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2章 文化祭までのいろいろ
なんか空の声聞きたくなったんだ
しおりを挟む夜、部屋のベッドに寝転がりながら天井を見て、ふと伊織に提案された事を思い出していた。
空に俺以外の気の合う奴を側に置く事。今の空を安定させるには良い考えだとは思う。だけど、ちゃんと空を理解してくれて側にいてくれる奴なんか見つかるのか不安だった。
それと、もし見つかったとしても俺がその時どう思うのか。そこも不安だった。
「空に俺以外に好きな人が出来たら、喜んでやれるのかなぁ」
普通の友達だったら応援してやるのが普通だよな?でも今の俺にそれが出来るのか?
だって、俺、まだ空の事好きだぞ?
それなのに、他の奴との応援なんて……するしかないのか?
「はぁ、空何してるだろ?」
空の事考えてたらちょっと心配になってきたので、メッセージを送ってみる事にした。
時間は21時過ぎ。予想だと部屋で何かしてるんだと思う。髪とかいじってそうだな。
『今何してる?』
普通に送ってみた。すると、すぐに既読が付いて俺は「おっ♪」と一人で言って嬉しくなった。仰向けだった体勢をくるりとうつ伏せにして、肘を立てて枕をクッション代わりにスマホを見ていた。
『貴哉との写メ見てたー♡俺も今貴哉に連絡しようと思ってたんだ♡』
空らしい文面で、ホッとした。ふふ、俺との写メを見てたとかどんなけ俺の事好きなんだよ。俺はそれが嬉しくて堪らなくなって、その後電話を掛けていた。
『わーい♪貴哉だ~♡』
「おう、今平気か?」
『暇過ぎてヤバかったよ~。いきなりどうしたの?』
「なんか空の声聞きたくなったんだ」
『え♡めちゃくちゃ嬉しい~♡』
まるで恋人同士のような会話だったけど、それが今の俺には心地良くて普通に話していた。本当は空を期待させるかもしれないから良くないんだけど、伊織にあんな事言われてからモヤモヤしてたんだ。
「あのさ、明日の昼休み一緒に取ろうぜ?伊織ともう一人いるけど」
『いいけど、もう一人って誰?俺が知ってる人?』
「俺も誰だか分からないんだよ。伊織が明日連れて来るらしい」
『ふーん。それ俺がいてもいいの?』
「いい。むしろいなきゃ意味がねぇからな」
『どういう事だぁ?』
言いたくないけど、話しておくか。いきなり紹介されても混乱するだろうしな。
「伊織が空に友達を紹介するって言ってるんだ。俺もどんな奴なのかは知らないけど、二年で俺と似てるらしい」
『桐原さんが俺に友達を?あの人、俺が邪魔だからってそんな面倒な事考えてんのか?いらないって言っておいて~』
「そ、そうだよな!いらないよな?よし分かった♪俺から言っておくな」
空はちょっと不機嫌そうにハッキリいらないって言った。ヤバい。俺嬉しいぞ!
『でもお昼は一緒したいなぁ♪それと、土曜日時間ある?この前プレゼント買えなかったから買いに行きたいんだけど、デートしない?』
「する!あ、俺も空に何かプレゼントしたい!」
『えー♡どしたの貴哉~?今日いつもより可愛いくない?早く会いたいなぁ♡』
「俺も会いたいよ空に。はぁ……」
電話の向こうではしゃぐ空の声を聞きながら、俺はついため息を漏らしてしまった。
『会っちゃう?俺行くよ♡』
「え、いや、それは……」
空からの誘いに、俺は戸惑った。空とこの時間に一人で会うのは伊織にダメだと言われたからだ。
そうだ、この話をしたから空に誰か紹介するとか言い出したんじゃねぇか。
『貴哉~?何かあった?』
「……実は、今日空と別れてから伊織に会ったんだ。そんで、これからは空から連絡あったら俺が会いに行くって言うのを言ったら、反対されたんだ」
『そりゃ反対するだろ。何で話しちゃったんだ?』
「今日の空を心配してたんだよ。何とか上手く言って仲直りしたって言ったけど、今の伊織ならいいよって言ってくれると思ったんだ……」
『だから桐原さんは俺に友達を紹介しようとしてるのか?貴哉の代わりになる人を』
「……そうだ」
『…………』
ここで空が黙っちまった。
さっきまで機嫌良かったのに、俺のせいで変な空気になっちまったな。
「なんかごめん」
『ううん。貴哉は桐原さんの言う事を聞くの?』
「今のところはな」
『じゃあ俺が今知らないおっさんと会うって言っても来てくれないって事?』
「空っ!」
『冗談だよ。今はそんな気はさらさら無いよ。でもそう言う事だろ?』
「俺は行きたいと思ってる。でも伊織を裏切る事も出来ないんだ」
『結局貴哉は桐原さんの方が大事なんだね』
「違うっ!同じぐらい大事だ!」
『あはは、貴哉必死~♪大丈夫だよ。恋人を選ぶのは当たり前の事だし?変な事言って悪かったよ~』
「空、俺は本当にお前の事が好きなんだ。だから、空が伊織の紹介を断ったの嬉しかった。空が他の奴と仲良くなるの嫌だったんだ」
『嬉しいな~♪俺も貴哉の事が好きだよ。他の誰とも仲良くするつもりはないから安心しろよ。あ、土曜日のデートだけど、俺は貴哉の事恋人として接するつもりだけど、いい?』
「……うん。俺もそのつもりで行くわ」
『やったー♡貴哉大好きー♡』
「俺もお前が大好きだ♡」
その後も空とずっと電話で話していた。お互い眠くなるまで、他愛無い話や学校の事、土曜日のデートの事とかいっぱい話した。
その間に来ていた伊織からのメッセージは朝返す事にした。
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