木こり無双~愛する者のためならば、勇者も神も切り倒す!~

にゃーにゃ

文字の大きさ
36 / 37

第36話『辞世の言葉』

しおりを挟む
「お前は――生きていてはいけない存在だ、シン」


「ふへっ! お前を殺したら、僕のソフィも僕の仲間たちと同じように体のなかに取り込んでやるよ。そうすれば、ソフィと俺は死ぬまでずーっと一緒だ。お前のような間男に浮気されることもない……永遠の愛だ。やっと、ソフィ僕は君を幸せにしてあげられる」


 シンはニコッと歯茎を剥き出しで、
 純粋な笑顔でソフィの瞳を見つめていた。

 信じがたいことにソフィに恐怖を与えるためでなく、
 ソフィが純粋に喜ぶと思っての行為のようだ。

 ソフィはそのシンの狂気じみた顔を見て恐怖で筋肉が強張る。
 3色の宝石を見て、この狂人と一生一緒に生きる拷問を想像してしまったのだ。


「もう良い、シン。お前は何も喋るな」


 斧を大ぶりに振るいシンの頭部を斧で吹き飛ばす。
 頭部の上半分が吹き飛んでいるのに、
 口元だけは醜悪な笑みを浮かべている。

 そして、破壊された頭部も即時に再生する。

 かつて決闘の際に、切断された片腕が一瞬で復元したのを見たことがある。
 この驚異的な治癒能力はきっとリーファという少女の能力。


(頭部さえ破壊すればと思ったが、甘かったか)


 俺は蹴り倒し、シンに馬乗りになり、
 左右の拳でただひたすらにシンを殴り付ける。


「はは。子供の喧嘩みたいに馬乗りになって殴れば僕に勝てると思ったか? 甘いんだよ。僕の治癒能力は無限だ。痛みだって僕の仲間が肩代わりしているからね。それよりも、僕を殴っているキミの拳が持つかの方が心配だなぁ。あははっ!」


 俺はひとしきりシンの顔面を殴った後に、
 シンの胸元にある3つの宝石を指さす。


「一つ質問だ。お前のこの胸に埋め込まれた宝石は何だ?」


「っ……!! おい、おまえ……それは……やめろぉお!!!」


 シンの胸元には赤、緑、黄の宝石が埋め込まれていた。
 想像はしたくなかった。

 だが、

 シンの発言から想像する。
 俺の推測が正しければ……。

 予想が外れて欲しいとこんなに願ったのは始めてだ。

 俺はシンの胸に手刀を突き立て、
 まずは緑色の宝石を剥ぎ取る。

 胸元に埋め込まれた宝石は、
 シンの神経ごと接続されていた。


「やめろおっ!!! お前は……ソフィを僕から略奪するだけでなく……今度は、僕から仲間との絆まで盗み取るのか!! 僕のソフィを穢《けが》し、仲間との絆を破壊する……おまえは……最低最悪の外道だ!! 悪魔だ!! 木こりぃ!!!」


 シンがどんな外法を使ったのかは知らないし興味もない。
 だが、これが彼女たちの末路だと言うのであればあまりにも悲しすぎる。

 正義の心を胸に秘め、それぞれの国の威信を背負い旅立った彼女たちの、
 旅の終着点がこんな形で終わらせられるとは……。
 俺は、人間に対するこれ以上の冒涜は知らない。

 シンと共に闘ってきた仲間をこんな石に変え、
 自分の体に埋め込み死後も物のように扱う。
 それはもう人間の行いではない。

 これ以上こいつを生かしておくわけにはいかない。

 俺は緑色の宝石を抜き取った効果の確認のために、
 シンの右手首を掴みその親指をへし折る。


「あああっ!!! 死ぬっ!! 本当に……痛い!!! この痛さは耐えられる痛さじゃない……なぜ魔王を倒す正義の勇者である、この僕が……こんな酷い仕打ちを受ける。木こりぃ! お前は指が折られるとどんなに痛いのか知っているのか!!!」


