電光石火の雷術師~聖剣で貫かれ奈落で覚醒しましたが、それはそれとして勇者は自首して下さい~

にゃーにゃ

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閉ざされたシンの真実:3『瓶詰めの楽園(1)』

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「アリアがいると、……シンは優しいから一生、アリアに、この屋根裏部屋にしばられて、幸せになれない。……だから」

「いやだ……いやだ……どうして……どうしてっ! ……なんでっ!!」

「シン、駄目よ。これが、ハッピーエンドなの」

「いやだ、……ッ違う! 僕はもう満たされていたんだ!」

「アリアが居ると、この部屋にしばられてしまうわ、シンも、お母様も」

「いいんだよ、それで! それが、僕の望みなんだっ!!」

「ごめん、シン。……アリアは、もっと早くに、こうするべきだったわ。あなたの人生をムダにしてしまった」

「違ッ、……違うんだっ! アリア……そうじゃないんだ!! ! 僕は何も奪われていない、僕がしたくてしていたことなんだっ!」

「シンは、アリアのぶんまで幸せになってね」

「僕は、もう幸せだ、ママ上だってっ! アリアさえいれば、他に……なにもっ!」

「アリアは、シンが好き。だから、……こうするしかなかった」

「違う! こんなのは、ぜったいに、違う!」

「シン。アリアも、この部屋のこともすべて忘れ、本当の世界で生きて」

「イヤだッ! この部屋が真実なんだ! なのに!!」

「教義に反したわ」

「違うッ、そんなの、教義が間違ってるんだっ! 世界が、神がアリアを否定するなら、……僕がふんぞり返っている、その神を、座から引きずりおろし、僕がその椅子に座ってやるッ! ここは、アリアと僕だけの世界だ!」

「たのしい夢ね。でもいつかは夢はさめるもの。それが、今なの」

「違うッッ!! 終わるものか!! 終わらせてなるものかッ!! !」

「ねぇ、……もう長くないみたい。アリアの最後のお願い、聞いて」

「……、……」

「勇者シンの大冒険。あのおはなしの最後のシンが考えた一節、もう一度、聞かせて。お願い」

「……勇者シンと女神アリアは、永遠に幸せに暮らしました。めでたしめでたし」

「うん。ありがと。アリア、シンと一緒で、幸せだったわ。とっても」

「待てよッ、……アリア、……アリア、……返事をしてくれ……どうして! なぜ!!」

「……僕は、……まるで、……無力だ」

◇◇◇

「アリアは神々の楽園へ旅立った。天国よりも上位の世界。楽園だ」

「まだ僕とアリアしか知らない世界。そしていずれ僕も同じところへ行く」

「その前に僕には成さねばならないことがある。アリアの正しさを証明してみせる」

◇◇◇

「戻ってこい? まだ間にあう? 今さらもう遅い。そもそも僕は最初からそちらに戻る気などないのだから。なぜなら正しい道をすすんでいるのだから。アリアがいない世界に価値はない。アリアを認めない世界を決して許さない。誤っているのは世界の方であり、アリアではない。ならばこの間違った世界のまんなかで中指立てて、ざまぁだ。その過程で血が流れるだろう。それがどうした、些細なことだ。神だろうが、世界だろうが、僕の邪魔をするなら容赦はしない。世界を勝ちとるとはつまるところは、――そういうことだ」

それが嫌なら、僕を止めてみせろ。クロノ◇◇◇

「勇者とは何か? 魔王を滅する者だ」

「勇者とは何か? 神に選ばれた者だ」

「勇者とは何か? 聖剣の所有者だ」

「勇者とは何か? 世界で一番偉い者だ」

「勇者とは何か? 正義だ」

「正義とは何か? 僕だ」

「僕とはダレだ? ボクだ」

◇◇◇

「この部屋こそが真実。であるならばソレ以外は虚構。世界が間違っているのだから、世界を正さなければならない。その結果として世界が壊れようとも。僕ひとりに壊される程度の世界など存在する意味が、ないのだから。僕は、アリアの正しさを証明し、正しく認められる世界に創り変える。この星眼で」

「何を成さねばならない? 僕は、勇者でなくてはならない。楽しくなければならない。幸せでなくてはならない。正しくなくてはならない。敗北してはならない。処女のお嫁さんがたくさんいなければならない。最強でなくてはならない。魔王を倒さなければならない。ドラゴンを倒さなければならない。誰もがうらやむ格の高い仲間にかこまれていなければならない。聖剣を持っていなければならない。神に選ばれていなければならない」

「自由。なんて、不自由なんだ。義務ばかりじゃないか。……。だからどうした」

僕は、死んだ。神に選ばれず、勇者ではない、僕は。

「ボクは、シンだ。神に選ばれた、勇者だ」
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