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第3章 安住の地
第45話 帝国脱出
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国境へ向かう道の途中の野営地。夕食の最中にエマルク医師が相談してきた。
「リビティナ。ワシは明日一旦町に戻って医療器具などを積み込みに行く。朝早くにここを出るが良いか」
「王国に出国してからも医療器具があれば助かるよ。ネイトスにも手伝いに行ってもらおう。レインも護衛を兼ねて一緒に行ってくれるかい」
「うん、分かったよ。あのねリビティナ、もし帝国に白子の子供が居たら、また助けに来てくれる?」
「勿論、助けに来るさ」
「それならアタイは、この帝国に残って白子の子供を探そうと思うんだけどいいかな」
「それはいいね。王国のハウランド子爵に手紙を送ってくれれば、ボクに連絡できるからね」
「うん、ありがとう。リビティナ」
レインはこれからも、白子の子供を助けられるとはしゃいでいるよ。エマルク医師もレインも、自分に何ができるのか考えて行動してくれる。
眷属になってくれた村人達も、自分の体の事や国境を超える事が不安だろうけど、互いに励まし合ってこの難関を切り抜けようとしている。
「さて、ボクも夜の間に一仕事してくるよ。ネイトス、レインと一緒にここの夜警をお願いするよ」
そう言ってリビティナは夜の闇へと消えていった。
翌日、お昼前には村人を連れて、町近くの国境へ向かう街道沿いまで来れた。ここでしばらく待っていると、エマルク医師の荷馬車がやってくるのが見えた。
「少し遅れたかのう」
「いいや、これなら夕方前に国境に着けるよ。それにしても大荷物だね」
「薬学の本なども積んでいるからな」
この世界の医学や薬学の知識。それはリビティナには無いものだ。科学的な知見と合わせれば眷属達の役に立つことだろう。
「レインとは、ここでお別れだね」
「うん、リビティナ。道中気を付けてね」
「レインお姉ちゃん、今までありがとう」
「ジェーンも元気でね。リビティナ、後はお願いするね」
「責任を持って、ちゃんと王国に連れていくよ」
町に帰るレインに別れを告げ、手を振りながら国境へと向かう。眷属達の乗る荷馬車五台とエマルク医師の荷馬車を連ねて、夕方前に無事国境検問所へ到着する事ができた。
「帝国の出国管理官にはワシが話をつける。合図するまで中には入らないでくれるか」
そう言って、帝国側の国境検問所の白い建物に入っていく。
「三十二人と医師のあんたを一度に王国に出国させるだと。そんな話は聞いてないぞ」
「全員、病気でな。その治療のために王国の病院に緊急入院させるんじゃよ」
「大きな病院なら帝国にもあるだろう。出国を許すわけにはいかんな」
「では、白子の者達を帝国で治療してくれると言うんじゃな」
「白子? 何だそれは」
「みんな入って来てくれるか」
村の人達が顔を隠すことなく、国境検問所の中にぞろぞろと入っていく。検問所の職員はその姿を見て化け物だと叫び、パニックとなり検問所内は大騒ぎになった。
槍を構える者までいたが、リビティナが土の防御壁を作り出し全員を守る。
「病気とは言え、この者達は帝国臣民じゃよ。医者であるワシが責任を持って連れていくんじゃ。出国の手続きをしてくれるかのう」
パニックの中、エマルク医師が冷静に出国手続きを促す。壁際まで離れていた職員が恐々ながらカウンターまで書類を持ってきた。
「わ、分かった! ここからすぐに出ていけ。もう二度と帝国には入ってくるな!」
村人の名前が書いたリストを提出して一括で出国手続きをする。これで合法的に出国する事ができる。リビティナとネイトスも出国手続きを終え、国境検問所を後にする。
「この先は王国の検問所だね。ここからはボクに任せてよ」
今度は王国側の国境検問所へリビティナが入り、中の職員に説明する。
「一度に三十三人もの患者と医師を入国させると……受け入れ先は決まっているのですか」
「ハウランド卿が全員を受け入れてくれると、書類を書いてくれているんだ」
昨夜のうちに書いてもらった書類をカウンターに置き、これで手続きができるか職員に聞く。
「ハウランド卿の領地はこのすぐ隣ですね。それなら問題ないでしょう。感染する病気ではないとの事ですが、できるだけ町に入らず病院へ直行してください。では検問所の横を馬車で通過してもらって結構ですよ」
村人達にはフードを被ってもらい、馬車の中で大人しくしてもらう。職員が違法な持ち物など無いか確認してから、馬車ごと通過させてもらった。
「ここが王国……これで俺達は命を狙われる事も無くなるんだな」
「リビティナさん。ジェーンと村人を助けてくれてありがとうございました」
検問所を抜け、ジェーンの両親や馬車の中のみんなに感謝の言葉をかけてもらった。
「この先にね、ハウランド卿がくれた土地があるんだよ。みんなとそこに行って暮らそうと思っているんだ」
人間の姿となった村人達は、普通の町で暮らすことはできない。誰にも知られる事のない場所で暮らす必要がある。昨夜、無理を言ってハウランド辺境伯に土地をもらった。
森の中の何もない場所だけど、綺麗な川の近くの開けた場所らしい。そこを眷属の里として開拓しよう。
ボクと眷属だけが暮らす隠れ里。これから苦労する事もあるだろうけど、眷属になってくれたみんなとならやっていけるさ。
ここからは街道を外れて、辺境伯が言っていた場所へと向かう。希望を胸にリビティナは、新たに三十三人の眷属となった人達と一緒に森の中へと馬車を進めた。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
今回で第3章は終了となります。
次回からは 第4章 魔族編 です。お楽しみに。
