211 / 219
4章 文化祭
うわ、アイスクリームの事言ってんのか?
しおりを挟むお好み焼き屋からみんながぞろぞろと出て行き、二次会へ向かう奴、帰る奴と分かれた。
俺は二次会に行くつもりで、伊織と二人で歩いていた。
カラオケとか久しぶりだな~♪しかもこの人数とかすげぇ盛り上がりそうじゃん。
俺はワクワクしていると、後ろにいた紘夢に声を掛けられた。
「貴ちゃん、あのさー?」
「ん?どうした?」
立ち止まって振り向くと、紘夢の隣には空がいた。俺と空はさっき言い合ったままで、一言も交わしていなかった。
「カラオケ屋さんに着くまでに空くんと話してくれないかな?ほら、喧嘩したままでしょ?二次会も楽しく過ごしたいし、ね、いーくんも貴ちゃん借りてもいいでしょ?」
紘夢はいつもの笑顔でそう言った。
俺の隣にいる伊織にも確認してるけど、別に空が怒ってねぇなら俺はもう気にしてないってか軽く忘れてたからいいんだけど……
伊織は俺を見てた。
「てか早川と喧嘩してたのか?」
「喧嘩っつーか、ちょっとした言い合いした。なぁ、話して来ていいか?」
「それ二人で話す必要あるのか?別に今ここでお互い謝って仲直りすれば済む事だろ?」
あ、やっぱりダメなのね。
ワンチャン、いいよって言うかと思ったけど、今の伊織はダメって言うよな。
俺は空を見て、ここで声を掛ける事にした。
「俺もそう思う。俺はもう気にしてねぇけど、空は?」
「貴哉……」
「貴ちゃん、ちゃんと二人で話してもらえないかな?空くんは本当に打ち上げに貴ちゃんが来るの楽しみにしてたんだよ~」
「だから、何でそれぐらいで二人になるんだって言ってんの。そもそもどうして一条を通して話すんだよ?本気で仲直りしてぇなら本人が直接言いに来いよ」
「伊織、ちょっと言い過ぎだって」
「いーくんご機嫌ナナメ~?」
「一条さん、もういいです。桐原さんの言う通りです。行きましょう」
「あ、空くん待ってよ~!もうっ!いーくんの意地悪ー!貴ちゃんも意地悪ー!」
空はキッと伊織を睨んで先に早歩きで行っちまった。それを俺達にベーッと舌を出して追い掛けて行く紘夢。
あちゃー、空の奴気にしてんなぁ。
てか伊織も容赦ねぇな。もう少し言い方あっただろうに。
「伊織」
「何?」
名前を呼ぶと、もういつものニコニコ伊織に戻ってた。
はぁ、面倒くせぇなぁ。
「もういいや。空の事は紘夢に任せるわ。俺達も行こうぜ~」
「貴哉、俺がいなかったら早川と二人で話してたか?」
「あ?多分話してたんじゃん?」
「このまま仲直りしなきゃいいのにな♪」
「お前なぁ……性格悪くなってんぞ」
「もう良い先輩は辞めたんだよ。そんな事してたら貴哉を取られちまうからな」
「そっか。お前もうパシリじゃなくなるんだっけ」
「おう♪文化祭終わったからな~。早川に気を使うのも辞めだ。いいよな?貴哉」
「好きにしろよ」
「じゃあ早速!貴哉、他の奴にあんまベタベタすんな」
「あ?してねぇよ」
「さっき詩音さんに食べさせてもらおうとしてただろ」
うわ、アイスクリームの事言ってんのか?
確かに伊織の前だったから俺もどうかとは思ったけど、詩音はそんな気さらさらなくて好意でやってくれてんのに断れってんのかよ?
てか茜にはお好み焼きをフーフーまでして食わせてもらったけどな!
「もー分かった分かった。ああ言うのはちゃんと断るよ。これでいいか?」
伊織はまだ不満そうな顔してやがった。
一体どこまでワガママ言うつもりだ?
「まだあるのか?」
「いや、ないよ」
伊織はニコッと笑って俺の手を握って来た。
絶対あるだろ。
でも、面倒くさかったから無理に聞こうとはしなかった。
俺の出来る範囲でならワガママも聞いてやる。
だけど、それを超えるような事言われたら俺も聞いてやれねぇよな。
例えば空の事だ。
空とは話すなとか関わるなとか言われたら出来る気がしねぇ。てかそんなのする気もねぇ。
今は空とは喧嘩したままだけど、その内普通になるだろうし、そしたら今まで通り接するつもりだ。
伊織の不満そうな顔は空の事かもな……
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる