29 / 43
憧れなんだよな
しおりを挟むそれから一時間数馬と保健室で過ごした。教室に戻ろうと思ってたらオバチャンと担任が入って来た。
「広瀬くんすっかり顔色が良くなったわねー」
「心配かけてすいませんでした」
「まぁ」
「…………」
数馬が頭を下げて謝った事にオバチャンは驚いていた。担任はそれを見てから俺を見た。また話長くなりそうだなー。
「秋山、広瀬を第二会議室から連れ出したのは本当なのか?」
「本当だ」
「目的は何だ?」
「数馬をクラスに馴染ませる為だよ」
「先生っ貴哉は俺の病気の事を知って、ちゃんと向き合ってくれたんです」
「広瀬……でもなぁ、勝手にそんな事をやられては……」
「許可を取らなかったのは俺が悪いです。断る事も出来たのにしなかった俺が悪いんです。貴哉を責めないで下さい」
「広瀬、お前……」
「数馬かっこいー♪なぁ、数馬もこう言ってるんだし、多目に見てよ?あ、そうだ、数馬の分の机用意してくれよな」
「お前はまたそんな態度で!はぁ、正直広瀬がここまで発言したのには驚いている。俺とは目を合わせる事すらしなかったのにな」
「担任うるせーからだよ。話なげーもん」
「コラ!調子に乗るな!今回は見逃してやる。だが今度勝手な事をしたら分かってるだろうな!」
「はーい」
「まったく、ああそうだ、秋山追試の件だが」
「あ、いつなんだ?もう夏休み始まるじゃん」
「今日だよ。今日の放課後教室に残っとけ」
「今日!?いきなり過ぎるだろ!」
「黙れ!俺が声を掛けようとするとお前逃げるじゃないか!話は生徒会長から聞いてるだろうが、手を抜くんじゃないぞ」
「分かったって!じゃ教室戻るぜー」
うるさい担任から逃げるように保健室から出る。付いて来た数馬は不安そうに見て来た。
「なぁ、追試って?」
「そのまんまだよ。俺全部赤点だったから追試やるんだと」
「そ、そうなんだ」
一瞬数馬の顔がギョッと驚いたように見えた。担任が言うには全部赤点とか俺だけらしいから珍しいのかもな。
「あ、今コイツ馬鹿だと思っただろ?」
「思ってない!今回のテストは難しかったと思う!」
「まぁいいけどよ。ん?」
そんな話をしながら歩いていると、前から見覚えのある男が歩いて来た。そしてこちらに向かって来る。
「直登だ」
「……貴哉ぁ」
「直登は大丈夫だ。さっき俺達の事を担任に言ってくれたのも直登なんだ」
近寄ってくる直登に怯えるように俺の後ろに隠れる数馬。早く俺以外にも慣れてもらわねぇとな。
「貴哉ー!大丈夫か?」
「おう、悪かったな」
「ううん。ビックリしたけどねー。クラスもその話で持ちきりだよー」
直登はそう言いながら俺の後ろにいる数馬をチラッと見た。その時、数馬の小さな悲鳴が聞こえた。気がした。
「紹介する。この男は広瀬数馬って言って、俺たちのクラスメイトなんだ。今日から教室で過ごすからよろしくな」
「転校生?」
「違う。始めから居たんだけど、訳ありで別の教室で授業受けてたんだと。そんでこっちは中西直登。俺の後ろの席なんだ。数馬の席は俺の隣にしてもらうから、直登とも仲良くなっとけよ」
「…………」
「初めまして。訳ありってのが気になるけど、貴哉がちゃんと紹介してくれたし、悪い人じゃないみたいだね」
「数馬、直登にはお前の事話すぞ?いいな?」
「……うん」
その方がいろいろ都合がいい。あまり知られたくねぇだろうからとりあえず直登にだけ。
教室に向かいながら今までの事や数馬の事を話すと、直登はすんなり受け入れてくれた。
「そうだったんだねー。だからあんな事になっちゃったんだ」
「数馬も悪いと思ってるんだ。でも仕方ないから許してやってくれ」
「俺は気にしてないよ?数馬くんか。見た目は貴哉2号って感じだな」
「何だそれ?」
「ヤンキーなんて貴哉だけじゃん。もう一人増えたから2号♪ずっと貴哉の後ろに隠れてるし、貴哉の子分みたい」
「だとよ、何か言い返せば?」
「……嬉しい」
「は?」
「貴哉2号……貴哉の子分、嬉しい」
「あはは!変わってるなぁ!」
「何でもいいや。そろそろ教室着くけど、数馬ヤバかったらすぐ言えよ?」
「うん!」
「数馬くんファイトー♪」
今度は直登と居るし大丈夫だよな。今度はゆっくり、まずは直登から、そして俺、その後に数馬が入って……
「あー、担任の奴、机早く持って来いよなーって数馬?」
順番に入ったはずなのに、数馬の気配がなくて振り向くと姿形が無かった。ひょこっと廊下を覗くと壁に張り付く数馬がいた。
「あはは、パニックになるよりはマシか」
「た、貴哉っ手繋いで!」
「おう繋いでやらー。ほら入るぞ」
「っ……」
案の定、俺と数馬が入ると一斉にみんな見て来た。俺でも嫌だわこんなの。
だからクラスのみんなに言ってやった。
「おいてめぇら何ジロジロ見てやがんだ!俺と目が合った奴は明日は来ないと思え!」
そう言うと、サササッと各々やっていたであろう行動に戻って行くクラスメイト達。これでいくらかマシだろ。
「貴哉、かっこいい!」
「どこがだよ!怒鳴って脅してやっただけだろ」
「数馬くんからしたら貴哉は憧れなんだよな?俺机と椅子探してくるよ。ロッカーは空いてるとこ使おう。あ、数馬くんの鞄は貴哉の席に置いてあるよー」
「さすが直登!んじゃ任せて席に着くか」
「う、うん」
さっきので大分落ち着いたのか数馬は俺の後をピッタリ付いてきて、それでも教室の中に入ってくれた。
こいつからしたら大きな進歩だ。今までの数馬を見て来たから分かるけど、これだけの人数の中に入るなんて火の中に飛び込む気持ちなんじゃねぇのか?それか大きな渦がある海とか。
俺の想像力じゃそこら辺が限度だが、数馬にとっての前進には違いねぇ。
20
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる