木こり無双~愛する者のためならば、勇者も神も切り倒す!~

にゃーにゃ

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第13話『遺跡にあらわれた勇者一行』

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 俺とソフィとおじさんとで遺跡を出る。

 目の前に見慣れたウンザリする顔の男と出くわす。
 神託の勇者シン一行である。

 姫騎士エリアル、エルフ魔術師リーファ、
 英雄の血を引く女騎士フレイヤも、
 シンの後ろを歩いている。

 こんなところで出くわすということは、
 こいつらも遺跡のアーティファクトを探しているということか。


「おい、奇遇だな。ケネス。おまえたちはここで何をしているんだ?」


 面倒くさいから視線を合わせず無視して通り過ぎようと
 思っていたところを、向こうから話しかけられる。


「観光だ」


「はぁ……観光? まったく、責任も使命も期待もされていない平民はのんきで羨ましいよ。神託の勇者の僕はねぇ、木こりと違っていまも忙しく世界を救うためにわざわざこんな辺境の地にまできているのさぁ。こんなところでバカンスとは。木こりっていうのは気楽なご身分ですねぇ」


「そうか。じゃあな」


「おい……待てよッ!! ケネス……おまえ、僕に対して一体何をしたのか忘れたのか? えぇ?! 忘れたとはいわせないぞ! 木こりぃ」


「決闘を求められ、受け入れた。それがどうした」


「お前さあ……なんか勘違いしているんじゃない? もしかしてあんなお遊戯で僕に勝ったとか勘違いしてウキウキ気分で観光しているんじゃないかなぁ? 困るよぉ……あれは平民を楽しませるためのショーだったんだからさぁ。もしかしてあのショーで僕よりもキミの方が強いと勘違いしちゃった? あっはははははは」


「――」


「おい……何か言えよ、木こり。お前、神託の……特別な……選ばれた勇者のこの僕が手加減して木こりと遊んでやったら調子づいて、僕に怪我を負わせたよな。お前のせいで僕が怪我を負ってレベル上げに一週間も遅れが出たんだぞ。この責任どうやってつけるつもりだ? おい?! 何か言えよ、木こり!!!」


「元気そうだな。後遺症が残らなかったようで何よりだ」


「んだと。平民の分際で僕に対して生意気なんだよ。いつまでも僕が平民だった頃みたいに年上ヅラしているんじゃねぇ。あの時の僕と、今の僕じゃあまったくの別物なんだよ。この僕は教会に選ばれた神託の勇者だ。その僕の貴重な一週間を奪った罪、万死に値する」


「そうか」


「あとさぁ……お前が手を握っているそのブスは僕の女なんだよねぇ。神託の勇者に無礼を働くは、人の物を盗み取るは……本当に盗っ人猛々しい木こりだよ。お前は」


「ソフィはお前の物ではない」


 その言葉を聞くや否や、
 シンは醜悪な表情を浮かべながら、
 一枚の紙を胸ポケットから出した。


「いいや……違うね。そのブスは間違いなく、僕の物だ。今からその証拠を見せてやるよ。そのブスは身のほど知らずにも僕に恋文なんて書いていたんだぜ? 幼馴染という特別なポジションを利用して平民の分際で分不相応にもほどがあるよ。その恋文の内容がさぁ、あまりにも面白かったんで僕の仲間たちに恋文の内容を何度も朗読してやったもんだよ。本当にあの恋文は傑作だった。すっげー笑えるんだよ」


 ソフィの顔は青ざめ目からは光が消えていた。
 無表情で地面を見つめるだけで俺にもシンにも何も語らない。

 シンは高々とソフィの書いたという恋文を朗読し始める。


「じゃあさ、人の女を盗んだ木こりには特別に僕が朗読してあげるよ。 『シンくんお元気ですか。 突然のお手紙申し訳ございません。 もし神様の祝祭の日の午前にご都合のよいお時間がございましたら王都の公園に咲いた満開の花を見にいきませんでしょうか。 もしご迷惑でしたらこの手紙を捨てていただいても構いません。 私は噴水の前でお待ちしております』 ときたもんだ……書いてる内容も貧乏くさっくてさぁ笑っちまったよ。本当に貧乏人の平民って感じでウケるよ! あはははっ!」


