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第2章 街暮らし 冒険者編
第66話 フレイムドッグ1
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「ねえ、ねえ、ユヅキさん。これを見て」
冒険者ギルドの掲示板。その依頼書には☆2つの鉄ランクで、犬か狼のような絵が描いてある。討伐数は『1~』となっている依頼書が何枚も重ねて貼られている。どういうことだ。
「狼1匹なら私達だけでも倒せると思うんだけど、どうかな?」
「そうだな、受付で詳しく聞いてみようか」
俺達は慣れ親しんだ狐獣人の受付嬢の列に並んで待つ。最初にギルド登録をしてくれた人で、アドバイスもよくしてくれる。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。あっ、アイシャさんにユヅキさん。今日はどんなご用ですか?」
「この依頼なんですけど、私達にできるかな?」
「フレイムドッグの討伐ですね。これはこの時期に出される領主様からの依頼で、今回は総数120匹の討伐になっています。皆さんで討伐して、その数に応じた報酬が出るんですよ」
だから討伐数が『1~』になっていたんだな。
「まず3日間で何匹討伐するか決めてもらって、依頼を開始するんです。今回は依頼数が達成できなくても評価は下がりません。だけど続けて依頼を受けれなくなるので注意してくださいね」
なるほど、1匹申請して倒せば次も受けられるけど、3匹申請して2匹しか討伐できなかったら、それで終わりになるようだな。逆に多く倒しても申告数の報酬しか出ないそうだ。
「ギルド全体で120匹討伐できた時点でこの依頼は終了となります。いつもは2週間ぐらいで終わるので、それまでに沢山討伐してくださいね」
鉄ランクを中心としたパーティーによるチーム戦といった感じか。それなら挑戦してみてもいいかもしれんな。
「このフレイムドッグというのは、どんな奴だ」
「口から炎を吐く野犬の魔獣ですね。魔の森の奥では群れを成していますが、この時期群れに入れなかった個体が森から平原に出てくるんですよ」
「俺達に倒せそうか?」
「狼を倒す実力があるなら大丈夫ですけど、炎対策の装備をしておいた方がいいですね。水属性を付与された盾かマントなら防げますよ」
それなら色々と準備が必要だな。今日は準備に当てて、明日からこの依頼を受けようとアイシャと話をする。
「準備ができたら、午後に来てくれてもいいですよ。明日からの討伐を予約できますから」
なるほど、それなら明日朝からすぐに出発できるな。
初めての魔獣だ。ここの2階にある図書室の図鑑で調べておこう。
依頼書に書いてあった『フレイムドッグ』の文字を図鑑で探す。そこには赤茶けた色の中型犬のような魔獣が、口から炎を吐いている絵が描かれている。
「狼と違って、なんだかかわいい感じの魔獣ね」
「でも炎を吐くんだから、注意しないとな」
その後は、専門店街にある防具専門の店に行って防具を探す。
店員さんに聞いてみると、この時期、炎耐性の防具を買う人が多く品数を増やしているそうだ。
安い物も多い。基本的には盾かマントやローブになるらしい。
「防具は接近するユヅキさんだけで、いいと思うんだけど、どうかな?」
確かにふたり分用意する必要はないな。俺だけなら盾かマントになるか。
「盾は相手を見ながら防ぎますので、ある程度の技術が必要ですが走りながら防御し攻撃もできます。一方マントなどは防いでいる間は移動や攻撃はできませんが、不意打ちや背後からの攻撃でも防ぐことができます」
なるほど。俺の場合は、遠距離から弓で攻撃して相手が近づいたときに剣での攻撃となる。炎攻撃が止むまで待つことになるか。
「マントは使っている生地が少ない分お安くなっています」
