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1章 写真ばら撒き事件
※葵くんにお願いがあるの!
しおりを挟む※紘夢side
学校へ行くと、昼休み中らしくすれ違う人達にたくさん見られた。
前から俺が歩くだけで注目されて、嫌な顔して避けられてたけど、今日の視線は少し違った。
それは俺が黒髪だからだろう。
学校一の問題児が今度は何を企んでいるんだ?みんなが考えそうな事なんてそんなとこかな?
俺はそんなの気にせずに真っ直ぐに葵くんがいるであろう生徒会室へ向かった。
「こりゃ驚いた!お前紘夢か?」
「……桃じゃん。何してんのそんなとこで」
渡り廊下で窓の方を向き、俺を見て驚いている男は同じ二年の桃山湊だった。
こいつも俺と同じで問題児だ。俺と違う所は平気で人に手をあげる所。頭を使えばいいのに、本当に馬鹿だなと思う。でも桃の事は別に嫌いじゃない。
桃は俺に驚きながらもスマホを真っ直ぐに持って何かを写しているようだった。
「茜が綺麗な鳥がいるって言うから写メ撮ってんだよ。撮って送ってあげるのー♡」
二之宮茜か。桃同様、二年の嫌われ者。俺もだけどね。
「へー、いいじゃん♪それ俺にも送ってよ。待ち受けにするから」
「……おう!いいぜ♪」
「じゃあ俺行くとこあるから」
「行ってらー。あ、その髪センスあんじゃん♪俺好きよ」
立ち去る俺に桃はそんな言葉をかけた。
昨日までの俺なら桃なんて相手にもしなかっただろう。
でも今は何でかな、声を掛けられて嬉しくて、この髪色を褒められてとてもくすぐったい気持ちになった。
桃と話した後は誰とも話す事なく生徒会室へ着いた。
そしてドアをノックしてから中に入る。
まず目に入ったのは、窓が開いていてそこから吹く風に靡くカーテンだった。
そのすぐ前に葵くんの席があって、相変わらずの無表情で椅子に座りこちらを見ていた。
「紘夢、か?」
「お久しぶりです葵くん」
「ふん、そうか。お前らしいな」
そう言って鼻で笑う葵くん。
なんだ、いつもの葵くんじゃん。
てっきりもっと怒ってるのかと思ったよ。
「早速だけど、葵くんにお願いがあるの!」
「言ってみろ」
「俺に謝罪の場を設けてもらえないかな?」
「はぁ、お前はいつも唐突だな。それは何についての謝罪なんだ?」
「それは、葵くんが俺を呼び出した理由と同じだと思うよ?」
「……倉持瑛二から話は聞いた。本当に紘夢が指示したのか?」
「そうだよ。実は昨日貴ちゃんには謝ったんだ。そして仲直りしたよ。だから、今度はみんなに謝りたいの。今回の件だけじゃなくて、今まで俺がして来た事全て」
「それはまた果てしない謝罪になりそうだな」
「その一つとして、まず……今まで葵くんがいるからと言って悪い事たくさんして来てすいませんでした!」
「…………」
俺は腰を折って葵くんに向かって深く頭を下げて謝った。
ニヤけたりせずに真面目に。
きっと一番迷惑を掛けたのは葵くんだ。
だからまず先に謝らなくてはいけない人だった。
「頭を上げろ」
「はい」
「私はお前に謝られる筋合いはない。何故ならば交換条件で引き受けた事だからな」
その言葉も葵くんらしかった。
素直に受け取らずに捻くれた事を言う所。
俺はそんな葵くんが好きだ。
「あはは♪葵くんの言う通りだね~。じゃあさ、俺からの最後のお願いは聞いてくれる?」
「ああいいだろう。私もお前をどうフォローするか悩んでいた所だ。今回の件は大事になり過ぎたからな。知恵を貸すはずのお前が当事者とは」
「葵くんは優しすぎるよ。俺ね、貴ちゃんと話して本当に悪い事をしたなって思ったんだ。正直、貴ちゃんと話して和解するまでは悪い事をしたなんて微塵も感じてなかった。謝る気もなかったよ。でも今はみんなに謝りたい」
「よし、善は急げだ。そして最強の立会人を呼ぼう。私が生徒会長としていられる時間は後僅かだからな。これからはより強力な味方を付けた方がいい」
「葵くんより強力って誰ー?そんな人いるの?」
「私なんか足元にも及ばないお方だよ。さて出発だ」
一本に束ねた腰まである長い髪を靡かせて葵くんは堂々と歩いて生徒会室を出た。
どこまでもカッコつけるよねこの人は。
有言実行。どんな無茶な事でも本当にしてしまう凄い人。裏を返せば無謀だと思う事はやらず、違う方向で考える人。
だから俺はこの人なら使えると思って近付いたんだよね。
出席日数不足で退学寸前だった貴ちゃんを俺はどうしても助けたくて、無理だと言う葵くんに何度もお願いしてやっと動いてくれたんだ。
貴ちゃんに関してはあの葵くんでも苦戦してたみたい。
俺はそんな事を思い出しながら葵くんについて行った。
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