【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ2nd season

pino

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憧れなんだよな

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 それから一時間数馬と保健室で過ごした。教室に戻ろうと思ってたらオバチャンと担任が入って来た。


「広瀬くんすっかり顔色が良くなったわねー」

「心配かけてすいませんでした」

「まぁ」

「…………」


 数馬が頭を下げて謝った事にオバチャンは驚いていた。担任はそれを見てから俺を見た。また話長くなりそうだなー。


「秋山、広瀬を第二会議室から連れ出したのは本当なのか?」

「本当だ」

「目的は何だ?」

「数馬をクラスに馴染ませる為だよ」

「先生っ貴哉は俺の病気の事を知って、ちゃんと向き合ってくれたんです」

「広瀬……でもなぁ、勝手にそんな事をやられては……」

「許可を取らなかったのは俺が悪いです。断る事も出来たのにしなかった俺が悪いんです。貴哉を責めないで下さい」

「広瀬、お前……」

「数馬かっこいー♪なぁ、数馬もこう言ってるんだし、多目に見てよ?あ、そうだ、数馬の分の机用意してくれよな」

「お前はまたそんな態度で!はぁ、正直広瀬がここまで発言したのには驚いている。俺とは目を合わせる事すらしなかったのにな」

「担任うるせーからだよ。話なげーもん」

「コラ!調子に乗るな!今回は見逃してやる。だが今度勝手な事をしたら分かってるだろうな!」

「はーい」

「まったく、ああそうだ、秋山追試の件だが」

「あ、いつなんだ?もう夏休み始まるじゃん」

「今日だよ。今日の放課後教室に残っとけ」

「今日!?いきなり過ぎるだろ!」

「黙れ!俺が声を掛けようとするとお前逃げるじゃないか!話は生徒会長から聞いてるだろうが、手を抜くんじゃないぞ」

「分かったって!じゃ教室戻るぜー」


 うるさい担任から逃げるように保健室から出る。付いて来た数馬は不安そうに見て来た。


「なぁ、追試って?」

「そのまんまだよ。俺全部赤点だったから追試やるんだと」

「そ、そうなんだ」


 一瞬数馬の顔がギョッと驚いたように見えた。担任が言うには全部赤点とか俺だけらしいから珍しいのかもな。


「あ、今コイツ馬鹿だと思っただろ?」

「思ってない!今回のテストは難しかったと思う!」

「まぁいいけどよ。ん?」


 そんな話をしながら歩いていると、前から見覚えのある男が歩いて来た。そしてこちらに向かって来る。


「直登だ」

「……貴哉ぁ」

「直登は大丈夫だ。さっき俺達の事を担任に言ってくれたのも直登なんだ」


 近寄ってくる直登に怯えるように俺の後ろに隠れる数馬。早く俺以外にも慣れてもらわねぇとな。


「貴哉ー!大丈夫か?」

「おう、悪かったな」

「ううん。ビックリしたけどねー。クラスもその話で持ちきりだよー」


 直登はそう言いながら俺の後ろにいる数馬をチラッと見た。その時、数馬の小さな悲鳴が聞こえた。気がした。


「紹介する。この男は広瀬数馬って言って、俺たちのクラスメイトなんだ。今日から教室で過ごすからよろしくな」

「転校生?」

「違う。始めから居たんだけど、訳ありで別の教室で授業受けてたんだと。そんでこっちは中西直登。俺の後ろの席なんだ。数馬の席は俺の隣にしてもらうから、直登とも仲良くなっとけよ」

「…………」

「初めまして。訳ありってのが気になるけど、貴哉がちゃんと紹介してくれたし、悪い人じゃないみたいだね」

「数馬、直登にはお前の事話すぞ?いいな?」

「……うん」


 その方がいろいろ都合がいい。あまり知られたくねぇだろうからとりあえず直登にだけ。
 教室に向かいながら今までの事や数馬の事を話すと、直登はすんなり受け入れてくれた。


「そうだったんだねー。だからあんな事になっちゃったんだ」

「数馬も悪いと思ってるんだ。でも仕方ないから許してやってくれ」

「俺は気にしてないよ?数馬くんか。見た目は貴哉2号って感じだな」

「何だそれ?」

「ヤンキーなんて貴哉だけじゃん。もう一人増えたから2号♪ずっと貴哉の後ろに隠れてるし、貴哉の子分みたい」

「だとよ、何か言い返せば?」

「……嬉しい」

「は?」

「貴哉2号……貴哉の子分、嬉しい」

「あはは!変わってるなぁ!」

「何でもいいや。そろそろ教室着くけど、数馬ヤバかったらすぐ言えよ?」

「うん!」

「数馬くんファイトー♪」


 今度は直登と居るし大丈夫だよな。今度はゆっくり、まずは直登から、そして俺、その後に数馬が入って……


「あー、担任の奴、机早く持って来いよなーって数馬?」


 順番に入ったはずなのに、数馬の気配がなくて振り向くと姿形が無かった。ひょこっと廊下を覗くと壁に張り付く数馬がいた。


「あはは、パニックになるよりはマシか」

「た、貴哉っ手繋いで!」

「おう繋いでやらー。ほら入るぞ」

「っ……」


 案の定、俺と数馬が入ると一斉にみんな見て来た。俺でも嫌だわこんなの。
 だからクラスのみんなに言ってやった。


「おいてめぇら何ジロジロ見てやがんだ!俺と目が合った奴は明日は来ないと思え!」


 そう言うと、サササッと各々やっていたであろう行動に戻って行くクラスメイト達。これでいくらかマシだろ。


「貴哉、かっこいい!」

「どこがだよ!怒鳴って脅してやっただけだろ」

「数馬くんからしたら貴哉は憧れなんだよな?俺机と椅子探してくるよ。ロッカーは空いてるとこ使おう。あ、数馬くんの鞄は貴哉の席に置いてあるよー」

「さすが直登!んじゃ任せて席に着くか」

「う、うん」


 さっきので大分落ち着いたのか数馬は俺の後をピッタリ付いてきて、それでも教室の中に入ってくれた。
 こいつからしたら大きな進歩だ。今までの数馬を見て来たから分かるけど、これだけの人数の中に入るなんて火の中に飛び込む気持ちなんじゃねぇのか?それか大きな渦がある海とか。
 俺の想像力じゃそこら辺が限度だが、数馬にとっての前進には違いねぇ。

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