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1章 二学期中間テスト

楓って今はこんなんだけど、中学の頃は真面目くんだったんだぜ?外面はな

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 伊織と駅前のマックに行く。
 本当にいきなり思い付いた事だったからどうなるかなんて分からねぇ。勝手に巻き込んじまった楓からは「了解」って返信があったから、後は楓が俺の反応とか見て合わせてくれりゃいいんだけど、もし食い違うとことかあったら感の良い伊織には気付かれる。頼むぜ楓ー!
 もうここまで来たらやり切るしかねぇ!
 臨時演劇部の根性見せてやる!


「楓来てっかな~?あいつちょこちょこ髪型変わるから分かりずれぇんだよな~」

「あそこに光陽の制服いるけど、一人だしあいつじゃね?」


 伊織が指差すボックス席に楓がいた!
 髪型は、最後に見た時とはやっぱり変わってて、今度は全部薄いピンク色だった。伸びた髪は縛ってて、両サイドのツーブロックが見えててとても厳つかった。
 俺に気付いた楓は、笑顔でヒラヒラと手を振っていた。


「楓~!お前また染めたのか!」

「ピンク気に入っちゃった♪桐原さん、初めまして。貴哉の友達の野崎楓です」


 楓は丁寧に立ち上がって伊織に挨拶をしていた。
 二人は前に電話で話をした事があるけど、顔を合わせるのは初めてだ。俺との関係はお互いは知ってるはずだけど、この急展開にどうなるか俺の心は冷や冷やし放しだった。

 礼儀正しい楓に伊織はニッコリ笑い返していた。


「光陽の野崎な。俺は桐原伊織。貴哉の彼氏♪野崎にはずっと会ってみたかったんだけど、思ってたよりヤンチャだな~!」

「伊織~、楓って今はこんなんだけど、中学の頃は真面目くんだったんだぜ?外面はな」

「せっかく光陽に入ったんで、垢抜けてみました♪桐原さんはうちの学校でも有名なので、会えて嬉しいです。まさか友達の彼氏になってたなんて驚いてますけど。あ、何か食べます?俺から誘ったので買って来ます」


 ここで楓の力量発揮!あの俺の謎のメッセージだけで内容を察してくれたみたいだな!そしてさり気なく出来る後輩アピールも楓らしいぜ!


「あー、さすがに後輩に奢られるのはなー。俺が買って来る。二人は何食べたい?」

「俺テリヤキとコーラ!」

「えー、俺もいいんですか?桐原さんめっちゃ男前っすね。ポテトとアイスティーお願いしていいですか?」

「了解。ちょっと待ってて」


 ここでまさかの伊織の年上アピール発動で、俺と楓が二人きりになれるという奇跡が!
 カウンターへ行った伊織にバレないように急いで楓に礼を言った。


「本当に悪い!急だったのに来てくれて助かったぜ!それと、話も合わせてくれてサンキューな!」

「いいって。貴哉が俺に連絡するなんてよっぽどの事だからな。とりあえず俺は貴哉に恋の相談をしたくて、貴哉を呼び出した。そんな設定だと思ってるけど?」

「そうそう!さすが楓~♪詳しくは後で話すからよ。とりあえず伊織は安心すれば先に帰ると思うからそれまで頼むな?」

「任せろ♪」


 楓とは昔からこういう風に協力していろいろやって来たんだ。だから一番気の合う楓の事が大好きだ。
 楓とはいろいろあって、中学三年の終わりから気まずい仲になったから話もしなくなったけど、高校に入ってまたこうして話せるようになって俺は本当に嬉しかった。

 
「でもさ、彼氏の事で悩んでろって言われたけど、実際悩んでたんだよ」

「前に会った時もそんな事言ってたもんな。何があったんだ?」

「前、話した通り俺は別れたい。でも向こうは別れたくない。でもそろそろハッキリさせたいと思ってるんだ」

「出来そうなのか?」

「させるよ。恋の為にも、俺自身の為にもな」


 楓は良い奴だから相手を突き放すとか出来ねぇんだろうな。別れたくないって言われてダラダラ続いてる感じか。前に聞いた時は束縛が酷いからって言ってたけど、それが無かったら楓はまた付き合っていけるのかな?

 そんな真面目な話をしてたら俺達の頼んだ物を買って来てくれた伊織が戻って来た。
 

「お待たせ」

「伊織~♪サンキュー♪」

「俺の分までありがとうございます。噂通りですね桐原さんは」

「えー、どんな噂ー?彼氏一筋で彼氏に手を出した奴には容赦ねぇ男とかー?」


 伊織は俺の隣に座ってニコニコ笑顔のまま頬杖をつきながら楓に聞いた。自分で流した噂の事だろう。俺が目立つのが嫌だって言ったから自分から周りにそう公言したんだ。それでも伊織ファンは減ってねぇけどな。


「いや、そんな噂は聞いた事ないですよ?芸能人みたいな容姿で、頭も良くて、何でも出来る男だって聞きました。性格も誰にでも明るくて良い人だって」

「あー、光陽にはまだ広まってねぇみてぇだな。んじゃ野崎が光陽に広めておいてくれ。本当の桐原伊織はクズでケチで何も出来ねぇ整形野郎だってな。ジロジロ見て来たら男でも女でも殴るぞとも言っといてくれ」

「んな事言っても誰も信じねぇだろ。信じるのなんてお前の事知らない奴ぐらいじゃね?」

「あはは、桐原さんって面白い人なんですね。さすが貴哉の恋人だな」

「伊織は良い奴だよ。たまに面倒くせぇけど、本当に俺の事を大事にしてくれるし、優しいしな」

「貴哉ぁ♡かわいすぎー♡なぁ、野崎~お前とはまた会いたい。今日は二人で積もる話があるみてぇだし、貴哉の事任せるけど、次会った時は貴哉の昔の話聞かせてくれよ」

「俺の話ぃ?今と変わらねぇよ」

「お前の全部を知りたいんだ♡親友にしか分からない事もあるだろ。んじゃ俺は帰るわ。貴哉、帰ったら連絡くれ」

「おー」

「あの、桐原さん、マックご馳走様でした。それと、貴哉の事よろしくお願いしますっ」


 今気付いたけど、伊織の分のバーガーと飲み物が無かった。伊織は本当に先に帰るつもりだったらしいな。どうやら楓は大丈夫だと判断したみたいだ。
 最後に楓がまた立ち上がって伊織に礼を言っていた。律儀な奴だなぁ。楓らしいけどな。

 そして伊織が帰った後、俺は今回のSOSについてを楓に全て話した。
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