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1章 二学期中間テスト
※ 俺はどこまで酷い人間なんだと思う
しおりを挟む※楓side
学校終わりに形だけの恋人である恋と帰っていた。
元々はお互いちゃんと好きだった。だから付き合っていた。でも俺にはもう恋への気持ちは無い。だから「別れたい」と何度も言ってるんだけど、恋は「別れない」の一点張り。
俺も恋に対してもう少しキツく出来たらこんなにダラダラした関係を続けなくても済むんだろうけど、自分に好意を寄せている相手を突き放すのはどうにも苦手だ。
だから今もこうして一緒に帰ってるんだけど、本当は断るべきなんだ。友達として出来る事ならと思って過ごしているけど、恋人がしそうな事は一切しないようにはしている。
例えば、手を繋ぐとか、それ以上の事をするとかな。一線引いてるつもりだけど、俺が中途半端に接してるせいか恋は変わらず俺と一緒にいたがった。
「楓ー!テスト終わったら遊び行こうぜー!」
「悪い。二人では無理」
「分かってる!羽賀達も誘ってさ、みんなで楽しくさ」
「それならいいよ」
「よっしゃー♪何するー?やっぱカラオケ?」
俺が素っ気なくしても、楽しそうに振る舞う恋。
恋は変わった。俺が別れたいと言う前だったら、怒ってたと思う。何でそんなに冷たいんだーってうるさかったよな。
なんつーか、悪いとは思うよ?でもさ、俺に気持ちが無いんだからどうしようもなくない?
そもそも俺は貴哉との事をちゃんと話してから恋と付き合ったし、恋はそれを承知で俺といたんだし。まぁ、恋は俺がまた貴哉とやり取りし出したとは知らないけどな。
恋と別れたいと思った理由はズバリ束縛だ。
初めはそんなとこも可愛いなと思ってたけど、あまりにも酷いから、耐えられなくなったんだ。
恋とは高校入ってすぐに付き合い出したけど、半年間も良く一緒にいられたなと自分でも思うぐらい束縛が激しい。
別れる決意をした理由は貴哉とまた関わるようになったからだ。貴哉には相手がいるし、もう手に入れたいとかは考えてねぇけど、やっぱり貴哉が好きだ。そんな貴哉と比べるようになってから俺は恋の事を恋人として見る事が出来なくなったんだ。
「楓、また勉強教えてくれよ」
「いいよ。休み時間にな」
「なぁ楓……」
「あ、待って」
ほとんど恋が話していたけど、それを遮ってスマホを開く。メッセージが届いた音がしたからだ。
俺はまた貴哉と関わるようになってから着信やメッセージが届くとすぐに確認するようになっていた。貴哉からかもしれないからな。ほとんどは貴哉以外からだけど、貴哉が俺に連絡する時は何かあってピンチの時ぐらいだからな。
スマホを見て内心驚いた。なんと、貴哉からのメッセージだったんだ。すぐに開いてみると、やっぱりSOSだった。急いで打ったと思われる文章に、俺は自然と笑みが溢れた。
貴哉らしいなって嬉しくなった。
どうやら彼氏と何かあったらしい。今すぐに駅前のマックに来いって、俺の予定は無視かよって笑えた。貴哉からの命令のような文章を読んであいつが何をして欲しいのか、俺に何を求めているのか瞬時に理解して、『了解』とだけ送って画面を閉じた。
「俺予定出来たからここで解散な。気を付けて帰れよー」
「待てよ楓っ」
メッセージを見ていた俺の事を不満そうに見ていたのは分かってた。それでも途中で文句を言わなかったのは俺の機嫌を損ねないようにだろう。
それを気付かない振りをして立ち去ろうとすると、呼び止められた。
「貴哉の所に行くのか!?」
「……俺さ、別れたいって恋に言ったよな?もう気持ちもないって。だからメッセージが誰から届いて誰との予定かまでは言わないけど、それが不満ならもう俺といるのやめなよ」
「分かってる!誰に会うとか言わなくていいっ!でも、俺は楓とは別れないっ!」
「とりあえず急ぐから後でちゃんと話そ。やっぱりこのままじゃ良くないからな」
悔しそうに下唇を噛んでる恋を見てさすがにハッキリさせようと思った。
恋は見た目は良い。性格はかなりキツいけど、多分理解してくれる人となら上手くやっていけると思う。ダラダラ俺といてももう先は無いんだし、恋の為にもならない。
俺も貴哉とは付き合う事が出来ないって分かってるからこれまで恋と曖昧な関係を続けていたけど、無意味過ぎるこの関係、辛くもなっていた。
失恋したばかりだった俺にとって恋には励まされたし、癒やされたりもした。
だけど、それは一時的なものであって側にあるべきものが再び戻れば必要なくなった。
俺はどこまで酷い人間なんだと思う。
それでもいい。俺が酷い人間で、周りにそう思われていても、貴哉とまた笑って話せるようになれた。それだけで俺は全てを捨てられた。
貴哉は俺にとって一番の存在だから。
俺はその大切な人の為に恋からの答えを待つ事なく歩き出した。
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