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8章
俺より背が低い!
しおりを挟む類はまたニヤニヤと笑い始めて、俺のベッドに座って足を組んだ。足まで長くてムカつくぜ!
「俺と伊織は別れるよ。あいつとはしばらく会えないから次会ったらちゃんと別れるつもりだ」
「へー、何で会えないの?」
「家族と旅行行ってるんだよ」
「マジで?貴哉置いてかれちゃったの?」
「そうだよっ!だから伊織の事を手に入れたいなら勝手にしろ!そんでもう俺に関わるなっ」
「何で別れるつもりなんだ?」
「テメェ!人の話シカトすんじゃねぇ!」
「気になるじゃん。理由は?」
相変わらずマイペースに話す類。仕方ねぇから俺が合わせるしかなかった。
「伊織とは合わなかった。それだけだ」
「うわ、それ本当に好きだったのかよ?軽~」
「何でもいいだろ。とにかく俺と伊織は関係ないからもう……」
「たーかや♪」
「っ!」
俺の言葉を遮ってこっち来いと手招きをされた。
俺は早く話を終わらせて帰ってもらいたいから大人しく言う事を聞く事にした。
こいつには全く話が通じないからな。相手するだけで疲れちまう。
俺が数歩歩み寄り、類の目の前に立つと長い腕を伸ばして俺の右手首を掴んだ。あ?何触ってんだ。
「なんだよ」
「伊織さんと別れるってのは分かった♪てかそれなら都合がいいわ」
「は?」
「俺さ、自分のもの盗られたのって初めてなんだよね。それも貴哉にだよ?何か面白くなっちゃって♪」
「またその話かよ」
「そうそう。だから俺と付き合ってよ貴哉」
「お前も訳分かんねぇ事言ってねぇ……で!?はぁ!?お前なんつった!?」
思わず掴まれた手首を振り払って聞き直すけど、こいつ今付き合ってって言ったよな?本当話がめちゃくちゃ過ぎて追い付けねぇ……
「あはは♪いい反応~♪俺貴哉の事嫌いじゃないってかむしろ好きな方だし、見た目も悪くないし?何より面白いじゃん?俺は全然付き合えるけど?」
「いやいやいや、俺が全然付き合えませんけど!?お前となんか無理っ」
「えー、何でー?貴哉にフラれるとか恥でしかないからやめてって」
「おちょくってんのか?コラ」
「それは付き合ったら分かるでしょ。今は俺から大事なもん盗った貴哉に興味があるんだよ。伊織さんとも別れてフリーなんだろ?俺もフリーだし、別に付き合ってもいいじゃん」
「無理無理無理っ!お前と付き合うぐらいなら一生一人で生きてくわ!」
「そんなの貴哉が哀れだから俺が面倒見てやるって。てか何でそんな拒否んの?好きな奴でもいんの?」
相変わらず人を小馬鹿にしたような言い方で腹が立ったけど、ここで本当の事がバレたら意味がない。もしかしたらそれを聞き出す為の誘導かもしれない。
俺は一度落ち着いてこの馬鹿の相手をする事にした。
「好きな奴はいない。でもお前とは付き合わない。俺にだって好みってのがあるんだ」
「どういうのが好みなんだよ?」
「俺より背が低い!」
「うわ、そしたら小人と付き合うしかなくない?」
「テメェはいちいち一言余計なんだよ」
「ねぇ中身は?性格はどんなのが好みー?」
「生意気じゃない」
「ふーん。それなら出来るかもー♪」
類はニコッと笑って立ち上がった。何をするのかと思ったらズボンのポケットから財布を出して三千円を出した。
「はい、これさっきのコンビニで払ってくれたやつ。立て替えてくれてありがとう」
「え、いや、別にいいけど」
いきなり過ぎて俺が戸惑いながら受け取ると、今度は机の椅子に座って俺を見上げて来た。
「身長はもう変えられないけど、こうすれば気にならないでしょ?なるべく貴哉といる時は上に立たないようにするから」
「別にそれはいいけど」
「あ、寒くない?暖房付けようか?」
「ああ、頼むわ」
ん?本当にいきなりどうしたんだよこいつ。
エアコンのリモコンを操作して暖房を付けて着ていた青いコートを脱いで勝手に壁に掛けてあったハンガーに掛ける類。俺の上着も脱がせて同じように掛けてくれた。
気が利くじゃねぇか……
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