値段を聞くと安い物だとローブと盾が銀貨24枚、マントが銀貨16枚だそうだ。俺の戦闘スタイルなら、邪魔にならないマントでいいか。安いしな。
マントは黒く薄い生地で本当に炎を防ぐのか心配だが、店員さんの説明ではフレイムドッグ程度の炎なら、これで完全に防いでくれるそうだ。
「買っていただけるなら、ここで試してもらって結構ですよ」
俺とアイシャの火魔法をマントにぶつけてみたが、ちゃんと表面で炎を弾いて霧散させていたな。
俺はそのマントを1枚購入してから、冒険者ギルドに戻りフレイムドッグ討伐の予約を取る。
「はい、明日から3日間、フレイムドッグ1匹の討伐予約を承りました。頑張ってくださいね」
笑顔で応えてくれた受付嬢の期待を裏切る訳にはいかんな。頑張らねば。
翌朝、家から直接フレイムドッグの討伐に向かう。
初めての魔獣だし、倒し方も分からないのだから時間は有効に使いたい。朝食を食べてすぐに魔の森へと向かう。
俺は炎に耐性のあるマントと魔道弓とショートソードを装備する。アイシャはいつもの弓である。
アイシャと話し合って、森から平原に出てきたところを弓主体で長距離から倒そうということになった。
「アイシャは炎耐性の防具がないんだから、絶対に接近しないようにしてくれよ」
「ええ。ユヅキさんもマントがあるからといって油断しないでね」
魔の森に近い平原の岩陰に隠れて、森の中を観察する。時々何か獣が歩いているのが見えるが、フレイムドッグかどうか見分けがつかないな。
昼頃まで森の近くで待ってみたが、フレイムドッグは現れなかった。
俺達は一旦川辺に戻って軽い食事をする。
「何組かの冒険者が、森の中に入っていったわよね」
「そうだな、外で待っていても出てこないかもしれんな」
「ユヅキさん。危険かもだけど、森に入ってみましょうか」
森にはフレイムドッグ以外にも危険な魔獣がいる。アイシャが言うには森の周辺部であれば魔獣は少なく普通の獣が多いそうだ。
「そうだな森の奥に入らないようにして足跡を探ってみよう。前にニックさんと狼狩りをした時のように、森の奥に逃げても追わないようにすれば大丈夫だろう」
「そうね。身を隠す木も多いし、少し探りを入れた方がいいと思うわ」
魔の森周辺部を調査したが、鹿らしき足跡はあるものの犬の足跡はまだ見つからない。
木が少ない岩場の方に行ってみると、岩場の上に獣が動いている気配がする。森の木に隠れて岩場の上を見るとフレイムドッグがいた。
「少しここで観察しよう」
「ええ。そうね」
フレイムドッグは何か食べているようだ。肉食だから獲物を捕って岩場で食べるのだろう。近くに巣があるのかもしれんな。
しばらくすると、フレイムドッグは岩場を降りて森の中に入っていった。その跡を追うと、足跡は森の奥へと続いている。
周囲を警戒しながら岩場を登る。さっきフレイムドッグがいた辺りに鹿の骨があった。やはりここで食事をしていたようだな。
俺達は一旦森を抜けて、安全な平原に出る。
「アイシャ、どう思う」
「森の奥で狩りをして開けた場所で食べているのね。多分広い場所の方が敵から身を守れるんだと思うわ」
魔法の炎を飛ばす魔獣だ。遠くの敵を倒す自信があるんだろうな。
「そうなると餌を岩場近くに置いて、おびき寄せる方法かしらね。ウサギか鹿の肉を置いて、岩場で食べているところを弓で仕留めるのはどうかしら」
なるほど、だが今からでは時間がないな。
「一旦帰って、明日その作戦をしてみよう」
「そうね、日が暮れるとこの辺りも危険だわ」
家に帰って夕食後、もう一度しっかりと作戦を練って、その日は眠りにつく。
翌日、森に行く前に林の中でウサギを狩って革袋に入れる。昨日行った魔の森の岩場近くにそのウサギを置き、離れた場所から岩場を観察する。
しばらくするとフレイムドッグが岩場に現れた。餌のウサギか何かをくわえている。その餌を食べ始めた時に俺が弓を放つが、フレイムドッグが飛び跳ねた。躱されたか!
