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第2章 シャウラ村編

第52話 魔の森の薬草採取

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「タティナ。すまんが今日は朝から裏山の奥まで薬草を採りに行く人がいる。その護衛をするからついて来てくれるか?」
「ああ、分かった。一緒に行こう」

 俺達との仕事は、必ず一緒にしたいと言っていたからな。タティナは冒険者として旅していたと言うから、こういう事には慣れているはずだ。

「この人は村の薬師のスティリアさんだ。こっちは先日村に来たタティナ。今日の護衛を一緒にしてくれる」
「おはようございます、タティナさん。よろしくお願いしますね」
「ああ、裏山の奥と言うことだが、この山の上か」
「この山を回った裏側の方なんですけど、自分は足が遅いのでそれほど遠くまではいきません」
「今日は、第1の泉ぐらいまでだな。早速出発しようか」

 今日は俺とカリンにキイエ。それにタティナが来てくれるから護衛には充分だな。
 裏山を登り木の魔獣がいた丘を越えて魔の森に入る。

「スティリアさんはいつものように薬草を採取してください」
「はい、ありがとうございます」
「今日は熊が多いわね。ユヅキ達はもう少し前に出れるかしら」
「ああ、そうしよう。タティナは右手の方を頼む」
「分かった」

 タティナは俺より強い、ある程度ひとりで任せても大丈夫だろう。森を歩きつつカリンの魔法攻撃と、俺とタティナの剣で魔獣を狩っていく。

「スティリアさん、この泉で休憩しましょうか」
「はい、ありがとうございます。ユヅキさん、いつもすみませんね」
「村の人の薬を作ってもらっているんだ。これぐらいならいつでも言ってきてくれ」
「お前達はいつも、こんな森の奥まで護衛をしているのか」
「いつもじゃないさ。2日後には川の上流にある池の点検と補修がある。タティナも手伝ってくれるんだろう」
「ああ、そのつもりだ」
「スティリアさん。この周りの薬草を採ったら帰りましょうか」
「はい、分かりました」

 薬草採取が終わっての帰り道。

「ユヅキ、またあいつよ」

 巨大な魔獣が俺達の前にやって来た。

「あの魔獣大きいな。あたいは初めて見るが、何と言う魔獣だ」

 人の背丈の2倍以上ある巨大な魔獣で、首は長く太い。首だけで人の背丈ほどあり、体は牛のようにずんぐりしている

「俺達はキリン牛と言っている。いつもは10頭程の群れで行動しているが、この丘にははぐれ魔獣がよく来る」
「あれが群れでいるのか!」
「群れっていっても大したことないわよ。真っ直ぐにしか走って来ないんだから」
「牙から炎攻撃をしてくる。それだけ注意してくれ」
「じゃあ、私が魔法攻撃で注意を引くから左右から攻撃してくれるかしら。あんた、あいつに踏みつぶされないようにしなさいよ」
「キイエは空から攻撃してくれ」
「キーエ!」

 キイエが空に舞い、カリンが高速移動で魔獣の向こう側に回り込んで注意を引く。
 俺達は左右に別れて位置に着いたところでカリンが魔法攻撃を仕掛ける。魔獣はカリンに向かって炎を吐くが、ローブで防御できるから心配ない。キイエも空から攻撃してくれている。
 その間に俺達は魔獣に近づき足を切り裂く。膝をついたところで首を集中的に攻撃して倒した。

「ユヅキ、木を伐ってくれる。タティナは枝を落として。運搬台を作るわよ」
「キリン牛は皮も肉も魔石も上等だからな。ちゃんと村まで運ぶぞ」

 この魔獣は大きすぎて、そのまま運べない。森の木を伐り運搬台に乗せて下り坂を滑らせて運んでいく。
 台の上にスティリアさんも乗ってもらい、カリンが高速移動で前から引っ張って俺達が後ろから押して滑らせる。

「よし、タティナも運搬台に乗れ。後はカリンに任せれば大丈夫だ」

 下り坂を滑り降りてスピードに乗れば、後はカリンの高速移動で引っ張ってもらって村まで辿り着ける。

「あれも魔法か? あたいとの戦いでも使っていたな」

 カリンの高速移動を見てタティナが尋ねてきた。

「魔法と言えば魔法だが、靴に魔道部品を使っている。興味があるなら後で教えてやるよ」
「あたいに教えてもいいのか? ますますあたいに勝てなくなるぞ」
「どってことないさ。タティナが強くなって村の役に立つなら、それでいいじゃないか。タティナに勝つならちゃんと別の方法を考えて勝ちにいくよ」
「そうなのか……」
「ユヅキ、そろそろ村が見えて来たわよ」
「おう」

 村の手前で止まれるようにブレーキをかけながら裏山を降りていく。

「ユヅキさん、またこの魔獣を狩ってきてくれたんだね。ありがとう」
「こいつの革は高く売れるし肉も美味いからな。助かるよ」

 大きな魔獣を運んできたのを見て、村人達が集まって来た。

「さあ、陽のあるうちに解体しましょう」

 アイシャも来てくれて、解体を手伝ってくれる。みんなで協力すればすぐ終わるだろう。
 家に帰るとチセが風呂の用意をして待っていてくれた。カリンとチセに先に入ってもらい、俺は食堂でタティナに風の靴について教える。

「俺達の靴の底には魔道部品が取り付けてあって、魔力を流すと靴底に風属性が付与される。ここに取り付けているのがその魔道部品だ」
「小さな部品だな。これでカリンのように速く走れるのか?」

 これだけじゃだめだと、仕組みを詳しく説明する。

「これは体を少し浮かせるだけで、前に進む力はない。カリンのように後方に風魔法を送り出すか、カリンに押してもらって高速移動する」
「なるほど、面白いな」
「興味があるならタティナの靴にも取り付けよう。確か魔道部品はまだあったはずだ」
「この部品は貴重な物じゃないのか」

 まあ、この国には無いんだが、王国と取引しているゴーエンさんに言って取り寄せてもらっている。少々時間はかかるが、手に入れることができる品物だ。

「そうなのか。それならすまんがあたいの靴にも付けてくれるか」
「明日、家に来てくれ。その時に取り付けよう」
「ユヅキ~、オフロ空いたわよ」
「おお、今行く。タティナ、今晩ここで飯を食っていけよ」
「いや、アタイはこれから公衆浴場に行って、寄合所でご飯を食べるよ」

 そうなのか。タティナはひとりでいる方が好きみたいだし、無理強いはせんほうがいいか。明日風の靴を作る約束をして、俺は風呂に向かう。

「いや~。仕事の後の風呂は格別だな。そういや、アイシャがいないな。今日も公衆浴場でお風呂か」
「ええ、今日は解体で遅くなるから、公衆浴場へ行くって言ってたわ。あそこの女湯は遅い時間だと空いてるのよ」
「大きくて気持ちいいですしね。そうだ師匠、あたしタティナさんに稽古をつけてもらえる事になりました」
「おお、そうか。チセはあの体裁きを教わりたいと言っていたものな」
「はい、タティナさんに言ったら靴のお礼だとか言ってましたよ」
「そうなのか。じゃあ明日の稽古が終わったらすぐ、タティナの靴にも魔道部品を付けるようにしてやらんとな」

 タティナも義理堅い奴だな。まあ、それで仲良くなれるのならいい事だ。
 俺も少し稽古をつけてもらおうかな。明日が楽しみだ。
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