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3章 文化祭まで一週間
※ ヤンキー娘より清純派女子っしょ♪
しおりを挟む※茜side
体育館の裏側から大きなたくさんの拍手の音を聞いて、俺はやっぱり薗田さんは凄いと思った。
薗田さんに憧れて演劇部に入部したけど、間違って無かったと改めて嬉しく思った。
演劇に関しては全くの未経験だったけど、部活紹介で薗田さんを見て一目惚れした。それは恋とかじゃなくて憧れの意味でだ。
薗田さんの演説はとても個性的で魅力的な物だった。
もっとあの人を知りたい。もっとあの人の側に行きたい。
そうすれば俺もあの人みたいに周りからも好かれるかも知れない。
俺とは違って華やかで話術も凄くて、大人の魅力もある。薗田さんのような人になれば、俺も高校では上手くやれるかも。そう思って迷わずに演劇部を選んだんだ。
だけど、そんな理想は脆く崩れ去った。
やはり自分の頑固な性格で、周りとは上手くやれずに俺はすぐに孤立していた。
それでも憧れの薗田さんには期待もされて、良くしてくれたから、部活は真面目に取り組んだ。
全ては薗田さんの為に。
もう自分の為とかじゃなかった。
もう周りも自分も変われる気がしなかった。
きっと俺はそう言う宿命なんだと受け入れようとした時もあった。
だけど、相手に自分の想いが伝わらないのは辛いんだ。
怒りたいんじゃないのに怒ってると言われたり、生意気を言いたい訳じゃないのに生意気だと言われたり。
何でお前がここにいるんだ?
お前なんかいなくなれ。
二之宮がいると空気が悪くなる。
俺だって頑張ったんだ。
周りと上手くやろうって、中学では出来なかったから高校では変わろうって。
でも出来なくて、家で泣く時もあった。
薗田さんは俺にとって一際大きく綺麗に咲く花だ。俺はその周りに生える雑草。
だから一生薗田さんみたいにはなれる訳がないんだ。そんなのは初めから分かっていた。でも雑草なりに綺麗に咲く花の真似をしたかったんだ。
周りにどんなに笑われようと、少しでも綺麗になりたくて……
そこへ一匹の蜂がやって来た。
その蜂は薗田さんの花の蜜を吸うのかと俺は心配だった。
だけど、その蜂は綺麗に咲く花なんかには目もくれずに雑草である俺を突き始めた。
俺も自分がいる花畑を荒らされまいと突き返す。
そうすると、その蜂はいつの間にか俺の葉っぱに居座るようになり、その内たわいもない会話もするようになった。
気付けばその蜂とは友達になっていて、同じ花畑の誰よりも俺の事を想ってくれる頼もしい存在になっていた。
その蜂は勿論、秋山だ。
でも、蜂が俺の葉っぱに止まってくれたのは綺麗に咲く薗田さんという絶対的な花があったからだ。
俺が秋山に出会えたのも薗田さんのお陰だ。
「うわっ!すげぇ!アレ秋山なの!?ちょ、茜ちゃん!見たぁ!?金髪ヤンキー娘!」
裏にいた犬飼が騒ぎを見に行ってすぐに戻って来て騒いでいた。
見たさ。とても綺麗で可愛いかったよ。
「デシーノのイメージガラッと変わったんだけど!てか秋山の奴、普段の演技よりハマってね?」
「はは、薗田さんも秋山も本当に予想外な事をしてくれるな」
俺は何だかおかしくなって自然と笑っていた。
そして俺も小さく拍手をした。
犬飼はそんな俺を見て、コソコソと近付いて来た。
「俺的には茜ちゃんの黒髪ロングの方が可愛いと思ってるからな♡ヤンキー娘より清純派女子っしょ♪」
「犬飼……ありがとう」
犬飼の気遣いに笑顔でお礼を言うと、照れたように笑った。
二人のお陰でこうして犬飼達とも笑い合えるようになったんだ。
本当は二人がする事に反対なんかしたくない。
「茜ちゃん可愛いすぎだって♡なぁ文化祭終わったらデートしねぇ?今度は二人で!」
「デート……湊にバレたら大変なのは犬飼だぞ?」
「平気!茜ちゃんといられるならあんなの怖くねぇ♪」
前に球技大会の後に犬飼に誘われて遊びに行った事があるんだけど、その時は俺が周りに声を掛け過ぎて結局大人数になったんだ。
誘ってくれた犬飼には申し訳なかったけど、俺は楽しく過ごせた事がある。
「いいよ。文化祭終われば落ち着くから、ゆっくり遊びに行こう♪」
「嬉しい~♪でも桃山に言うと絶対来るよな~」
「それなら日曜日はどうだ?日曜日なら湊はバンドの助っ人があるから午後からなら付いて来る事はないと思うぞ」
「マジィ!?んじゃ決まり♪約束な!」
「あの二人もだけど、犬飼も変わってるな」
「へ?どこがぁ?」
嬉しそうに笑う犬飼にそう言うと、首を捻って不思議がっていた。
初めこそ犬飼には嫌がらせなどされていたけど、今ではこんなにも仲良くしてくれるんだもんな。もう過去の事だし、自分にも非があったから気にしてないけど、今でもおかしく思う事はある。
それは今付き合っている湊も一緒だ。
湊に関してはあんな感じだし、俺何かには見向きもしてなかっただろう。お互い変な奴がいるなぐらいで。
それがどうした?今では誰よりも近い存在になっているじゃないか。
どんな形でも、誰かに好きと言われる喜び。
俺が頑張って手に入れようとしていたこの喜びを運んで来てくれたのは間違いなく秋山だ。
そして秋山を引き寄せた薗田さんの力……
やっぱりあの人は俺の憧れの人だ。
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