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1章 二学期中間テスト
※ 掛ける番号間違えてますよ?
しおりを挟む※伊織side
中間テスト初日の夜。俺は貴哉に勉強を教えてからいつもより早めに家に帰った。早めって言っても家に着いたのは19時とかだ。まぁ帰っても誰もいねぇし、何時に帰ろうがいいんだけど、どうやら貴哉と早川の関係が悪くなってるらしい。
俺からしたらその方がいいんだけど、どうにも早川と険悪な感じだと、貴哉の機嫌が悪い。ただでさえ柄が悪いのに、更にドス黒く荒々しくなるんだ。
早川が帰った後も貴哉の気性は荒く、なだめるのが大変だった。何とか勉強させて落ち着かせたけど、あのままじゃまた勝手に何かやりかねない。
そうなる前に手を打ちてぇんだけど、やっぱり早川を説得するしかねぇよなぁ?
んでも俺から何て言う?下手な事言えねぇよな。
だって恋人だった貴哉を盗ったのは俺だもんな。
俺が早川の立場だったら顔を見ただけで殴りかかってるだろうよ。うん。今日の早川は良く俺に手を出さずにあの場にいられたよ。
リビングにあるダイニングテーブルの上にラップが掛けられた夕飯が用意されていた。平日はこうして家政婦かなんかが俺の為に用意してってくれるんだ。
まだ未成年で学生だから、親である自分達が出来ないから代わりの俺への配慮だろう。
着替えて風呂入ってから食おうと思って夕飯をそのままにして置いて部屋に向かう。
どこを見てもだだっ広いこの家は今では俺一人が暮らしている。大学生の兄貴がいるけど、一人暮らしして今は家を出てるからたまにしか帰って来ねぇ。
寂しいとかそういう感情はもうねぇ。
ガキの頃からこんな生活だから、むしろ家に誰かいる方が違和感あるぐれぇだ。
部屋着に着替えて風呂に入ろうと浴室へ向かう。ご丁寧に風呂も毎日掃除して沸かしてってくれてる。だから俺は一人でもやって来れた。さすがに土日は家政婦もいないから全部自分でやるんだけど、俺は大抵の事なら出来ちゃうから苦じゃなかった。料理も凝った物じゃなければ出来るし、掃除も洗濯も出来る。いや、出来るようになった。
自分がやらなきゃいけない。そう思い込んでいたら自然と出来るようになった。
風呂の中で今日の出来事を振り返る。
一番に思い浮かべるのはやっぱり貴哉と早川だよなー。俺からしたらこのまま離れてくれれば嬉しいけど、貴哉の機嫌を取るにはそういう訳にはいかねぇし、かと言って早川に貴哉と仲良くしてやってくれなんて言いたくねぇし。
うーん、どうしたもんかね~。
あと、話が逸れると長くなりそうだったから貴哉には野暮用って言ったけど、帰りに怜ちんと那智から遊びの誘いがあったんだ。これは前から言われてたんだけど、付き合い始めたばかりの俺と貴哉に遠慮してたのもあって、とうとう爆発したらしい。貴哉を迎えに行く前に二人に捕まってて、それで少し遅れたんだ。
二人の気持ちも分かるから今度時間作ってやんねーとな。
俺は風呂から上がって冷めた夕飯を一人で食う。
顔も知らない家政婦さんの飯はいつも普通に美味かった。俺は母親の料理をガキの頃しか食った事が無いからお袋の味ってのを知らない。多分、俺のお袋の味はこの顔も知らない人が作った料理になるんだろうな。
食いながらスマホの着信画面を開く。
早川に電話するつもりだ。出るかは分からない。あいつって結構真面目なとこあるから先輩の俺の事は無視しないと勝手に思っていた。
案の定、電話を掛けてからすぐに出た。やっぱりな。そして出るなり怠そうな声でこう言われた。
『あのー、掛ける番号間違えてますよ?』
「間違えてねぇよ。早川に掛けてんだ」
『……何の用ですか?』
やっぱり早川は見た目に似合わずこういうとこは真面目だ。俺なら絶対出ねぇし、着信拒否するわ。
「貴哉の事だけどよ」
『あー、それならもう終わったんで。俺はもう何もしませんし、二人で仲良くやって下さいよ』
「聞けよ」
『何ですか?俺今忙しいんです』
「お前は本当に貴哉の事吹っ切れたのか?」
『はい』
「もう普通に話とかしてやれねぇの?」
『何言ってるんですか?俺から貴哉を盗っておいて良くそんな事言えますね。むしろ普通にしない方が貴方の為になるんじゃないですか?』
「そりゃそうだ。でもよ、貴哉があのままじゃ困るんだよ。俺は貴哉の意見を尊重する事にしたんだ」
『……立派ですね。それで俺を犠牲にするんですか?人の気も知らないで、自分達さえ良ければそれでいい。貴方達は本当に勝手だ』
「なぁ、これが本当のお前なのか?」
俺に対してはこういうあっさりしたとこはあっても貴哉にはこんな態度取ってるのは見た事がねぇ。普段の早川をそんな知らねぇから本当のとこは分からねぇが、貴哉が言うんだからおかしいんだろ。
少なくとも前はもう少し可愛げがあったと思うが。
『どうでもいいでしょそんな事』
「ん。そうだな。悪かったよ。貴哉の事は自分で何とかするわ」
『そうして下さい。じゃあ』
勝手に電話を切られた。
ふーん。これがあの早川ね~。
正直、貴哉が早川の何を心配してるのかは大体知ってる。てか昨日貴哉が全部教えてくれた時に言ってたしな。貴哉は早川の前では誤魔化そうとしてたけど、いや、自分で話した事忘れてるのかもな。
確かに友達としてなら心配にはなる。ましてや貴哉と早川は好き同士のまま別れたから友達以上に想い合ってる筈だ。今はな。
はぁ、貴哉が早川の事を早く吹っ切れてくれれば楽になるのにな。
早く俺だけを見て欲しいのにな……
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