 指が折れた時の痛みは幼少期に経験済みだ。
 確かに激痛だが、子供のころの俺ですら歯を食いしばって耐えられた程度だ。
 
 シンの指は治癒しない。おそらくあの緑色の宝石が……。あの少女の。

 俺は次に手刀を胸に突き立て、
 胸元の神経に接続されている赤色の宝石を抜き取る。

 おかしいとは思っていたのだ。
 
 今日のシンは言動こそ下劣極まるが、たった一人で勇敢に俺に挑みにきた。
 更に、何度斬りつけても耐えきるそのタフネス。

 もっと早くにこの男にはそんな芸当が不可能であると気づくべきであった。
 シンの右手を鷲掴みにし、グチャリとそのまま握り潰す。
 シンの右手は良くわからない団子のような形に変形していた。


「あんぎゃああっ! ちょっと待って、本当に痛い。僕が悪かった。許して、許してくれ! 話せば分かる、冷静に話し合おう。木こり……いや、ケネスさん」


「…………」


「僕は……ちょっとだけ、強くなって調子に乗っただけんなだ。ほらさぁ、僕たち、王都で幼い頃から一緒だった親友じゃないかぁ。ねぇ? ソフィを寝取って穢《けが》した事は許すよ。だから、僕のことも許して。ほんの出来心だったんだ」


「俺は不寛容だ。お前を許さない」


 俺は、シンの胸元に手刀を突き立て、
 残された最後の黄色の宝石を神経ごとシンから抜き取る。

 そして、俺はシンの左手を握りつぶす。

 宝石から供給されていた超常的な力と、
 痛覚遮断が途切れたからだ。


「おん、ぎゃああっ!!! なんじぇ?! 僕、魔王を倒しにきただけなのに。僕は世界のために闘ってきたのになんじぇ、こんな酷い目に!!! 痛いし辛すぎる」


「…………」


「しょっ……しょうだ、僕、偉い勇者なんでしゅ。特別にケネス様には、教会の枢機卿《カーディナル》の職位を与えまっしゅ、どうか許してくれましぇんか?」


 シンが媚びへつらうような顔で懇願する。
 潰れて肉塊になった左右の手を擦り合わせて媚びへつらう。

 その矜持のない卑屈なシンの顔に神経を逆なでされる。

 俺は力任せに右腕の関節をへし折った。
 腕から骨が突き出ている


「ふんぎゃあああああっ!!!! ごの木ごりぃ!!! ぶっ殺じゅッ!!!」


「お前の罪は重過ぎて法で裁くことなどできない。更生も不可能だ。どんな聖人が何を言ってもお前の心には届かないだろう。あとは、お前が死後に行く地獄の亡者に裁いてもらうしかあるまい」


「なんでら……なんで、僕はお前に勝てない……らんで、俺には本当に欲しいものが手に入らない……勇者になったのに、なぜ届かない……」


「…………」


「はは……分かった……周りが無能だからだ。王都の連中も、教会の連中も、仲間も、周りの人間が無能だからだ。だから、いつも僕だけが損する、奪われる」


 俺はシンにこの世に残す最後の言葉を許した。
 その声が、仲間への謝罪、ソフィへの謝罪であれば、
 地獄の亡者も少しは減刑しようとしてくれるかもしれない。
 最後のチャンスだ。


「シン。この世に残す辞世の言葉はあるか」


 俺は斧を両手に持ち大上段に構える。
 いつの間にか空から雨が振り始めていた。


「人殺し!! 僕のソフィを寝取って、娶《めと》った恥知らずの外道!! ソフィは本当は僕のことが好きだったんだ! お前は王都から誘拐して言葉巧みに誘惑し、穢《けが》した、卑劣な犯罪者だ。僕はお前を許さない!! 例え、ここで僕がお前の汚れた斧によって殺されたとしても、死後の世界でお前を罰してやる!! お前が死んだら天国から必ず地獄にいるお前に会いに行って殺してやるからなっ!!!」


「貴様の辞世の言葉は聞きとげた。死後、俺に会えることを祈りながら、死ね」


 俺は最後の瞬間にシンが己の過ちに気づくのではと淡い期待をした。
 邪悪な人間にも少しは人間らしい感情が残されているのではと。
 だがその希望は打ち砕かれた。


 この世の中にはまったく理解できない人間もいるのだ。
 幼き日の三人で遊んだあの時のシンの心は、
 きっと……とっくの昔に死んでいた。

 だから目の前の惨めに蠢く死人を本来あるべき場所に還すため、
 斧を振り下ろしシンの首を刎《は》ねた。


 シンはその最後の瞬間までシンであった。


 あとは、地獄というものが本当にあるのであれば、
 そちらの沙汰に任せるしかない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...