 ケタケタと笑いながら、
 わざわざ手紙の部分を女性の裏声を使っておどけながら読み上げた。


「だいたいさぁ、神に選ばれたこの僕が、そこらに咲いている公園の雑草なんて見に行くわけないじゃん。僕はさぁ……忙しいんだよ。雑草を見ている時間なんてないんだよ。それにさぁ、普通はさぁ、こういうのって美術館とか、劇場とかさぁ……そういうところに誘うべきだろう?」


「――」


「これだから貧乏くさい平民は嫌なんだよ。それにしてもさぁ……いやぁ、今思い出しても最高に傑作だった。特に面白かったのはさぁ……そのブス、当日の早朝から弁当のバスケットを腕にぶら下げて待ち合わせ場所に来てやがんの。そんでさぁ、あのブスを見ていたらさぁ、通り過ぎる人間を僕だと勘違いしてキョロキョロと周りを見てやがんの。しかも夕方までね。あの時のブスの顔を思い出すだけで、俺はいつでも愉快な気分になれるんだよねぇ。本当、今でもキョロキョロと周りを不安げに目を泳がせるブスの顔を思い出すだけで、僕はとてもいい気分になるんだよね。なんていうか満たされた気持ちになれるんだよ」


「小せぇ――」


「はぁっ?!」


「お前は小せぇ男だ」


「小さい……!? 勇者の僕が……ッ、小さいだと! おい……その言葉を今すぐ取り消せ。テメェは図体がデカイだけのデクノボウの木こりじゃねぇかあ。平民に触れると平民が伝染る。お前……さっきから思っていたけども、よくもそのブスの手をずーっと握っていられるよなぁ? 僕はそのブスに触れると平民が伝染るから触れなかったけど、木こりに盗まれるくらいなら、平民であってもブス相手にキスの一つくらいは特別にしてやってもよかったかなぁ……なんなら、今なら僕が特別に、平民にキスを下賜してやっても構わないんだぜ? おいブス、特別に許してやるから戻ってこいよ……僕のパーティーにさぁ」


「後生大事にソフィの恋文をずっと胸ポケットに入れ持ち歩いていたのか?」


「……ッッッ!? あッんだからッ、どうだって、言うんだよアアあ?!!」


「更に、わざわざ恋文の日の早朝から夕方まで待ち合わせ場所でお前を待っていたソフィの姿をずーっと眺めているだけとは……。デクノボウという言葉はお前にそっくり返させてもらおうか」


「そっ……それは!!……それは……僕がたまたま、公園の近くに用事があったんだよ、このクソボケが!!」


「一日中公園の監視とは。勇者とは聞きしに勝る多忙な職なのだな」


「あんだ?!! 僕に向かって何が言いたいんだ!!! 木こりぃ!!!」


「幼馴染でありながら、キスはおろか……まだ手すら繋いだことがなかったとは……さすがの俺も驚いたぞ。お前は勇者ではない。だ」


「うるせぇ……うるせぇ……僕のソフィを盗んだ木こり、てめぇだけは許さねぇ。お前にはこの僕が直々に誅伐を下す。盗人に強引にさらわれた僕の女を連れ返す」


「なら、どうする」


「この場で僕がお前に誅を下す。平民の分際で勇者であるこの僕の所有物を盗み取ったその罪の重さを、その体で分からせてやるよ。今度は平民に有利な木剣なんかじゃない、本物の真剣で勝負だ。もしかしたら死んじゃうかもなぁ? 怖いか? ビビってんだろ? 木こりぃ……本当の戦いの怖さって奴をお前に教えてやるよ!!」


「悪いが」


「なんだよ。木こり、ビビってんのか……今ならさぁ……特別に、間男のように無理やり嫌がるソフィを連れ去った罪を……を返してくれるだけで……超特別にお前のことを許してやってもいいんだぜぇ? お前とも一応は幼馴染だもんなぁ、器の大きい僕の特別サービスだ。木剣とは違うぞ、真剣だ。怖いだろ。へへへ……えぇっ?!……お前……ブルってんだろ?! 木こりぃ」


「――斧は手加減ができない」


 俺は白い手袋なんて気の利いた物は持っていない。
 だから俺の手ぬぐいをシンの顔面に投げつける。


 決闘始まりの合図である。
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