お気に入りや応援、感想など頂けるとありがたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
「リビティナ。ワシは明日一旦町に戻って医療器具などを積み込みに行く。朝早くにここを出るが良いか」
「王国に出国してからも医療器具があれば助かるよ。ネイトスにも手伝いに行ってもらおう。レインも護衛を兼ねて一緒に行ってくれるかい」
「うん、分かったよ。あのねリビティナ、もし帝国に白子の子供が居たら、また助けに来てくれる?」
「勿論、助けに来るさ」
「それならアタイは、この帝国に残って白子の子供を探そうと思うんだけどいいかな」
「それはいいね。王国のハウランド子爵に手紙を送ってくれれば、ボクに連絡できるからね」
「うん、ありがとう。リビティナ」
レインはこれからも、白子の子供を助けられるとはしゃいでいるよ。エマルク医師もレインも、自分に何ができるのか考えて行動してくれる。
眷属になってくれた村人達も、自分の体の事や国境を超える事が不安だろうけど、互いに励まし合ってこの難関を切り抜けようとしている。
「さて、ボクも夜の間に一仕事してくるよ。ネイトス、レインと一緒にここの夜警をお願いするよ」
そう言ってリビティナは夜の闇へと消えていった。
翌日、お昼前には村人を連れて、町近くの国境へ向かう街道沿いまで来れた。ここでしばらく待っていると、エマルク医師の荷馬車がやってくるのが見えた。
「少し遅れたかのう」
「いいや、これなら夕方前に国境に着けるよ。それにしても大荷物だね」
「薬学の本なども積んでいるからな」
この世界の医学や薬学の知識。それはリビティナには無いものだ。科学的な知見と合わせれば眷属達の役に立つことだろう。
「レインとは、ここでお別れだね」
「うん、リビティナ。道中気を付けてね」
「レインお姉ちゃん、今までありがとう」
「ジェーンも元気でね。リビティナ、後はお願いするね」
「責任を持って、ちゃんと王国に連れていくよ」
町に帰るレインに別れを告げ、手を振りながら国境へと向かう。眷属達の乗る荷馬車五台とエマルク医師の荷馬車を連ねて、夕方前に無事国境検問所へ到着する事ができた。
「帝国の出国管理官にはワシが話をつける。合図するまで中には入らないでくれるか」
そう言って、帝国側の国境検問所の白い建物に入っていく。
「三十二人と医師のあんたを一度に王国に出国させるだと。そんな話は聞いてないぞ」
「全員、病気でな。その治療のために王国の病院に緊急入院させるんじゃよ」
「大きな病院なら帝国にもあるだろう。出国を許すわけにはいかんな」
「では、白子の者達を帝国で治療してくれると言うんじゃな」
「白子? 何だそれは」
「みんな入って来てくれるか」
村の人達が顔を隠すことなく、国境検問所の中にぞろぞろと入っていく。検問所の職員はその姿を見て化け物だと叫び、パニックとなり検問所内は大騒ぎになった。
槍を構える者までいたが、リビティナが土の防御壁を作り出し全員を守る。
「病気とは言え、この者達は帝国臣民じゃよ。医者であるワシが責任を持って連れていくんじゃ。出国の手続きをしてくれるかのう」
パニックの中、エマルク医師が冷静に出国手続きを促す。壁際まで離れていた職員が恐々ながらカウンターまで書類を持ってきた。
「わ、分かった! ここからすぐに出ていけ。もう二度と帝国には入ってくるな!」
村人の名前が書いたリストを提出して一括で出国手続きをする。これで合法的に出国する事ができる。リビティナとネイトスも出国手続きを終え、国境検問所を後にする。
「この先は王国の検問所だね。ここからはボクに任せてよ」
今度は王国側の国境検問所へリビティナが入り、中の職員に説明する。
「一度に三十三人もの患者と医師を入国させると……受け入れ先は決まっているのですか」
「ハウランド卿が全員を受け入れてくれると、書類を書いてくれているんだ」
昨夜のうちに書いてもらった書類をカウンターに置き、これで手続きができるか職員に聞く。
「ハウランド卿の領地はこのすぐ隣ですね。それなら問題ないでしょう。感染する病気ではないとの事ですが、できるだけ町に入らず病院へ直行してください。では検問所の横を馬車で通過してもらって結構ですよ」
村人達にはフードを被ってもらい、馬車の中で大人しくしてもらう。職員が違法な持ち物など無いか確認してから、馬車ごと通過させてもらった。
「ここが王国……これで俺達は命を狙われる事も無くなるんだな」
「リビティナさん。ジェーンと村人を助けてくれてありがとうございました」
検問所を抜け、ジェーンの両親や馬車の中のみんなに感謝の言葉をかけてもらった。
「この先にね、ハウランド卿がくれた土地があるんだよ。みんなとそこに行って暮らそうと思っているんだ」
人間の姿となった村人達は、普通の町で暮らすことはできない。誰にも知られる事のない場所で暮らす必要がある。昨夜、無理を言ってハウランド辺境伯に土地をもらった。
森の中の何もない場所だけど、綺麗な川の近くの開けた場所らしい。そこを眷属の里として開拓しよう。
ボクと眷属だけが暮らす隠れ里。これから苦労する事もあるだろうけど、眷属になってくれたみんなとならやっていけるさ。
ここからは街道を外れて、辺境伯が言っていた場所へと向かう。希望を胸にリビティナは、新たに三十三人の眷属となった人達と一緒に森の中へと馬車を進めた。
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【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
今回で第3章は終了となります。
次回からは 第4章 魔族編 です。お楽しみに。
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