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4章 文化祭
※ マヨネーズも付けて下さい
しおりを挟む※空side
無事に文化祭が終わって、今はボラ部の打ち上げ中。なんとあの天下の演劇部との合同打ち上げになり、あまり広くないお好み焼き屋さんに何十人もの男子高校生がぶっ詰まってる状態になっていた。もちろん貸し切り。
俺は一度帰って着替えてから来たけど、数人は制服のままの生徒達もいた。
既に始まっているから店内はとても賑やかだった。俺達ボラ部は座敷席で、入り口入ってすぐの所だった。
「空くんー、お好み焼きまだぁ?」
「まだですよー」
隣に座る一条さんに数秒毎に急かされる。
このお坊ちゃんはお好み焼き屋に来るのは二回目だとかで、珍しい物を見るように瞳をキラキラと輝かせながら俺をこき使って全ての作業をやらされていた。
雉岡さんこっち来てくれないかなぁ?そうすれば俺も自由になれるのになぁ。
「あ、今俺の世話を誰かに押し付けようとしてるでしょ?」
「そ、そんな事考えてませんよ!俺は一条さんに美味しいお好み焼きを焼きたいです!」
この人は本当に心を読んで来るな~!
今では大分慣れたけど、初めは少しやりずらいから一条さんの事は苦手だった。
そもそも一条さんは学校一の問題児として有名だった。まだ話をする前から一年の俺でさえ知ってるぐらいに。
だから貴哉が目を付けられた時は勘弁してくれと思ってたけど、今となっては心強い味方だ。いや、味方なんだよな?
お好み焼きをクルッとひっくり返すと、一条さんは「おお~!」と目を輝かせて喜んでいた。
「すごーい!空くんやるじゃん♪ねぇ次俺もやってみたーい♪」
「いいですよ。でも一条さんに出来るかな~?結構難しいんですよ」
「空くんも出来るんだから出来るでしょ♪」
「…………」
「あ、気にしちゃったー?可愛いとこあるね~♪」
一条さんはたまにこうやって俺をからかってくる。悪気はないからいいけど。
それにしても貴哉が遅刻とは。
どうせ桐原さんといて遅れてるんだろうけど、そう考えると腹が立つ。
こういう学校関係の事はちゃんと時間守らせろよなぁ。って、俺が言えないけど……
せっかく打ち上げが合同になったから、初めから貴哉といられると思ってたのに。まさか年上の天才ワガママお坊ちゃんの世話係をやる羽目になるなんて。
ここで店の出入口から茜さんが出て行くのが見えた。きっと遅れてる貴哉を気にしてるんだ。
すると一条さんはまたもや俺の心を読むような事を言い出した。
「茜ちゃん?健気だよね~。ああやって外見に行くの五回目だよ。まだ始まって30分も経ってないのにさ~」
「数えてたんですか!?」
「たまたま見えるだけだよ。それよりも早く焼いてよ」
「もう焼けましたよ。はい、一条さんがソース塗るんでしょ?」
「わーい♪塗り塗りする~♪」
ソースとハケが入った入れ物を渡すと、一度俺がやってたのを見ていた一条さんがワクワクしながらソースを塗り始めた。
こうして見てると天才児には全く見えないよ。
本当に俺達と同じただの高校生。いや、それよりも子供っぽく感じるな。
「ソースを塗ったら青のりと鰹節まぶして~、ヘラでカットするんだよね!?」
「マヨネーズも付けて下さい。火傷しないで下さいよ」
「任せんしゃい♪」
着ていたライトブルーのワイシャツの裾を捲り上げて張り切る一条さん。とても心配だった。
「お好み焼きやるの二回目って言ってましたけど、一回目は誰とやったんですか?」
「吉乃だよ~。学校帰りに連れてってもらったの」
話しながら焼けたお好み焼きを食べやすい大きさにカットしていくお坊ちゃん。気が利くじゃん。
「吉乃には危ないからヘラを持たせてもらえなかったんだ。だからずっとひっくり返すのやってみたかったんだよね~♪」
「なるほど。雉岡さんは過保護なんですね」
「とても大事にしてくれるよ。俺が一条家っての気にしてるみたいだね。気にしなくていいのに」
少し寂しそうに言う一条さん。
別に俺も気にしてない訳ではない。けど、一条さんて話すと意外と普通って言うか、金を惜しみなく使ったり、ずば抜けた頭脳を発揮させる瞬間はあるけど、それ以外は普通の明るくて少しイタズラ好きな男子高校生だなって思う。
一条さんの謝罪生放送を聞いていたから、あれが本心ならちょっと可哀想だなと思うけど。
「一条さんと雉岡さんの付き合うきっかけって何だったんですか?気付いたら付き合ってましたよね」
「吉乃と俺は同じクラスなんだけど、球技大会の競技決めの時に俺はテニスを選んだんだけど、誰も俺と組んでくれなくてさ。分かってたけど、正直辛かったんだ。でも、静まり返った中ただ一人吉乃が手を挙げてくれたんだ」
一条さんは綺麗に分割されたお好み焼きを皿に取り分けながら微笑みながら淡々と話してくれた。
球技大会前って事は謝罪生放送の直後か。
あの後じゃ一条さんと関わろうって人はなかなかいないだろうな。
そっか。雉岡さんて優しいんだな。
「俺ね、とても嬉しかったよ。そんなに話した事もなかったのに、ひとりぼっちだった俺に手を差し伸べてくれたんだ。吉乃は俺のヒーローなの♡あと貴ちゃんもね♡」
「いい話ですね。二人の事応援してます」
「ありがとう♡さぁお好み焼き食べようか~」
ここで一条さんはニッコリ満足そうに笑っていただきますをした。
ヒーローか。俺にとってのヒーローはやっぱり貴哉かなぁ?
貴哉と出会ってから俺の生き方が大分変わったもんな~。まず男を好きになって付き合うとか絶対無いと思ってたしな。
あー、早く貴哉に会いたいなぁ。
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