【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

文字の大きさ
上 下
141 / 219
3章 文化祭まで一週間

※ 落ち着けって。お前の得意の笑顔忘れてるぞ

しおりを挟む

 ※伊織side

 俺と卯月が玄関まで行くと、演劇部の七海と犬飼と猿野の三人がいて、こっちに気付いて七海が駆け寄って来た。


「卯月~!二之宮めっちゃ怒ってたよ~!どうしちゃったのさ~!」

「えっと、その……」


 七海がいつものように騒ぎ出すから卯月は困ってるみたいだった。
 助けてやるか。


「七海、あんま卯月を責めんな。卯月は二之宮と仲直りする気があるんだから」

「てか秋山が走って行ったけど、追わなくて大丈夫なのか?」


 犬飼に聞かれて俺は笑った。
 正直心配だ。貴哉は一人で先に帰った二之宮を追ってるんだけど、無事追い付いても貴哉の事だから更に二之宮を怒らせかねない。
 でも卯月を任されたし、俺は貴哉を信じる事にしたんだ。


「大丈夫だろ。あいつらだし。今の演劇部の名コンビじゃん」

「いーくん余裕だな」


 猿野に言われて俺は素直に答える事にした。


「何かあっても貴哉のしたいようにやらせるよ。あいつは二之宮と仲良いからな。さて俺達も行きますか」

「う、うん」


 俺は卯月の背中をポンッと叩いて各々の下駄箱で靴を履き替える。
 てか貴哉鞄置いてってるし。今貴哉のやたら軽い鞄は俺の腕にある。まさか靴履き替えないで行ったとかねぇよな?

 貴哉は本当に思い付きで行動する危なっかしい奴だよ。自分の大切な人が困ってたらどんな状況でも必ず飛んで行くもんな。
 俺も行動力はある方だけど、貴哉の場合は何か違うんだよな。自分の為に動いてる感じ。
 そうしたいから動く。
 きっと俺はそんな所にも惹かれているんだ。

 三人も付いて来て、七海が俺の隣に来た。


「ねぇいーくん、二之宮かなり怒ってたけど、このまま部活辞めたりしないよね?」

「まさか。そんな中途半端な事しないだろ」

「……俺のせいだ。みんな、本当にごめん」


 二之宮の事だから責任持ってやり遂げるだろうけど、七海の言葉に反応した卯月は気まずそうに俯いた。


「卯月は何で茜ちゃんと喧嘩したんだ?茜ちゃんが言うには卯月が先にシカトしたんだって言ってたけど」

「桐原くんっやっぱり二之宮は許してくれないんじゃないか!?」

「落ち着けって。お前の得意の笑顔忘れてるぞ」

「ふーん。卯月は二之宮と仲直りする気があるんだね。逃げたからもう嫌いになったのかと思った」

「嫌いなもんか……二之宮は本当に凄い奴だなと思ってるよ。あいつがチームのリーダーを外された時だって、文句も言わずに残った。態度も変えずに真面目に部活に来ていた。俺が二之宮の立場だったら悔しくて辞めてたと思う」

「……そうだね。二之宮は強い男だよね」

「茜ちゃんは強がりなんだよな~。もっと素直になれば良かったのに」


 卯月の言葉にしんみりする二人。
 二之宮が辞めるってのは特に二人にはキツいだろうな。
 二之宮、良かったな。こんなに良い友達が出来て。


「お前ら文化祭終わったら二之宮をちゃんと送り出してやれよ。そうだな、あいつ今まで辛い思いして来たから、笑顔になれるような送り方がいいんじゃねぇの?」

「桐原くん……」

「二之宮が笑顔になれるようなか~」

「茜ちゃんの笑顔ってめちゃくちゃ可愛いもんな♡」

「誠也がニヤけてるー」

「犬飼キモーい」

「うるせぇぞトモ!それと七海ちゃんひでぇな!てか七海ちゃんは茜ちゃんのどこを好きになったのよ!?あんなにボロクソ言ってた癖にー」

「黙れ駄犬!お前なんかに教えるかよ!」

「怖っ!なぁ卯月!こんなのが次の副部長とかになっていいのかよ!?」

「えっ副部長になるには気が強い方がいいのかもなー?」

「あはは、お前ら面白ぇな!」


 本当、こいつら見てると二之宮いなくなっても大丈夫だろって思っちまうよ。 
 卯月も二之宮と仲直り出来るよきっと。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

処理中です...