フレイムドッグがこちらに向かって走ってくる。俺が横に走りながらもう一射放つが、それも躱される。
俺の方に向かって炎を吐いてきた。マントで頭をかばって膝を突き防御する。
これからは接近戦だ。炎の攻撃が止んだところでショートソードを抜けるように柄に手をかけておく。
「ギャゥン」
フレイムドッグの悲鳴!! アイシャの攻撃か? 前方からの炎攻撃が止んだのを機に、ショートソードを抜いて前に走り出す。
フレイムドッグの背中には矢が刺さっていて、矢が飛んできた方向に体を向けている。今だ! 横向きになったフレイムドッグがこちらに気付いたがもう遅い。奴の首を切り落として、これで決着だ。
冒険者ギルドの掲示板。その依頼書には☆2つの鉄ランクで、犬か狼のような絵が描いてある。討伐数は『1~』となっている依頼書が何枚も重ねて貼られている。どういうことだ。
「狼1匹なら私達だけでも倒せると思うんだけど、どうかな?」
「そうだな、受付で詳しく聞いてみようか」
俺達は慣れ親しんだ狐獣人の受付嬢の列に並んで待つ。最初にギルド登録をしてくれた人で、アドバイスもよくしてくれる。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。あっ、アイシャさんにユヅキさん。今日はどんなご用ですか?」
「この依頼なんですけど、私達にできるかな?」
「フレイムドッグの討伐ですね。これはこの時期に出される領主様からの依頼で、今回は総数120匹の討伐になっています。皆さんで討伐して、その数に応じた報酬が出るんですよ」
だから討伐数が『1~』になっていたんだな。
「まず3日間で何匹討伐するか決めてもらって、依頼を開始するんです。今回は依頼数が達成できなくても評価は下がりません。だけど続けて依頼を受けれなくなるので注意してくださいね」
なるほど、1匹申請して倒せば次も受けられるけど、3匹申請して2匹しか討伐できなかったら、それで終わりになるようだな。逆に多く倒しても申告数の報酬しか出ないそうだ。
「ギルド全体で120匹討伐できた時点でこの依頼は終了となります。いつもは2週間ぐらいで終わるので、それまでに沢山討伐してくださいね」
鉄ランクを中心としたパーティーによるチーム戦といった感じか。それなら挑戦してみてもいいかもしれんな。
「このフレイムドッグというのは、どんな奴だ」
「口から炎を吐く野犬の魔獣ですね。魔の森の奥では群れを成していますが、この時期群れに入れなかった個体が森から平原に出てくるんですよ」
「俺達に倒せそうか?」
「狼を倒す実力があるなら大丈夫ですけど、炎対策の装備をしておいた方がいいですね。水属性を付与された盾かマントなら防げますよ」
それなら色々と準備が必要だな。今日は準備に当てて、明日からこの依頼を受けようとアイシャと話をする。
「準備ができたら、午後に来てくれてもいいですよ。明日からの討伐を予約できますから」
なるほど、それなら明日朝からすぐに出発できるな。
初めての魔獣だ。ここの2階にある図書室の図鑑で調べておこう。
依頼書に書いてあった『フレイムドッグ』の文字を図鑑で探す。そこには赤茶けた色の中型犬のような魔獣が、口から炎を吐いている絵が描かれている。
「狼と違って、なんだかかわいい感じの魔獣ね」
「でも炎を吐くんだから、注意しないとな」
その後は、専門店街にある防具専門の店に行って防具を探す。
店員さんに聞いてみると、この時期、炎耐性の防具を買う人が多く品数を増やしているそうだ。
安い物も多い。基本的には盾かマントやローブになるらしい。
「防具は接近するユヅキさんだけで、いいと思うんだけど、どうかな?」
確かにふたり分用意する必要はないな。俺だけなら盾かマントになるか。
「盾は相手を見ながら防ぎますので、ある程度の技術が必要ですが走りながら防御し攻撃もできます。一方マントなどは防いでいる間は移動や攻撃はできませんが、不意打ちや背後からの攻撃でも防ぐことができます」
なるほど。俺の場合は、遠距離から弓で攻撃して相手が近づいたときに剣での攻撃となる。炎攻撃が止むまで待つことになるか。
「マントは使っている生地が少ない分お安くなっています」
値段を聞くと安い物だとローブと盾が銀貨24枚、マントが銀貨16枚だそうだ。俺の戦闘スタイルなら、邪魔にならないマントでいいか。安いしな。
マントは黒く薄い生地で本当に炎を防ぐのか心配だが、店員さんの説明ではフレイムドッグ程度の炎なら、これで完全に防いでくれるそうだ。
