【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

ねぇいーくん、貴ちゃんと喧嘩でもしたの?

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 部活の後、俺は一人で学校を出た。
 渡辺と話した後、部室へ行くとやっぱり茜に心配された。まぁ俺の目が腫れてたのもあったけど。
 適当に誤魔化して普通に活動出来たと思うけど、伊織とは会わなかったな。多分食堂の方にはいたと思う。あいつがサボるなんてするようには見えねぇし。
 
 学校の外を一人で歩いていてふと思う。
 あー、俺今一人なんだなぁって。
 いつもは空がいるから感じなかったけど、一人なのってこんな感じなんだな。

 俺はスマホを出して空とのメッセージの画面を開いて見てみる。相変わらず連絡は無い。
 一応今日は泊まりに行く予定だったけど、空から連絡無いってのは珍しいから、俺は迷っていた。
 本当に具合が悪くて電話も出来ない程なのか、だとしたら寝てる可能性もあるし無理させたくねぇよな。風邪が長引いても困るし。
 メッセージだけ送ってみっか。


「ん?」


 空にメッセージを送信した後、前を歩く派手な赤い髪の男を見つけた。
 伊織だ。てか俺より先に帰ってたのかよ。
 駅の方へ向かっているみたいだった。
 
 俺は気付かれないように歩く速度を落として様子を伺う。てか別に普通にしてもいいんだけど、何となく意識しちまうんだよなぁ。

 仕方ねぇ。違う方向から帰るか。

 俺はくるっと振り向いて来た道を引き返そうとした。すると、後ろに怜ちんとなっちがいるのに気付いた。二人も俺に気付いて笑顔で挨拶して来た。


「貴ちゃん演劇部お疲れ様~♪」

「おっす秋山!」

「よう、二人共。今帰りか?」

「うん♪てかいーくんは?」


 怜ちんから伊織の名前出て一瞬ドキッとするけど、なるべく普通に答える事にした。


「演劇部では会ってねぇから俺は知らねぇよ」

「えっ!てっきり貴ちゃんとデートするのかと思ってたぁ!」

「うんうん。いーくん先に帰るとか言ってたもんな~。今日金曜だし、秋山と過ごすのかと思ってたぜ」


 空がいないからって何でそうなるんだよ。
 しかもデートって……


「て言うか、貴ちゃん元気ない感じ?何かあったー?」

「なんとなく瞼も腫れてね?」


 あー、二人に勘付かれる前に帰らねぇとな。
 この二人は伊織と仲良いからすぐに伝わっちまうだろうからな。


「別に。ちょっと疲れてるだけ。じゃあな二人共」

「あ」

「お」


 ん?俺、変な事言ってねぇよな?
 なるべく二人に顔を見せないように立ち去ろうとしたら、二人の視線が俺の後ろに行っていた。
 そして何だと思って振り向くと、そこにはあの赤い髪の男、伊織が立っていた。
 

「い、伊織っ?」

「よう、三人お揃いで」


 伊織が俺の顔を見てたからパッと逸らすと、いつものように喋り始めた。
 てか駅に向かってたんじゃねぇのかよ!いつの間に戻って来てたんだ!?


「賑やかな声がするから見たらお前らがいたからよ」

「ねぇいーくん、貴ちゃんと喧嘩でもしたの?」


 怜ちん!何て事を聞きやがる!
 今その質問は俺と伊織にはタブーだ!
 絶対伊織は俺に冷たくするに決まってる!


「あ?喧嘩なんかしねぇよ。な?貴哉」

「え……お、おう」

「てか貴哉、お前目ぇ腫れてね?何かあったのか?」

「っ!!」


 伊織に顔を覗き込まれて咄嗟に後ろに下がってしまった。すると伊織はフッと笑った。
 俺の予想とは反して伊織はいつもみたいに優しい笑顔を俺に向けてる。伊織も泣いてた筈だけど、ケロッとした顔してるし……なんでだ!?


「そうなんだよぉ!貴ちゃんが元気なさそうだったから心配してたのー!いーくんが慰めてあげなよぉ♡」

「そうだそうだぁ!彼氏なんだから責任持ってな!」

「はぁ!?なっち、お前何でそれ知ってんだ!?」

「だって、いーくんに聞いたもん。二人は付き合ってるんでしょ?三角関係ってやつ~?」

「まさか親友がそんなハードな恋をするなんて思ってなかったぜ」

「伊織っ!」

「悪いな二人共。あれは冗談だ。だったらいいなって言う俺の妄想。あー、それで貴哉が嫌な思いしたのかもな。ごめんな?」

「え?」


 俺は三人の会話の内容に訳が分からず、頭の中が混乱して来た。
 二人もポカンとした顔をして呆気に取られていた。


「ちょっといーくん……」

「じゃあ俺帰るから」

「…………」


 混乱してるのは俺だけじゃなかったみたいで、残された怜ちんとなっちも訳が分からないと言った顔をしていた。
 そして伊織は一人で駅の方へ向かい、怜ちんはすぐに後を追おうとした。


「待ってよいーくん!」

「怜ちーん、俺秋山と何か食ってから帰るわー」

「なっち……」

「秋山も腹減ってるだろ?部活の後は腹ペコだよな~」

「オーケー!俺はいーくんの方行くねー!」


 ニカっと笑うなっちは俺にそう言った。
 怜ちんはなっちの考えてる事を察したのか、「よろしく」と言い残して伊織を追いかけて行った。

 なっちの奴、気使ってくれたな。


「秋山は何が食いたい?やっぱ肉かー?」

「なっち、ありがと……」

「え?まだ奢るなんて言ってねぇけど?」


 いつもの調子のなっちに俺は自然と笑顔になれた。
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