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3章 文化祭まで一週間
※ 落ち着けって。お前の得意の笑顔忘れてるぞ
しおりを挟む※伊織side
俺と卯月が玄関まで行くと、演劇部の七海と犬飼と猿野の三人がいて、こっちに気付いて七海が駆け寄って来た。
「卯月~!二之宮めっちゃ怒ってたよ~!どうしちゃったのさ~!」
「えっと、その……」
七海がいつものように騒ぎ出すから卯月は困ってるみたいだった。
助けてやるか。
「七海、あんま卯月を責めんな。卯月は二之宮と仲直りする気があるんだから」
「てか秋山が走って行ったけど、追わなくて大丈夫なのか?」
犬飼に聞かれて俺は笑った。
正直心配だ。貴哉は一人で先に帰った二之宮を追ってるんだけど、無事追い付いても貴哉の事だから更に二之宮を怒らせかねない。
でも卯月を任されたし、俺は貴哉を信じる事にしたんだ。
「大丈夫だろ。あいつらだし。今の演劇部の名コンビじゃん」
「いーくん余裕だな」
猿野に言われて俺は素直に答える事にした。
「何かあっても貴哉のしたいようにやらせるよ。あいつは二之宮と仲良いからな。さて俺達も行きますか」
「う、うん」
俺は卯月の背中をポンッと叩いて各々の下駄箱で靴を履き替える。
てか貴哉鞄置いてってるし。今貴哉のやたら軽い鞄は俺の腕にある。まさか靴履き替えないで行ったとかねぇよな?
貴哉は本当に思い付きで行動する危なっかしい奴だよ。自分の大切な人が困ってたらどんな状況でも必ず飛んで行くもんな。
俺も行動力はある方だけど、貴哉の場合は何か違うんだよな。自分の為に動いてる感じ。
そうしたいから動く。
きっと俺はそんな所にも惹かれているんだ。
三人も付いて来て、七海が俺の隣に来た。
「ねぇいーくん、二之宮かなり怒ってたけど、このまま部活辞めたりしないよね?」
「まさか。そんな中途半端な事しないだろ」
「……俺のせいだ。みんな、本当にごめん」
二之宮の事だから責任持ってやり遂げるだろうけど、七海の言葉に反応した卯月は気まずそうに俯いた。
「卯月は何で茜ちゃんと喧嘩したんだ?茜ちゃんが言うには卯月が先にシカトしたんだって言ってたけど」
「桐原くんっやっぱり二之宮は許してくれないんじゃないか!?」
「落ち着けって。お前の得意の笑顔忘れてるぞ」
「ふーん。卯月は二之宮と仲直りする気があるんだね。逃げたからもう嫌いになったのかと思った」
「嫌いなもんか……二之宮は本当に凄い奴だなと思ってるよ。あいつがチームのリーダーを外された時だって、文句も言わずに残った。態度も変えずに真面目に部活に来ていた。俺が二之宮の立場だったら悔しくて辞めてたと思う」
「……そうだね。二之宮は強い男だよね」
「茜ちゃんは強がりなんだよな~。もっと素直になれば良かったのに」
卯月の言葉にしんみりする二人。
二之宮が辞めるってのは特に二人にはキツいだろうな。
二之宮、良かったな。こんなに良い友達が出来て。
「お前ら文化祭終わったら二之宮をちゃんと送り出してやれよ。そうだな、あいつ今まで辛い思いして来たから、笑顔になれるような送り方がいいんじゃねぇの?」
「桐原くん……」
「二之宮が笑顔になれるようなか~」
「茜ちゃんの笑顔ってめちゃくちゃ可愛いもんな♡」
「誠也がニヤけてるー」
「犬飼キモーい」
「うるせぇぞトモ!それと七海ちゃんひでぇな!てか七海ちゃんは茜ちゃんのどこを好きになったのよ!?あんなにボロクソ言ってた癖にー」
「黙れ駄犬!お前なんかに教えるかよ!」
「怖っ!なぁ卯月!こんなのが次の副部長とかになっていいのかよ!?」
「えっ副部長になるには気が強い方がいいのかもなー?」
「あはは、お前ら面白ぇな!」
本当、こいつら見てると二之宮いなくなっても大丈夫だろって思っちまうよ。
卯月も二之宮と仲直り出来るよきっと。
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