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1章 二学期中間テスト

※ はぁ……しんど……

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 ※空side

 桐原さんからの電話を切ってベッドに寝転がって目を瞑る。


「はぁ……しんど……」


 ここ数日まともに眠れていない。倒れない程度には寝てるけど、うまく眠れないでいた。
 おかげでテストはボロボロ。普段なら普通に解ける問題も突然襲って来る睡魔のせいで上手く考えられずにそのまま時間切れになっていった。
 ヤバいな……学費、兄貴に出してもらってるのに……

 本当は学校に行きたくない。
 兄貴に世話になってるから、それだけの理由で今は通っている。正直しんどい。つっても学校行かなくてもやる事もなければ何もない。

 俺は今自分でも何がしたいのか良く分かっていないんだと思う。
 球技大会まではやりたい事とかそう言うのはハッキリしていたけど、今はぼんやりとただ生きてるだけ。

 俺のスマホのメモリも少しずつ増えて来た。
 毎日のように誰かしらと連絡を取り合ってるけど、すぐに途切れる事が多かった。前の俺ってみんなとどんな風にやり取りしてたんだっけ?
 そんな簡単な事も思い出せずにいた。

 ピコンとスマホが鳴ってメッセージを開くと、最近知り合った男からだった。内容は「金曜日楽しみだね。また可愛いユウキくんを見れるなんて仕事も捗っちゃう」読んだ瞬間俺は吐き気を催して慌ててトイレへ駆け込んだ。
 相手は月曜日にセックスした二十代のサラリーマンだ。俺は初めて客とセックスした。それも、俺が挿れられる方。理由は金を倍払うって言われたから。軽い気持ちで受けたけど、実際は簡単な物じゃなかった。まず、好きでもない男とホテルに二人きりってのがキツかった。そういう目的だって分かってるから尚更だ。憂鬱なまま初めてだったから相手の言う事を聞いて従ってたけど、何度もその男と食った夕飯を戻しそうになったのを覚えている。そしてなかなか反応しない俺に、無理矢理な形で挿れられた。痛ぇわ、血は出るわ、涙出るわでもう散々だった。
 でも、終わった後に貰った金を受け取って俺は一瞬その何度も襲って来た吐き気を忘れた。いつも会ってお茶してるだけの倍どころじゃなかったんだ。初めてってのもあったのかもしれない。だけど、その男はかなり気に入ってくれたらしく一万円札を数枚出してくれたんだ。
 金に心を動かされるなんて、母親の影響か……また悔しかったけど、俺は次も会う約束をした。

 それから眠れない日々が続いた。体の痛みは消えたけど、心には憂鬱が残ったままで、今に至る。

 最悪なのが、この事を元彼である貴哉も知ってるって事。いや、貴哉はクラスメイトにそう言う出会いの場所に俺がいるって聞いてただけで、実際関係を持った事は自分から話したんだ。
 いつも放課後早くに迎えに来る桐原さんが来なくて貴哉が一人で教室にいたから。
 
 俺はいつも通り素通りしようと思っていた。だけど、少しぐらいならと声を掛けてしまったのがダメだった。一度声を掛けたら溢れて来る貴哉への想い。貴哉と話せるだけで嬉しかったんだ。
 前よりも酷い状況になってしまった俺にとって、貴哉と話せる事が唯一楽しいと思える瞬間だったから。
 貴哉は俺が声を掛けた時驚いてたな。だろうな、もう関わるなって言ったし、最後も酷い離れ方しちゃったしな。それでも話してくれて嬉しかった。やっぱり貴哉は貴哉だ。
 俺が自分から客と寝た話をした時貴哉は怒ってたな。俺の事を桐原さんと同じぐらい大事だって言ってくれた。それが嬉しくて、悲しくて、凄く辛かった。
 やっぱり俺は貴哉の事が大好きだ。忘れられる訳がない。貴哉と別れてから女ばかり数人と体の関係を持ったけど勃つには勃つけど、全然興奮しなかった。業務的にこなして最後まで出来たけど、達成感は無かった。男相手はもっと酷い事が分かった。その内女にも反応しなくなるのか……

 目を開けて時計を見ると22時近かった。貴哉と別れてから時間が経つのがゆっくりになった気がする。特に何をするでもなく、遊び歩いたり、おっさんに金貰ったり、部屋でゴロゴロしたりしてるだけの日々。つまらない。

 ふとスマホが光って、誰かから着信があった。また桐原さんかと思いしばらく鳴らしてから画面を見ると、貴哉からだった。画面には貴哉と前に夏休み中に二人で撮った写メが映し出されていて、俺は泣きそうになった。
 二人共楽しそうに笑っていて、俺の隣に映る貴哉の顔が涙で滲んだ。

 貴哉に会いたい。会って抱き締めて、ずっと側にいたい。月曜日に客と寝てからますますその想いは強くなった気がする。こうして一人でいると余計に。

 電話は切れる事なくずっと鳴っていた。
 俺はこぼれた涙を拭いて、貴哉からの電話を取った。
 
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