「買っていただけるなら、ここで試してもらって結構ですよ」
俺とアイシャの火魔法をマントにぶつけてみたが、ちゃんと表面で炎を弾いて霧散させていたな。
俺はそのマントを1枚購入してから、冒険者ギルドに戻りフレイムドッグ討伐の予約を取る。
「はい、明日から3日間、フレイムドッグ1匹の討伐予約を承りました。頑張ってくださいね」
笑顔で応えてくれた受付嬢の期待を裏切る訳にはいかんな。頑張らねば。
翌朝、家から直接フレイムドッグの討伐に向かう。
初めての魔獣だし、倒し方も分からないのだから時間は有効に使いたい。朝食を食べてすぐに魔の森へと向かう。
俺は炎に耐性のあるマントと魔道弓とショートソードを装備する。アイシャはいつもの弓である。
アイシャと話し合って、森から平原に出てきたところを弓主体で長距離から倒そうということになった。
「アイシャは炎耐性の防具がないんだから、絶対に接近しないようにしてくれよ」
「ええ。ユヅキさんもマントがあるからといって油断しないでね」
魔の森に近い平原の岩陰に隠れて、森の中を観察する。時々何か獣が歩いているのが見えるが、フレイムドッグかどうか見分けがつかないな。
昼頃まで森の近くで待ってみたが、フレイムドッグは現れなかった。
俺達は一旦川辺に戻って軽い食事をする。
「何組かの冒険者が、森の中に入っていったわよね」
「そうだな、外で待っていても出てこないかもしれんな」
「ユヅキさん。危険かもだけど、森に入ってみましょうか」
森にはフレイムドッグ以外にも危険な魔獣がいる。アイシャが言うには森の周辺部であれば魔獣は少なく普通の獣が多いそうだ。
「そうだな森の奥に入らないようにして足跡を探ってみよう。前にニックさんと狼狩りをした時のように、森の奥に逃げても追わないようにすれば大丈夫だろう」
「そうね。身を隠す木も多いし、少し探りを入れた方がいいと思うわ」
魔の森周辺部を調査したが、鹿らしき足跡はあるものの犬の足跡はまだ見つからない。
木が少ない岩場の方に行ってみると、岩場の上に獣が動いている気配がする。森の木に隠れて岩場の上を見るとフレイムドッグがいた。
「少しここで観察しよう」
「ええ。そうね」
フレイムドッグは何か食べているようだ。肉食だから獲物を捕って岩場で食べるのだろう。近くに巣があるのかもしれんな。
しばらくすると、フレイムドッグは岩場を降りて森の中に入っていった。その跡を追うと、足跡は森の奥へと続いている。
周囲を警戒しながら岩場を登る。さっきフレイムドッグがいた辺りに鹿の骨があった。やはりここで食事をしていたようだな。
俺達は一旦森を抜けて、安全な平原に出る。
「アイシャ、どう思う」
「森の奥で狩りをして開けた場所で食べているのね。多分広い場所の方が敵から身を守れるんだと思うわ」
魔法の炎を飛ばす魔獣だ。遠くの敵を倒す自信があるんだろうな。
「そうなると餌を岩場近くに置いて、おびき寄せる方法かしらね。ウサギか鹿の肉を置いて、岩場で食べているところを弓で仕留めるのはどうかしら」
なるほど、だが今からでは時間がないな。
「一旦帰って、明日その作戦をしてみよう」
「そうね、日が暮れるとこの辺りも危険だわ」
家に帰って夕食後、もう一度しっかりと作戦を練って、その日は眠りにつく。
翌日、森に行く前に林の中でウサギを狩って革袋に入れる。昨日行った魔の森の岩場近くにそのウサギを置き、離れた場所から岩場を観察する。
しばらくするとフレイムドッグが岩場に現れた。餌のウサギか何かをくわえている。その餌を食べ始めた時に俺が弓を放つが、フレイムドッグが飛び跳ねた。躱されたか!
フレイムドッグがこちらに向かって走ってくる。俺が横に走りながらもう一射放つが、それも躱される。
俺の方に向かって炎を吐いてきた。マントで頭をかばって膝を突き防御する。
これからは接近戦だ。炎の攻撃が止んだところでショートソードを抜けるように柄に手をかけておく。
「ギャゥン」
フレイムドッグの悲鳴!! アイシャの攻撃か? 前方からの炎攻撃が止んだのを機に、ショートソードを抜いて前に走り出す。
フレイムドッグの背中には矢が刺さっていて、矢が飛んできた方向に体を向けている。今だ! 横向きになったフレイムドッグがこちらに気付いたがもう遅い。奴の首を切り落として、これで決着だ。
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