電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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閉ざされたシンの真実:2『アリアの日記』

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[第1の日記の内容]

 お母様、アリアをここまで育ててくれて、ありがとうございました。シン、あなたのおかげで、アリアは幸せでした。クロノさん、お会いしたことはありませんが、シンがご迷惑をおかけして、本当にごめんなさい。

 アリアが幸せに生きることを許してくれたのは、神様なのでしょうか、それとも、悪魔だったのでしょうか。神様なら、その深い慈悲の心に感謝を。

 悪魔なら、死後に魂を捧げ、罰を受けることを約束します。お母様、クロノさん、シンをよろしくお願いします。

           屋根裏部屋のアリア


   ***



[第2の日記の内容]

◇いつもの決闘

「今日は決闘でクロノを背面からズバーンっと斬りつけてやった。峰打ちだ!」

どうやらシンは、木の棒でクロノさんを背後から叩いたようです。その結果、かえりうちにあって、ボコボコにされて帰ってきました。……。シンの好きな言葉は〈騎士道精神〉です。

「えっ、このケガ? 転んだ」

 自業自得ですが、シンはあざだらけです。転んでできるケガではないのですが。***◇罪の告白(アリアという少女が、みずからの手でひちぎったページ。

 下の紙に残っていた筆跡から、書かれた内容は確認できた。詳細は伏す。故人の尊厳は守られねばならない。このページの記述は当職の権限にて、存在しなかった物として扱う)***◇聖剣カリバーン

「神が怖い? 地獄に落ちるのが怖い? 神なんて、聖剣カリバーンでズヴァァアアンッ、真っ二つだ! 地獄の有象無象なんて片っぱしから聖剣でで八つ裂きだ」

 聖剣カリバーンは、木の枝。棒きれのことです。なので、不可能です。

「なにが教会だ、ギルドだって、王様だって、怖くない。神に選ばれた勇者シンの敵ではないッ! だから、すべて僕に、まるっとまかせてくれ!」

 ビシィッ! ――指をつきだし、不敵に笑っています。

「だからさ、大丈夫だ。心配するな、アリア」

あたまをなでられました。

「聖剣を持つ僕と、ありとあらゆる魔獣の動きを完全に停止させるクロノがいれば、神だって、世界にだって負けやしない。無敵だ!」

 アリアはその言葉を信じたくなってしまいました。***◇鏡写し

「僕とアリアが似てる? まあ、たしかに耳が2つあるし、目が2つある、鼻が1つ、口も一つ。確かにまるでそっくりだっ。鏡写しだ! なーんってねっ」

 シンがわちゃわちゃと、身振り手振りでせわしなく説明しています。ときおり、なぜだかふとシンにいじわるをしたくなるのです。

「えっ? 僕とアリアのママ上がおなじなのが不思議?」

 ちょっと反応が難しそうな質問をしてみました。正直言ったあとに、失敗したと思いました。シンは数秒おでこに指をのせて考えていました。

「白状する。僕は、拾いっ子だ。ママ上が橋の下から拾ってきた子だ。まぁ、本当は神の子なんだけどね。だから、ママ上と僕は他人。育ててもらっているから、ママ上と呼んでいるだけだ。言うなればママ上は、他人上だね。ははっ」

シンはウソがへたです。

   ***

◇マリア

「そうそう、前に描いていたあの絵の女の子。マリアって名はどう?」

アリアはシンに日記帳に落書きで描いた子に名前をつけようと相談したことがありました。その場では、考え込んでシンは黙ってしまったのですが、どうやら今名前を思いついたようです。

「でも、どうしてマリアは黒髪なんだ? 金色の髪じゃないのは変だ。だいいち黒髪とかまるでクロノだ、クールじゃない」

黒色のインクしかないから、金を表現できない、そう説明しました。

「ああ。なるほど。そりゃ、黒しかなきゃ、黒でしか描けないか。そういうことなら、僕がクロノをやっつけてパクッてくる」

……もちろんアリアは、シンを止めました。犯罪なので。ですが、意外に頑固なところがあるので、たぶん思いとどまらないだろうとおもっていたら、案の定です。

 翌日、ボコボコにされて帰ってきました。なにかしら、言っていましたが、要約するとケンカに負けて頼み込んで、貸してもらった、というのが真相のようです。

 クロノさん、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。そして、ありがとうございました。

   ***

◇ざいたくわーかー? 

「へっ……、ママ上の仕事? ざっ、在宅ワーカーっ、……みたいな?」

アリアはお母様が何の仕事をしているかしりません。どうやら家でなにがしかの仕事をしているようですが。〈ざいたくわーかー〉とやらが、何かは謎です。

「セラピスト的な……エクソシスト、……セラピシスト! 村人の邪気をはらう仕事。そうそう、ママ上は聖職者だ。ママ上は徳も格も、他の村人より、圧倒的に高いからね、うん」

シンが言うには、この村は悪霊に取り憑かれやすい土地のようです。定期的に心を浄化しないと、魔獣になるそうです。外の世界はなかなか大変なようです。

「正直、甘ったるくて気持ち悪いけどね。まあ、邪気を払うのに必要だから仕方ないね」

屋根裏部屋にいてもかすかに感じるあまいお香のあまいかおり。お香のケムリで部屋を、おおうことによって擬似的に神殿を再現しているとか、なんとか。

「まあ。そういうわけだ。あっ、それとママ上には仕事のこと聞くなよ? ママ上がエクソシストってことは、極秘ね。ママ上にも、仕事のこととか、聞くなよ?」

とのことなので、お母様には仕事について聞かないでおくことにしました。お母様は、おしゃべりなシンとは似ても似つかない静かな人です。シンが橋の下から拾われてきたというのも本当のことなのかもしれません。そうだったら、いいな。

   ***

◇プラネタリウム

「僕がアリアの目に名前を付けた。星眼〈プラネタリウム〉、どうだ?」

アリアの魔眼に名前をつけてくれたようです。

「いつかクロノにアリアの星眼を自慢してやろう! きっと、すごすぎてクロノなら、びっくりして腰を抜かすにちがいない」

……そうはならないでしょうが、……クロノさん、シンが馬鹿ですみません。でも、そんな日がきたら素敵でしょうね。かなわない夢ですが、想像したら楽しい気持ちになりました。

***

[第3の日記の内容]

かみさまありあは
やねうらでたのしくしてます
どうかすくわないでください
おねがいします


         ありあ
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