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2章 文化祭までのいろいろ

5分前行動って玉ちゃんに言われてるんで!

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 次の日も続々とテスト達が返って来た。案の定、俺の奇跡はあの数学だけで、他は見事に赤ばっかり。その内また玉山に呼び出されるな~って覚悟している時だった。
 俺はトイレに行こうと一人で廊下を歩いていると、見慣れない生徒が前から歩いてくるのが見えた。短めの茶髪で、背は俺と同じくらい。段々近付いて来て顔が見えた。二重の大きな目に、ニッと上がった口元。そして目が合うと愛想よくニコッと笑顔を振り撒かれた。他の奴とは違う少し目を引く物があった。こんな奴一年にいたっけ?
 俺は何も無かったかのように通り過ぎようとした。


「秋山貴哉くん、だね?」

「……は?」


 名前を呼ばれて振り向くと、さっき通り過ぎた茶髪の男がこっちを見てニッコリ笑ってた。
 誰だこいつ?


「ちょうど君に会いに行こうとしていた所なんだ。良かったら少し時間もらえないかな?」

「いや、お前誰だよ?」

「……これは悪かった。俺は前田侑士。二年C組だよ」

「前田、侑士……どっかで聞いたような?」

「えっと、一応生徒会選挙に立候補していて、現生徒会長からの推薦ももらってるんだけど……」

「あー!お前か!次の生徒会長って!」


 生徒会長ってワードで思い出したぜ。前田侑士。二年生で、伊織の友達。まぁそんぐらいしか知らないけど。


「いやー、名前は聞いてたけど、顔とか全く知らなかったから分からなかったぜ~」

「そ、そうか。今でも生徒会書記をやらせてもらっていて、全校集会とかで神凪さんの隣に並んだ事あるけど……」

「そんなの俺いつも出てねぇから分からねぇよ。てか俺トイレ行きてぇんだわ。用があるならまた今度な。んじゃ」

「…………」


 前田侑士はポカンとした顔して突っ立ったままだった。

 俺はトイレで用を足して教室へ戻ろうと廊下に出る。と、そこにはさっきの前田侑士がいて素で驚いちまった。


「うおっ!?あんたまだいたのかよ!」

「言っただろ?君に会いに来たって。伊織にも頼んだんだけど、断られちゃったからこうして直接会いに来たんだよ」

「えー、普通断ったら来なくね?てか俺授業サボれねぇから忙しいんだけど」

「授業に支障の出ないようにするさ♪キチンと出席するのは良い事だよ♪」


 急に笑顔をキラキラさせて、褒められた。
 何なのこいつ?俺は面倒くさそうだったからそのまま教室に戻ろうと歩き出すと、当たり前かのように付いて来た。


「待ってくれ。後5分ある」

「5分前行動って玉ちゃんに言われてるんで!」


 俺がいつも玉山が言っていたようなセリフを言うと、前田侑士はニッコリ笑って頷いた。


「ああそうだな♪秋山くんとはまた話がしたい。ゆっくり話せる昼休みにでもどうだ?」

「あーもう分かったから!昼休みに時間作ってやらぁ!」

「良かった♪じゃあ昼休みに生徒会室で待っている。約束だぞ♪」


 あまりにもしつこいから、もう折れてしまえと少し大きな声で言うと、嬉しそうに笑って手を振りながら一年の廊下から消えた。

 マジで何だよあいつ!
 まさか神凪葵が寄越したとかじゃねぇよな?
 伊織は前田侑士なら大丈夫だとか言ってたけど、やたらしつけぇし、面倒くさそうじゃねぇか!
 昼休み、伊織に言って何とか逃げられねぇかな?神凪みてぇに進級の為に変なミッション出されたら嫌だし、伊織に相談してみよっと。
 前に直登も前田侑士は面倒みたいな事言ってたしな。うん。そうしよう!


 俺が心に決めて教室に戻ろうと歩き出すと、俺のクラスからひょこっと顔を出してこちらを見ているのが三匹……
 上から空、直登、数馬だった。


「お前ら何してんだよ……」


 俺が呆れて声を掛けると、空が心配そうに駆け寄って来た。


「貴哉!今の二年の前田さんだよな?」

「みたいだけど?」

「お前、今度は何したんだよぉ!?」

「何もしてねぇよ!勝手にあいつが来たんだ!」

「あーあ、また面倒な人に目を付けられたねぇ」

「貴哉、大丈夫?心配……」


 直登と数馬は教室から顔を出した状態のまま言った。クソ、何でいつもこうなるんだっ!俺は普通にしてるだけなのにっ!
 でも、前田侑士は前の生徒会長である神凪葵とは違って普通な感じだったよな?笑顔だったし、明るくて気さくな感じ。あいつのどこがヤバいんだろ?
 
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