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1章 二学期中間テスト
彼氏が来るまで相手してやるよ
しおりを挟む今日からとうとう中間テストが始まる。
昨日は俺と伊織は勉強をサボった。まぁ中間だし、先週から少しやってたから前回より点数取れればいいなぐらいに考えていた。
勉強は大嫌いだけど、今日は不思議と心が落ち着いていた。
伊織に全部本当の事を話して分かってもらえたのがとても嬉しかったんだ。怒らずに、いや、内心はめちゃくちゃ怒ってるかもしれない。でも、伊織はずっと俺の側にいて、ずっと愛してくれた。
今回は腰も大丈夫みてぇだしな!少しだけ違和感あるぐれぇだ。
だからこれからは俺も出来る事をやろう。
余計な事は考えずに、無事進級出来るように嫌な勉強も頑張るんだ。
教室に入ると、みんなテストモードで、ほとんどの奴らが自分の机で勉強してた。俺はこの空気が嫌いだ。
「あ、貴哉おはよー。今日からテスト頑張ろうね~」
「おはよう貴哉」
直登と数馬も今日はイチャつかずにそれぞれ勉強してたみてぇだ。どれ、俺もやるかな?
「はよ。俺もたまには朝から勉強……ん?」
「貴哉ってばやる気満々~♪桐原さんに手取り足取り教えてもらった成果を出す時が来たもんね~?」
後ろから直登が茶化す声が聞こえるけど、そんなのはどうでも良くなった。俺の鞄の中はすっからかんで、いつも通り何も入っていなかったからだ。
「あ、やべ、いつものノリで何も準備してなかった」
「うわっ!やる気ねぇな!」
「貴哉、俺この教科は大丈夫だからノート貸すよ。読んで?」
「悪ぃな数馬♪うおっ字めっちゃ綺麗だな!」
「もうっ!数馬くんのノート汚さないでよね~」
俺は数馬にノートを借りてペラペラと捲って書いてある文字を読んでいた。今日は空の方は一回も見ていない。なるべく見ないように、空以外の事を考えるようにしようと思ってるんだ。
それからテストは普通に始まって初日が終わった。意外と手応えがあった気がするけど、気のせいか?なんか、伊織に教わったとこがあって、そこは埋められたんだ。まぁ半分は空白になっちまったけど、今までの白紙よりマシだろ!
て事で俺は伊織が迎えに来るのを待っていた。
んー、伊織が迎えに来るのはいいんだけど、今度から玄関とかで待ち合わせとかでもいいよなぁ?だってここで待ってるのとか暇だし?
そんな事を考えながら待ってるけど、いつもはすっ飛んで来る伊織がなかなか来ない事に気付く。
今日はテストだし、学年違うからなんかやってんのかなぐらいに思ってたけど、教室には数人しかいなくなった。今日は昼までだからみんな帰るの早かったなー。腹減ったもんなぁ。
俺は電話してみようとスマホを取り出した時、教室に誰かが入って来た。伊織かと思って見てみると赤い髪ではなく、明るい茶髪の空だった。
気まずくてすぐにふいっと窓の方に顔を向けてしまった。今日初めてハッキリ見たな。
テスト中、俺の席から廊下側に座る空が見えるから、横顔は見えていた。
くそー、伊織の奴早く来いよなぁ。
「帰らないの?」
「へっ!?」
声を掛けられるなんて思ってもなかったから思わず変な声が出ちまった!
え、今喋ったの空だよな?空の声だったよな?
空がいるであろう廊下側を見ると、こっちを見ていた。
「あー、帰るよ!でも迎えが来ねぇから」
「ああ、あの人ね」
それだけ言って教室から出て行こうとする空。てか何で戻って来たんだ?忘れ物でもしたのか?
俺は特に呼び止めるでもなく、そのまま空を見てたら空の動きがピタッと止まった。
そしてクルッとこちらへ歩いて来た。
なになになに?まだ何かあんの!?
「テストどうだった?」
「……まぁまぁかな。思ったよりは埋まったけど……?」
「俺はボロボロ!まぁテスト勉強なんかしなかったから当たり前だけどな~」
「でもお前勉強しなくても出来るじゃん」
「多分順位落ちる。空白何個かあったし」
「それでボロボロなんかよ」
「普通は全部埋めるだろ」
「喧嘩売ってんのか?」
何だこれ?普通に会話してっけど、ただの世間話みてぇな。空は普通に俺の側で話していた。
「はは、突っかかって来るとこ変わんねぇな」
「それはお前もだろ。てかそっちこそ帰らねぇのか?」
「帰ってもやる事ねぇし。彼氏が来るまで相手してやるよ」
「そりゃどーも。気持ちは嬉しいけど、その彼氏にはお前とはもう関わらねぇって言ってあるんだ。勘違いされるから気にせず帰れよ」
これは本音だった。
誰もいない教室で空と二人きりでこんな和やかに話してるとこなんか見られたら機嫌悪くなるに決まってる。
あまり深刻な感じにしたくなかったか、軽く言うと空は悲しそうな顔をした。
な、何だよっ?何でそんな顔すんだよ!?
空だって俺とは関わりたくねぇって言ってたよな!?
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