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机は……壊れてねぇみてぇだな
しおりを挟む数馬が教室に来てから、クラスの空気がいつもと違ったのは初めだけだった。みんな物珍しさからチラチラ気にしていたが、俺と一緒にいるからか面と向かって来る奴は居なかった。
それはそれで数馬には負担になってるんだろうけど、今も必死に俺にしがみついて耐えているんだから褒めてやりたい。
「た、貴哉っ俺、頑張ってるぞっ」
「よしよし偉いなー。んじゃこのまま慣れろ」
「貴哉ー、それはそうと空くんとはどうしたのさ?今日話してるの見てないけど」
「ハッ」
後ろの席に座る直登に痛いところを突かれて現実に引き戻された気がした。数馬の事でそれどころじゃ無かったから後回しにしてたけど、早川の事も何とかしなきゃだよな。
んー、でも数馬が居たら二人で話も出来ねぇし、数馬を一人にする訳にもいかねぇし。
「まさか喧嘩したの?」
「した。もー面倒くせぇから夜電話すりゃいいや」
「何があったのー!てか俺から貴哉を奪っておいて許せないんだけど!」
バンッと机を叩いて立ち上がる直登。同時に数馬がビクッと跳ね上がってビビった。
机は……壊れてねぇみてぇだな。
「いつものヤキモチだよ。俺と桐原が話してるの見て嫌だーって」
「それだけ!?ほんっとにガキなんだから!」
「俺もあいつの事ほったらかしにしてるから悪いんだけどな」
「貴哉は悪くないだろ。自分の為に頑張ってるんだから、付き合ってたら協力するべきだろ……ん?今桐原さんって言った?」
「おう。赤い髪のアイツ」
「ええー!貴哉桐原さんと知り合いなの!?」
「お前いちいち大声出すな!みんな見て来るし、数馬の寿命が縮むだろ!」
「だって、あの桐原さんだよ!春くんの事もそうだし、もー聞きたい事がありすぎて大変ー」
もちろん戸塚の事も忘れていなかった。そっちは学校が終わった後の放課後に片付ける予定だし、その頃には数馬も帰るだろうから何とかやれる気がする。でもさすがに早川を今相手にするのは無理だ。
きっと今話してもまた揉めて終わる気がする。
てか追試やらなきゃなんだよな今日。
「あ、数馬も聞いてたと思うけど、俺今日追試あっから部活顔出せねぇんだわ。お前一人で行けるか?誰か迎え呼ぶか?」
「貴哉待ってる」
「さすが子分だね。ここまで来たら可愛いくて仕方ないんじゃない?」
「面白がってるだろお前」
「まさか!でも貴哉が二人いるみたいで面白いかもー♪似てるようで似てない貴哉とかいいよね♡」
「あ、直登の事は適当にしてればいいからな?コイツは残念なイケメンなんだ」
「変な事教えないでよ。そっかー、空くんと喧嘩したのかー」
後半部分はブツブツ小さく呟いてた。
早川はと言うと、教室に居たり居なかったりで、あっちから俺に話しかける気配は無かった。
それから上手く数馬のサポートしつつ今日の授業を片付けて、そして問題の昼休みになった。もしかしたらまた桐原が来るかも知れねぇからな、数馬を連れて逃げようと思っていた。
「数馬、行くぞ」
「うん!」
「行くってどこに?お昼はー?」
「桐原から逃げるんだよ!あ、もし桐原来たら俺達は第二会議室に行ったって言ってくれ」
「はーい」
後のことは直登に任せて数馬と教室を出た。
行き先はもちろん第二会議室とは正反対の場所。そうだな、人居なそうだし屋上にでもするか。
「あ、数馬は弁当持って来てんだな。俺ねぇから売店寄るぞ」
「売店……うんっ」
この時間の売店は数馬にとっては地獄のようだろうが、俺の生命に関わる問題なので我慢してもらうしかねぇ。
一階の玄関の横にある売店は案の定、激混みで近付く前に数馬の足はストップしていた。
「よし、お前はここで待ってろ。秒で行ってくっから」
「早く戻って来いよ!」
目当てのおかかのオニギリの場所は分かってる。一目散に向かって、むさ苦しい群れを掻き分けて進んだ。時々周りを威嚇しつつ、時には暴力という反則ギリギリの手を使って……
「よし!おかかゲットーってああ!誰だクソ!」
最後の一個だったおかかのオニギリに手を伸ばした瞬間、目の前で消えた事に軽くパニックになった。が、すぐに気力を取り戻し俺からおかかを奪った敵を睨み付けてやった。
何が何でも奪い取ってやる!
と思ったが、相手を見て血の気が引いた。
「き、桐原!何でここに?」
「教室から猛スピードで出て行く二人が見えたから後つけたんだよ♡これが食べたいんだろ?貴哉ー♡」
ストーカー宣言と共におかかをちらつかせる桐原。俺は分かった。こいつはおかかのオニギリが食いたいんじゃねぇ。俺をからかって遊んでるんだ!
「てめぇ!さっさとそれよこせ!」
「買って来てあげる。貴哉は早く広瀬のとこ行ってあげなよ。迷子の仔猫みたいになってるぞ」
「ああ!?」
数馬の方を見ると、売店から少し離れた所でうずくまって震えてるのが見えた。チッ、こいつに借りを作りたくなかったが仕方ねぇ。
急いで数馬の所へ行って軽くパニクってたから背中をさすってやった。
「はぁはぁ、貴哉ぁ」
「一人にして悪かったな。残念だけど桐原に見つかった」
「…………」
すぐ後から桐原がやって来て、勝ち誇ったように笑っていた。
「広瀬大丈夫かー?ほら着いて来いよ。穴場教えてやるから」
「穴場だぁ?」
桐原はおかかのオニギリを持ったまま歩いて行った。数馬を支えながら着いて行くと、売店のすぐ近くの部屋に入った。
何だここ?狭くてちょっと埃臭くて中には棚があって本とかファイルとかがあった。
「図書室の裏側。あっちの扉開けると図書室に出るんだ。図書委員と仲良いから良く借りてんだよここ」
「へー、静かでいいじゃん」
「だろ?これから貴哉が売店使う時は広瀬はここに居たらいい。図書委員には俺から話しとくから。あ、でも騒いだり他の奴連れ込んだりはダメだからな?ここ使う条件は少人数で大人しくなんだ」
「了解。とりあえずオニギリくれよ」
図書室の隣なら騒ぐのは禁止だろうな。俺が手を出すと、あっさりオニギリを渡してくれた。飯が食える事にホッとしてると、桐原が椅子を用意してくれた。
「ほら座れよ。食いながら俺から逃げた理由聞いてやるから♡」
理由なんて話すまでもねぇだろ。分かってて笑顔で言う桐原に借りを返す意味でも付き合ってやる事にした。
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