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2章 文化祭までのいろいろ
俺に似てる奴なんだろー?すげぇ気になる~
しおりを挟む木曜日の朝、俺の隣を歩く恋人の伊織は見て分かるぐらい不機嫌そうだった。
朝から辞めてくれとか思ったけど、不機嫌な理由が俺だったからあまり強く言えなかった。
「伊織さー、空と電話ぐらいしても良くね?機嫌直せよー!」
「別にするなとは言ってねぇだろ。ただ俺が嫌だなって思ってるだけだから」
そう、昨日寝るまで空と電話をした事を話したんだ。それと、空が紹介をいらないと言った事もだ。
伊織の気持ちは分かる。だから隠すのも悪いと思ったから話してるのに、ずっとこんな感じだったら話さなかった方が良かったとか思っちまうじゃねぇかよ。
「伊織、ずっとそんな感じなら機嫌が直るまでお前とは距離置きたい」
「あ?ダメに決まってんだろ」
「何で伊織が決めるんだ?俺にも離れたいって言う権利はあるだろ!」
「……分かった分かった。機嫌直すから、そんな寂しい事言わないでくれよ」
俺が少し強く主張すると、伊織は一瞬ムッとした顔をしたけど、すぐにシュンとして俺の手を握って来た。
「それと、土曜日空と遊ぶから!この前プレゼント買えなかったから土曜日に買いに行くんだ」
「……うん。分かった。何時に帰って来る?」
「分からねぇ。空と遊ぶの久しぶりだからつもる話もあるしな」
「夜は俺と会ってくれるか?」
伊織は俺の目を見る事なく、下を見ながら言った。俺の手を握る力が強くなった気がした。
そんな伊織に少し罪悪感が湧いて来た。
うう、俺の恋人は伊織の方なのにあんな言い方無かったよな~。伊織は俺が空と会うの嫌がってるのに、俺がしたいからって脅すような事しちまった……
「伊織、悪かったよ。夜は伊織と過ごす。約束する」
「良かった。俺もキツく言い過ぎたな。早川に好きな物買ってもらって来い」
俺が謝ると、伊織は顔を上げてニコッと笑った。
そしてその後はいつものように優しくなった。
「うん♪あ、そうだ!紹介はいらないけど、昼休みは一緒に取りたいって~」
「いいぜ。紹介するつもりだった奴もそのまま連れてくわ。無理にはくっ付けさせようとはしねぇから安心してくれ」
「俺に似てる奴なんだろー?すげぇ気になる~」
実はどんな奴なのか見たかったんだ。
変な奴を連れて来たら伊織を殴ろうと思ってる。
俺がワクワクしてると、隣にいる伊織はクスクス笑っていた。
「なんだぁ?その笑い~?」
「別に~?貴哉は可愛いなぁって♡」
「可愛いってすぐ言うのな!」
いつも俺はかっこいいがいいって言ってんのによ。ん?そう言えば伊織の事可愛いって思った事あったか?かっこいいなとはいつも思ってるけど、年上ってのもあって可愛い瞬間とかあんま見ないよな。てか伊織がかっこつけたがるんだよな。
「なぁ!伊織、可愛いくなってみて!」
「いきなりだな!てか可愛くなれってどう言う事だよ?」
「伊織の事可愛い~♡って思ってみたいんだよ♪」
「いや、俺ってどっちかってーとかっこいいじゃん?可愛いくなるのは無理だって」
「桐原伊織に出来ない事はないんじゃないのか?」
苦笑いを浮かべる伊織に挑発するように言うと、困ったように頭を掻き始めた。あの伊織が困ってるー♪
よし、とどめを刺してやるか!
「あー、空の事は可愛いと思った事あるんだけどな~?伊織の可愛いところも見れたらもっと好きになるんじゃないかなぁとか思ったんだけどな~?出来ないんじゃしょうがないよな~?」
ワザと意地悪くやれやれという両手を横に出すポーズまで加えて言ってやると、無事伊織の中のやる気スイッチを押せたみたいで、目の色が変わるのが分かった。
「言ってくれるじゃん?俺が可愛いくなれば早川を越えられるんだな?男に二言はねぇな?」
「えっ!そこまでは言ってねぇだろ?」
「同じようなもんだ♪可愛い極めてやっから楽しみにしてな~♡」
一気に機嫌が良くなった伊織は、勝手に都合の良いように捉えて可愛いくなる宣言をした。
でも、空に対してはかっこいいも可愛いもどちらも思った事があるのは本当だ。そのどちらも俺の好きな空だし、だから伊織の可愛い部分も見れたらもっと好きになるんじゃ?
空を越えるかは分からねぇけどな……
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