねぇか。
 そしたら涙なんか止まって笑えるだろ。

 はは、おかしいな……
 何で空の顔ばかり出てくんだろ……


「うう……空……ごめん……」


 俺はもう何も考えるのも面倒になってただただ泣いた。
 
 ここでトイレのドアが開いて、誰かが入って来たと思い慌てて個室に逃げ込む。個室のドアを閉めてる間もなく、俺は壁に張り付いて息を殺した。
 俺がいるのバレたか?
 同じ学校の奴らだと面倒だな。

 俺は声を出さないように自分の口を押さえて涙を拭いた。

 そして入って来た足音が近付いて来て、まさかの俺がいる個室の前で止まる。

 そしてそっとそいつを見ると、俺の止まった筈の涙が再び溢れ出した。


「貴哉?」

「そ、らっ!」


 今一番会いたかった男がそこにいた。


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