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8章
そいつにガン飛ばされてんだけど
しおりを挟む俺は家を出てから空に電話を掛けようとして辞める。空は今陽子さんといるんだよな。やっとちゃんと向き合うって決めた二人の中に入って行っていいのか?
さっき父ちゃんが言ってた事を思い出す。もっと俺との時間を作るべきだったと俺が大きくなってから思ったって言ってたけど、陽子さんも同じ気持ちなんじゃないか?
だとしたら今陽子さんはまた空が帰って来てくれて何より嬉しい筈だ。
「俺と空はいつでも会えるしな~」
手に持っていたスマホをズボンのポケットにしまって俺は近くのコンビニに寄った。
何となく良い事をした気分で今日は家でダラダラしようと菓子とジュースを選んでレジに並ぶ。そこで、フラッと入って来た男に目が行った。
ピンクの派手な髪にスラッとした長身の男。小さい顔で切れ長のかっこいい目。俺の幼馴染の楓だった。
「楓!」
「……貴哉?」
俺が名前を呼ぶと驚いた顔してた。イヴの日もだけど、楓とは良くコンビニで会うな~。まぁ家近いからってのもあるけどな。
そしてすぐに、楓の隣にいる金髪の男に気付く。目が合うとそいつはハッとした顔をして、俺を睨んで来た。
「なぁ楓ー?俺今そいつにガン飛ばされてんだけど」
「あ、恋、やめろって」
「だって、貴哉って……」
初対面で睨まれてイラっとしたから睨み返しながら楓に言うと、そいつは楓の服の裾をギュッと握って注意されたのを嫌そうに聞いていた。
歳は俺らと同じぐらいで、目付きは悪いけど綺麗な顔してる。身長は俺と同じかやや低め。楓が呼ぶそいつの名前を聞いて俺の頭の中で何かが繋がった。
「あ!恋ってお前、楓の元彼か!」
俺がつい大きな声を出して言うと、コンビニにいた奴らがジロジロと見始めた。元旦って事もあっていつもより人が多いコンビニで俺ら三人は注目の的となった。
やべ、と思って逃げようかと思ってたら、楓の元彼が俺を指差して怒鳴って来た。
「テメェ人前で何つー事言いやがるんだ!元彼じゃねぇよ!ちゃんと付き合ってんだよ!謝れクソ野郎!」
「恋っ……はぁ……」
「え!?元彼じゃないだと!?……ん?クソ野郎?それ俺に言ってんのか金髪吊り目!!」
「ああもう!二人共迷惑だから一回出るぞ!」
俺とそいつの間に火花が出始めた頃、楓が見かねて俺とそいつの腕を引っ張ってコンビニの外に出そうとした。あ!俺まだ会計してねぇよ!くそ!列から抜けちまったから並び直しじゃねぇか!俺は面倒くさくなったから後で楓に買わせようと思って持ってた菓子類を棚に戻した。
俺が機嫌悪くコンビニの外に出ると、楓と恋って奴が気まずそうに立って待っていた。
「おい楓、何だよこの態度悪いの。俺喧嘩売られてんだけど」
「お互い様だろうが。大勢の前で元彼扱いしやがって」
「二人共落ち着け。ここだと目立つから近くの公園へ行こう」
またバチバチっと火花が出たから、楓の提案で歩いてすぐの所にある公園の屋根付きのベンチに座って話す事にした。
楓の隣にピッタリ張り付いて座る恋はずっと俺を睨んだままで、もう俺は気にならなくなっていた。何となくこいつが楓の元彼ってのは分かった。だって楓から聞いてたまんまなんだもん。
「貴哉、紹介する。お前に話した事のある山岸恋だ」
「おう。元彼じゃねぇってのはどういう事なんだ?」
「それは、昨日からまた付き合う事にしたんだ」
「だからお前はさっき俺にあんなに大勢の前でそれも大声で失礼な事言ったんだ!早く謝れ!」
「だってより戻したとか知らねぇし。今聞いたんだから俺悪くなくね?なぁ?楓?」
「まぁそうだな」
困ったように笑う楓に、恋はショックを受けたような反応をしていた。
ふーん。こいつが楓の彼氏ね。思ってたよりやんちゃそうだな。少女漫画が好きだとか聞いてたからもっとナヨナヨして陰気な感じかと思ってたけど、大分うるさそうじゃん。
「よう、俺は秋山貴哉。楓とはガキの頃からの付き合いだ。恋、お前の事は楓から少し聞いてたから勘違いして悪かったよ。また付き合えたんなら良かったな♪」
「貴哉……やっぱりお前が……」
「恋!」
「……ごめん」
まだ不服そうな顔をしてる恋が俺に何かを言いかけて楓に叱られていた。
そっか、楓が俺に告った事知ってて、俺にやきもち焼いてる感じ?それなら俺立ち去るべきか?
「あ、二人共デート中だったんだろ?それなら俺帰るから後は楽しめよ~」
「貴哉、待って」
「ん?」
俺が帰ろうと立ち上がると、楓も立ち上がって止められた。おいおい、せっかく気使ってんのに、また恋に睨まれちまうじゃねぇか。
とりあえず話を聞こうと楓を見ると、真剣な顔で俺を見て聞いて来た。
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